ロックに沼り音に溺れFXXKに堕ちる少年群(旧「ロック音塊中毒少年群」):RGF side【第一部 完】

十鳥ゆげ

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第4話:奇襲

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 入部以降、俺は授業のない時間、部室の窓際に座り込んでベースを膝に置き開放弦でボーンボーンと単音を鳴らしては、それが三津屋アキラを呼び寄せる呪文か儀式か何かのように空想しながら茫洋と過ごしていた。


 水沢タクトの姿は数日見ていない。
 あの後、上級生たちが色々質問攻めにして明らかに不愉快な顔をしていたが、でもどうも俺から見ると彼は何か目的があって軽音部に入ったように思えた。
 それにしてもあの曲は凄かったな、もっとあいつの曲聞きたいな。


「おい! 水沢と三津屋が組むってよ!!」


 昼休みの終わり頃、部室に駆け込んできた二年の先輩がそう叫んだ。
 室内のメンバーはざわめき、

「やべーな! 最強タッグじゃん!」
「ベースとヴォーカルどうすんだよ」
「あの二人についていける奴なんていんのか?」
「三津屋が探し回ってるらしいぜ」

 といった具合に騒ぎ始めた。

 俺の心臓は、物凄い勢いで脈打ち始めた。
 ベースとヴォーカルが要る。
 三津屋アキラのドラムで、水沢タクトの曲——


……どうしたら、どうしたら、どうしたら、入れる?


 午後の授業の間もずっと『どうすればどうすれば』と考えるばかりで、具体策は何も浮かばなかった。
 放課後また部室に赴き、いつもの場所に座り込み、少し本気でベースを弾いた。数名が振り返った。ああ、歌いたいな。でもここではちょっと恥ずかしい。
 
 やがて徐々に部員達が去って行き、それでも俺はまるで何かを待っているような気分で、窓際から動くことなく、ベースは膝に置いたまま、俯いてぼんやりとしていた。

「へぇ、ちっちゃいのに五弦なんだ」

 声は頭上から降ってきた。
 のんびりと顔を上げると、俺の顔面はぴしりと凍り付いてしまった。

 三津屋アキラだった。

「俺、三津屋アキラ。ドラム叩いてる。きみ、いつもここいんね」

 え、認識されてた?!

「えと、知ってるよ、三津屋くん。俺は須賀結斗。なんか、よ、用事?」

 我ながら声が震えていないか赤面してないか不安だった。

「アキラでいいよ。よかったらリズム隊同士、ちょっと話さね?」

 断る理由がどこにある?
 俺は内心で狂喜乱舞しながら、あの三津屋アキラが俺を見てる、とか、あの三津屋アキラが俺に話しかけてる、とか、小学生ばりの反応を心中に押し込んでいた。
 
 一階まで降りたので、てっきりどこか喫茶店かファミレスにでも行くのかと思いきや、三津屋アキラは、「あ、こっちこっち」と半地下に続く階段を指さした。

 半地下に降りると、ほこりにまみれた廊下があり、ゴミや不要品が投げ込まれている中、ドアノブがいくつか並んでいた。
 一番奥まで歩き、灰色の、おそらく中はもともと教室だったと思われるドアの前で彼は足を止めた。

「入ろっか」

 三津屋アキラがカジュアルにそう言ったので、俺は素直に従い、ドアを開けて内部を見た。パイプ椅子や長机が部屋の半分を締めていて、電灯もつくか分からない。
 こんな所で話すのか、もしかして三津屋アキラは節約家なのか、なんて一瞬気を緩めた瞬間、

「えっ!」

 後ろからいきなりアームロックをかけられ、手前の壁に押しつけられた。驚いている間に、三津屋アキラの大きな右手が俺の両手首を軽々と握り、股に素早く膝をセットされ、俺は完全に動けなくなってしまった。

「つーかまーえた」

 耳許でそう囁かれると、俺の全身に鳥肌が立った。
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