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シグマス編 ~出会い~

行ってきます

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 日が少し傾き始め、任務の為にダルタルに向かう飛行船へ向かった。
 ダルタルの王女達と操縦者達は先に搭乗していて、後は連合軍の同行者達が搭乗すれば出発だ。
 飛行船の前には、イサとカイト、コーデリア、他の搭乗員と、見送りのサクラやハズキなどがいた。
「イサ。気を付けてね」
 サクラがイサを抱き締めて、心配そうに声をかける。
 当分会えなくなると『先読み』で分かっているから、余計に離してくれない。
「…俺がイサから離れなければ、帰って来れるんだ。心配するなって」
 カイトは不安など無いように、自信満々にそう言う。
 カイトが僕から離れない…。
 イサはドキドキして、嬉しくて思わず笑みを浮かべる。
「サクラさん。必ず帰ってくるよ」
 カイトが僕に、『帰れる』と自信を持って言うことが出来る力をくれる。
 自分の『先読み』だけでなく、誰かがそれを信じて宣言して、行動に移してくれる…。
 いつもの事だけど。
 それが自分の事に関係して、言ってくれるのがカイトだと言うだけで、こんなにも心が温まるものなのだろうか…。
 …必ず帰ってくるよ。
 イサはカイトを見て強く誓った。


 イサ達は飛行船に乗り込み、日が沈む前の空へと飛びたった。
 イサに与えられた部屋で、カイトと並んで外の風景を眺める。
 飛行船から見える見慣れた街並みが少しづつ離れて行って、小さくなり、雲の切れ間から街並みを見下ろす。
 当分、この風景を見ることが出来ないだろう…。
 少し感傷に浸りながら、隣に居るカイトを見る。
 …カイトが側にいてくれれば、不安はない。
 …誰かが側に居るだけで、気持ちが安定することなんて、今までに無かった。
 いつも緊張と不安に刈られてばかりだったから…。
 ほとんど見えなくなったダルタルの街並みを見下ろす。

 …行ってきます。


*****


 『先読み』~あなたが一緒じゃなければ帰れない~シグマス編は、ここで終了します。
 この後は、行った先々での出来事を書いて行く予定です。
 
 でもその前に、ハズキとアヤトの話を書きたいので、ちょっと脱線します。
 『先読み』~あなたと一緒じゃなければ眠れない~の、予定です。
 
 よろしくお願いいたします。
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