セラルフィの七日間戦争

炭酸吸い

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第三章

006 残り十分

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 魔法陣の反動で動けないでいるライム。遠くで何かやり取りをしているトトとセラルフィを見て、何もできない自分が情けなくなった。
 元来ライムは戦闘向きの部類ではない。どちらかと言えば情報収集として暗躍する側の人間だ。
 直剣を立て、立ち上がろうとする。すぐに力が抜け、無様に倒れた。

 倒れたところで、顔を上げた瞬間。目の前の光景に愕然とした。

「なんだ……あれ」

 セラルフィの体が大きく燃え上がり、大槌に取り込まれる。更に大槌が姿を変え、装甲のような外郭を押し広げた。
 激しく火を噴く大槌。その火炎はトトの体を覆い、肉体と同化させた。

「やってしまいましたね、トレイル。そのまま殺せば良かったものを」

 狂ったように笑うシルヴァリー。自身の描いた魔法陣に手を着いた。
 直後。蛇のように魔法陣の術式が腕を伝い、眼球へと集約される。壮絶な痛みが襲っているのか、シルヴァリーは呻きながら、上着を破り捨てた。

「もはや、お互い人のまま戦うことはできそうにありませんねぇえへへへへへ!」

 あらわになった上半身。禍々しく刻まれた術式。焼けるように煙を上げ、流血していたその瞳には激しい炎のような光が紫に灯っていた。

「邪魔者を先に始末しておきまショウカ」
「ッ!」

 ライムの方を向くことなく呟くシルヴァリー。それでも自分のことを言っているのだと悟ったのは、右腕に空間の歪みを感じた後だった。

「ぐ、あッ」

 右腕が歪み、ねじ切ろうとする。嫌な音を立て、腕があらぬ方向に――

「下がって」

 鈍い音が虚空を穿った。遥か先にいたはずのトトがすぐ目の前にいる。
 その声と同時に右腕の歪みが消失。トトがその大槌で防いだのだろうか。隣にいると、炎と化したトトの体の熱がより伝わった。

「ライム」

 何かを言おうとするトトをライムは遮った。

「……いい。分かってる。ぶっ倒せ」

 今更言われなくても良い。言いたいことはお互い同じだと自然分かっていた。

「悪かった」
「バカ言うな。お互い様だ」

 一歩ずつ、右腕を庇いながら後退する。ライムが安全な位置まで下がったことを確認すると、トトの柔和な表情は一瞬にして厳しいものに変わった。

「時間が惜しい。三分で殺す」
「三分? クフフ……! 仮にも組織の《マヨイビト》を専門としていた人間を相手にデスカ? ……付け上がるのも大概にしろよ」

 苛立ちにも似た声音。
 地面に落ちている、シルヴァリーがずっと携帯していた懐中時計を見て、トトは悟った。

 トトの大槌と同じように、彼にとってはあの懐中時計が魔術行使の代価を担っていたはず。湖にそびえる女神像も、懐中時計を破壊しておきながら存在を維持している。
 それを放棄した上で、ライムを襲えた意味。

「シルヴァリー、お前まさか」
「……や、やっと分かりましたか。けけ、契約したんですよ。うふふふふ! マヨイビトを殺すことでねぇ! あはははは! で、でなければ。でなければでなければでなければッ。 国レベルの人口、全ての時を止めるなど! いくら寿命があっても足りない! もっとも、再生の臓器は消えてしまいましたがねええええ! アハハハハハハハハ!」

 シルヴァリーは狂ったように笑った。楽しそうに。悲しそうに。
  



 ――心臓爆発まで、残り十分。
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