歳上公爵さまは、子供っぽい僕には興味がないようです

チョロケロ

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第四話 名誉挽回

 それから馬車に乗り、モーリス様とお供一人を連れて湖に向かった。
 僕は先ほどのメリアスとの会話で落ち込んでいた。
 でも、元気しか取り柄のない僕がしょぼくれていたらモーリス様が心配すると思い、わざと元気なふうを装った。
 結果、僕ははしゃぎまくるただのバカガキになってしまった。きっとモーリス様は『元気過ぎて引く……』と呆れてしまっただろう。
 そんな感じで僕の空元気はピクニックが終わるまでずっと続いた。あまりにはしゃいだので、帰りの馬車の中で寝てしまったくらいだ。
 あぁ……。僕って本当子供っぽいなぁ……。そういうところがダメなんだよ。今頃モーリス様はこんなガキと結婚したのは失敗だったな……と後悔していることだろう。
 どうしようどうしよう!

 そんなことを考えながら、モーリス様と一緒に夕食を食べていた。
 僕は、ピクニックの失敗を挽回しなくちゃ。今夜の僕はマナーの良い大人っぽい紳士を演出するぞ! などと焦っていた。
 そのため、なるべく大人っぽく見えるよう、静かに夕食を食べていた。
 いつも馬鹿みたいにお喋りしているのに今日は無口なので、モーリス様は不思議そうな表情をしていた。
 だが、僕は無言を貫く。
 夕食を食べ終わった僕は、『失礼します』と一言声をかけてからすぐにお風呂に向かった。
 抱いてくれる可能性は限りなく低いと思うけど、一応お尻の準備をしておく。
 お風呂から出ると寝る支度をし、寝室に向かう。
 ベッドに横になった僕は、今夜もモーリス様が来るのを今か今かと待ちわびていた。
 よしよし。今夜の僕はなかなかお上品だった。これで名誉挽回できただろう。
 あとはモーリス様におやすみなさいと挨拶して眠りにつけば完璧だ!
 
 だが、モーリス様は読書でもしているのかなかなか寝室に来なかった。
 もう寝そう……と思いながらうつらうつらしていたら、やっと寝室の扉が開いた。

 モーリス様だ!

 僕はベッドから起き上がり、上品に微笑んだ。

「旦那様。もう寝るのですね」

 僕がまだ起きていたことに驚いたのか、モーリス様は少しだけ目を見開いた。

「あぁ。寝るよ」

 そう言ってニッコリ微笑むと、ベッドに乗り上げた。
 この後モーリス様は、いつものように僕の頰に口付けて、『おやすみ。可愛いセルビット』と言って眠りにつくだろう。
 だから僕は、モーリス様の口付けを待っていた。
 だが、今日のモーリス様はいつもと違った。
 口付けをせずに、じいっと僕の顔を眺めているのだ。
 どうしたのだろう? と思っていたら、モーリス様がゆっくり口を開いた。

「セルビット……。明日から寝室を別にしようか……」
「え?」

 僕はバカなので、モーリス様の言葉が一瞬理解できなかった。
 ポケーッとマヌケヅラをしていたら、モーリス様がニッコリ微笑んだ。

「その方が、君も嬉しいだろう?」
「……」

 あまりのショックで言葉が出てこない。
 モーリス様は、なぜ僕と一緒に寝たくないのだろう?
 
 前の奥様のことが忘れられないから?
 僕が子供っぽいから?

 色々な可能性を考えて、頭がぐるぐるした。

 しっかりしろ、僕!
 こういうときは、『分かりました、旦那様』と言って優雅に微笑むのだ。
 それが、大人っぽい紳士の対応だ。
 理由など聞いたら失礼だ。旦那様の言うことは絶対なのだ。
 旦那様に対して、問い詰めてはいけない。不満を持ってはいけない!

――いけないんだけどさぁ。

 僕は悲しくて悲しくて、この場から消えてなくなりたいと思った。
 モーリス様に拒絶された。寝室別にしようって言われた。僕のことが嫌いなんだ……。

 我慢しようと思ったのに、気が付けばボロボロ涙があふれてきた。
 堪えきれなくて、僕はふぇーんと情けない声を漏らしながら号泣した。
 そんな僕を、モーリス様は驚愕の瞳で見つめている。
 こ、子供っぽいなぁ……僕は。
 でももう我慢できない。認めるよ、僕は子供なのだ。
 どうせ嫌われているのなら、もう気にしない。
 僕の思いを全てぶちまけてやる! 

「モーリス様は、子供っぽい僕なんか嫌いなんだぁ……」
「え?」
「モーリス様は、前の奥様が好きなんだ。だから抱いてくれないんだー! モーリス様のバカ!! モーリス様なんか大っ嫌いだー!」
「えぇ?」

 僕はモーリス様の目の前でギャン泣きした。
 あぁ……。こんなことを言ったら確実に離縁されるな……。
 でも、もう知らない!

 きっと、モーリス様は呆れて寝室を出て行ってしまうだろう。それから、もう二度僕には笑いかけてくれなくなるはずだ。
 それは寂しいな……。もう一度モーリス様に笑いかけて欲しい。
 でも、その願いは叶わないだろう。だってこんな面倒くさい姿を見せてしまったのだから……。
 後悔してももう遅い。
 僕は、ヤケクソになっていた。

 だが次の瞬間、モーリス様があり得ない行動に出たのだ。

「セルビット! ごめん……、ごめんよ! 私が悪かった!」

 そんな謝罪と共に、僕をギュッと抱き締めたのだ。

「!?」

 困惑する僕をよそに、モーリス様は絞り出すような声をあげた。

「君の気持ちに気付けなかった私が悪い。本当は、君のことを誰よりも愛しているのに……」

 モーリス様の衝撃告白に、僕は『へ!?』とマヌケな声をあげたのだった。
 
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