【完結】みにくい魔王は恋をする〜パンツ一丁で召喚されたダメ男は、魔王の救世主だった〜

チョロケロ

文字の大きさ
16 / 20

第十六話 ユート、怒る

しおりを挟む
 私とミストはユートの剣幕に驚いて、ポカーンと口を開けていた。

「な、なぜ嫌なのだ? ユートと私の関係は変わらないのだぞ? 今まで通り、報酬に宝石も渡そう」
「そう言う問題じゃないんだよ!!」

 うぅ……。ユートに怒られてしまった。悲しい。
 生意気なゴブリンたちに待ち伏せされ、一方的に殴られても嬉々として殴り返すほど気の強い私が、ユートに怒られて泣きそうになってしまった。
 拳を握り締め、グッと涙をこらえていたら、ユートが慌て出した。

「ご、ごめんね。ちょっと言い過ぎた」
「うぅ……。ユートが怒った」
「だからごめんって」

 ユートはこちらに近付いてきて、涙をこらえる私を椅子ごと抱き締めてくれた。

「本当にごめん。でも、アレルヤが結婚するなんて耐えられないよ」
「なぜだ?」
「なぜって……」

 ユートは困ったように私から目を逸らすと、モジモジと身体を揺らした。物事をハッキリ言ってくれるユートが口ごもっている。珍しいな。などと思っていたら、ユートがブツブツと独り言を言い始めた。

「言ってもいいのかなぁ。でも俺、無職のパチンカスだし……。ハイスペのアレルヤとは違いすぎる。身分が違いすぎてミストさんに怒られそう」
「ミスト? なぜミストが出てくるのか分からんが、絶対怒らせないと約束しよう。――いいな? ミスト」

 私がミストに確認すると、ミストはなにかを察したのか嫌そうな顔をした。

「いや、怒るかもしれません。――ユート様、立場をわきまえてください」
「ほら、怒ってるー」
「ミスト!!」

 私がミストをたしなめると、少し不貞腐れたような表情をした後、口を閉ざした。

「ほら、ミストは黙ってくれたぞ? ユート。言いたいことがあるなら言ってくれ」
「じゃあ言うけど……」

 ユートはなぜかほんのり頬を染めた後、信じられない言葉を口にした。

「お、俺……アレルヤのことが好きなんだよ。好きな人が結婚して、他の人のものになるなんて耐えられない」
「え……?」
「俺、無職でパチンカスでヤリチンな最低男だけど、これからは変わる。アレルヤに相応しい男になれるよう努力するよ。だから結婚なんかしないでよ、アレルヤ」
「!」

 驚き過ぎて、私は呼吸が止まりそうになった。
 ユートが私のことを好き。こんな私のことが好き。
 そんなまさか……。

 じわじわとユートの言葉が心に染み込んでくる。
 嬉し過ぎて、視界がじんわりと歪んだ。
 そんな私を見て、ユートがギョッとした。

「アレルヤ? なんで泣いてるの?」
「うわーん! ユートォォー!!」

 私はユートに抱き付き、号泣した。
 嬉しい。嬉し過ぎる!!
 本当は、その言葉がずっと欲しかった。
 住む世界が違うから、本当はみにくいからと自分を納得させていたが、そんなのはただの言い訳だ。
 本当は、ユートが私のことなんか好きになってくれるわけがないから、気持ちを伝えることを恐れていたのだ。
 それなのにユートは、こんな私を好きだと言ってくれた。こんな臆病な私を、好きだと言ってくれたのだ。
 私はズビズビ鼻をすすりながら叫んだ。

「私もユートのことが好きだー!! 死ぬほど愛している!!」

 私の言葉を聞いて、ユートは安心したように笑った。

「うん。知ってる」

 知っているのか!? さすがはユートだな。私の気持ちなどお見通しなのか。
 ……い、いや。私の態度を見たら誰だって分かるか。まるで飼い主にブンブン尻尾を振る犬のようだからな。 

「でも嬉しい。ありがとうね、アレルヤ」

 そう言って私を、それはもう優しく抱き締めてくれた。私は嬉しさのあまり涙が止まらなかった。
 そんな私たちを見ながら、ミストが呆れたようにつぶやいた。

「ついに両想いになってしまった……。これから大変だぞ」

※※※※

 長い時間泣き続けた私の涙も、やっとおさまってきた。それを見て、ユートはポツポツと語り始めた。

 なんでもユートは、ずっと前から私の気持ちに気付いていたらしい。だが、ユートは応えなかった。それはユートが無職のパチンカスだからだ。こんな適当な人間が、完璧な私の恋人になるなどおこがましい――と思ったそうなのだ。そんなことはない。ユートの方が完璧だ。私など、本当の姿はみにくいし、鈍感だし、大した男ではない。
 だが、私が結婚すると聞いて、居ても立っても居られなくなったそうだ。
 ダメ人間なら、変わればいいじゃないか! そう強く思って私に告白してくれたらしい。

「ありがとう、ユート。ユートはダメ人間なんかじゃない。素晴らしい人間だ」
「そうかなぁ。客観的に見て、ものすごくダメ人間だと思うよ?」

 ユートの言葉に、ミストもうなずいた。

「私もそう思います」

 私はミストをキッと睨み付けた。

「うるさいぞミスト! 黙れ!」

 私たちのやり取りを見て、ユートは苦笑した。

「と、言うわけでさ。結婚やめて?」
「あぁ! もちろんだ! 結婚などしないぞ!」

 私の言葉を聞いて、ミストはオロオロした。

「い、いや……。魔王様。結婚しなきゃダメですよ。イワルゴス様のことはどうなるのですか?」
「!」

 そ、そうだった!
 嬉しさのあまり、イワルゴスのことが頭から吹っ飛んでしまった。
 でも、結婚はユートが嫌がるし。
 どうしたらいいのだ!?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

処理中です...