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4 樹木再生
*最後の夜~ジン~
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翌朝、リーンに少しの眠りに薬を飲ませて、眠らせた。
多分、あの日から、…狼が呼びに来てから、ほとんど眠っていないはず。
この短期間で様々な情報の中から、今の答えを探してきたのだ。
今は静かに眠らせて、俺はやらなくてはいけないことがある。
診療所のスバルに全てを話し、一緒に村へ、村長や村の住民を集め話をする。
「魔力の強い者は、この村にはいない…」
「数人集まれば、一人分くらいの魔力にならないか?」
「その魔法とやらが成功しなければ、この村も終わりだ」
「町にいる若い者を呼び寄せれは、何とかなるんじゃないか?」
急な話で村人達はざわめき、収集がつかない。
「時間がない。明日、日の出と共に『再生の魔法』が始まる。それまでに、出来るだけ集めてくれ。…山の奥の『御神木』があった…俺の家へ」
ジンは幼馴染みのスバルと診療所へ戻った。
「なんか、情けないな…。自分の村の事なのに…」
急なことで、村人達も戸惑いがあるだろう…。
だが、時間がない…。
この地域を護る魔力が無くなってしまうのも…俺の時間も…。
部屋へ戻るとリーンはまだ眠っていた。
出会った頃と同じ姿のまま…。
ベッドに腰を掛け、眠るリーンの頬に触れると、左耳の耳飾りがキラリと光った。
いつもは髪に隠れていて気付かなかったが、左側だけになった金色の耳飾りに、魔女の魔法が掛けられている。
「お前は、どれだけのモノを背負ってるんだ…。」
そして、リーンをそっと抱き締める。
「側にいてあげられなくて、ごめんな…」
「悪いけど、俺の家の有ったところに連れていってくれないか。今夜はあっちに泊まる」
俺に迷いはない。
迷いがあるのはリーンの方…。
「本当に良いのか…?」
スバルは不安そうに訪ねる。
「俺は今、リーンにもらった魔力で生きている。リーンが来なければ、直ぐに死んでいた。…そう、…あの時、俺は死にかけていたんだ…」
ジンは思い出す。
身体が自由に動かせず、寝たきりになっていた。
もうすぐ死を迎えるのだと覚悟していたら、リーンが来た。
「…。」
「少し、長く生かしてもらったんだよ」
ジンの気持ちは固まっていた。
夕方、静かに眠っているリーンを馬車に乗せ、山奥の御神木の元に行く。
雨風を凌げればいいから、と、廃墟の一角に毛布を敷き、リーンを寝かせ、荷物を置いた。
「日の出までに、また来る」
そう言って、スバルは帰っていった。
「なんとなく、…思い出した。この家、あの木…」
窓から切られてしまった御神木の切り株を見る。
子どもの頃の思いでの…場所…。
「守ってあげられなくて、ご免な…」
リーンが目覚めた時、辺りは薄暗くなっていた。
膝枕をして、触り心地のいいリーンの髪を撫でていた。
「…ジン?」
「良く眠っていたね」
「ここは?」
身体を起こしたリーンが不思議そうに辺りを見回す。
「御神木の前に有る家。俺の実家だ」
「…。」
リーンの瞳が曇る。
「リーンの決心が揺らぎそうだったから、先にこっちに来た」
「…。」
そう、リーンは迷っていた。
側にいたから分かる。
不安で、決心がつかない状態だった。
不安を抱えたまま、魔法を使うことの危険さをよく知っているはずなのに…。
「俺は幸せだったよ。リーンとしばらくだけど一緒に旅して畑をして、暮らしたこと。だから、今度は『森の管理者』として、最善の方法を取らなくてはいけない」
「…。」
苦しいのは分かる…。
だけど、今でないと、この地域は護れない。
そして伝えておかなくては、いけないことがある。
「きっとリーンも、いつか分かるときが来る。自分の全てを投げ出してでも、護りたいもの。叶えたい…願い。叶えてあげたい願い。そんな時が来る」
まだ、出会っていない誰かの為に…。
今、俺が出来る最大限のモノ…。
「だから、…リーンにもらったこの命を…使って…俺が住んでた、この森を護って…」
リーンは黙ったまま、ジンを抱き締めていた。
「明日は早いから、食事をしたらもう一度、眠ろうね」
二人は互の温もりを感じながら、眠りについた。
多分、あの日から、…狼が呼びに来てから、ほとんど眠っていないはず。
この短期間で様々な情報の中から、今の答えを探してきたのだ。
今は静かに眠らせて、俺はやらなくてはいけないことがある。
診療所のスバルに全てを話し、一緒に村へ、村長や村の住民を集め話をする。
「魔力の強い者は、この村にはいない…」
「数人集まれば、一人分くらいの魔力にならないか?」
「その魔法とやらが成功しなければ、この村も終わりだ」
「町にいる若い者を呼び寄せれは、何とかなるんじゃないか?」
急な話で村人達はざわめき、収集がつかない。
「時間がない。明日、日の出と共に『再生の魔法』が始まる。それまでに、出来るだけ集めてくれ。…山の奥の『御神木』があった…俺の家へ」
ジンは幼馴染みのスバルと診療所へ戻った。
「なんか、情けないな…。自分の村の事なのに…」
急なことで、村人達も戸惑いがあるだろう…。
だが、時間がない…。
この地域を護る魔力が無くなってしまうのも…俺の時間も…。
部屋へ戻るとリーンはまだ眠っていた。
出会った頃と同じ姿のまま…。
ベッドに腰を掛け、眠るリーンの頬に触れると、左耳の耳飾りがキラリと光った。
いつもは髪に隠れていて気付かなかったが、左側だけになった金色の耳飾りに、魔女の魔法が掛けられている。
「お前は、どれだけのモノを背負ってるんだ…。」
そして、リーンをそっと抱き締める。
「側にいてあげられなくて、ごめんな…」
「悪いけど、俺の家の有ったところに連れていってくれないか。今夜はあっちに泊まる」
俺に迷いはない。
迷いがあるのはリーンの方…。
「本当に良いのか…?」
スバルは不安そうに訪ねる。
「俺は今、リーンにもらった魔力で生きている。リーンが来なければ、直ぐに死んでいた。…そう、…あの時、俺は死にかけていたんだ…」
ジンは思い出す。
身体が自由に動かせず、寝たきりになっていた。
もうすぐ死を迎えるのだと覚悟していたら、リーンが来た。
「…。」
「少し、長く生かしてもらったんだよ」
ジンの気持ちは固まっていた。
夕方、静かに眠っているリーンを馬車に乗せ、山奥の御神木の元に行く。
雨風を凌げればいいから、と、廃墟の一角に毛布を敷き、リーンを寝かせ、荷物を置いた。
「日の出までに、また来る」
そう言って、スバルは帰っていった。
「なんとなく、…思い出した。この家、あの木…」
窓から切られてしまった御神木の切り株を見る。
子どもの頃の思いでの…場所…。
「守ってあげられなくて、ご免な…」
リーンが目覚めた時、辺りは薄暗くなっていた。
膝枕をして、触り心地のいいリーンの髪を撫でていた。
「…ジン?」
「良く眠っていたね」
「ここは?」
身体を起こしたリーンが不思議そうに辺りを見回す。
「御神木の前に有る家。俺の実家だ」
「…。」
リーンの瞳が曇る。
「リーンの決心が揺らぎそうだったから、先にこっちに来た」
「…。」
そう、リーンは迷っていた。
側にいたから分かる。
不安で、決心がつかない状態だった。
不安を抱えたまま、魔法を使うことの危険さをよく知っているはずなのに…。
「俺は幸せだったよ。リーンとしばらくだけど一緒に旅して畑をして、暮らしたこと。だから、今度は『森の管理者』として、最善の方法を取らなくてはいけない」
「…。」
苦しいのは分かる…。
だけど、今でないと、この地域は護れない。
そして伝えておかなくては、いけないことがある。
「きっとリーンも、いつか分かるときが来る。自分の全てを投げ出してでも、護りたいもの。叶えたい…願い。叶えてあげたい願い。そんな時が来る」
まだ、出会っていない誰かの為に…。
今、俺が出来る最大限のモノ…。
「だから、…リーンにもらったこの命を…使って…俺が住んでた、この森を護って…」
リーンは黙ったまま、ジンを抱き締めていた。
「明日は早いから、食事をしたらもう一度、眠ろうね」
二人は互の温もりを感じながら、眠りについた。
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