聖~ひじり~ ソレを恋と呼ぶならば。⦅完結⦆

ゆう

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出会って一年が過ぎていた

…好き 1

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 パーティーが終わり、別館の聖の部屋に戻ると、聖はパーティーであった、イライラ、ムカムカの話をクロに伝えた。
 クロは微笑んで、
「嫌だったら、そう言って欲しい。『女性達と喋ってないで、側にいろ』って…」
「…言って良いの?」
 聖はキョトンとしてクロを見る。
「聖がそれを望むなら」
 クロは優しい笑顔で微笑みかけてくる。
「…だったら、僕の側にいて」
「ああ。」
 クロが髪を撫でてきて、口付けてくる。
 …もっと、側にいて欲しい…。


 翌日。
 クロと昼食を一緒にしたが、クロはまだ仕事があると、小納谷に残り、聖だけ先に家に帰った。
 そして二階にある沙羅の部屋に向かった。
 沙羅の部屋はあまり使っていないが、ベッドと机、本棚が有り、年に数回、泊まっていく。
 そして、沙羅に言われた、沙羅の部屋のベッドの下にある、本の入った箱を取り出した。
 その中から、一冊本を取り出す。
 普段は、文学、経済、資料、図鑑、参考書、など、取りあえず興味を持ったモノを集めて読んでいた。
 沙羅のこういった、小説は読んだことがなかった。
 聖はベッドに寄りかかり、本を読み出した。


 それは物語になっていて、読みながら、登場人物と同じような、イライラ、ドキドキを、クロにいだいていたことを思い出す。
 そして、自分とクロを重ね合わせてしまう。
 …クロに独占欲を感じていたんだ。
 …側にいて欲しいのも、その手で抱き締めて欲しいのも…。
 …特別だから。
 …家族とか、友達とか、そう言ったものではない…。
「…好き…だから…」
 なぜか、聖の目から涙が溢れてきた。
 今まで止まっていた時間が、感情が、クロによって動き出していた…。
 …これが…恋…?
 …もう、あの優しい温もりを手離せない…。
「…聖?」
 仕事の終わったクロが、いつの間にか家に…沙羅の部屋に来ていた。
「どうした?」
 クロがしゃがみこみ、聖の涙を拭う。
 この優しさは…僕だけのもの…。
 誰にもあげたくない…。
 今、読んでいた、小説の世界と現実が交差する。
「クロが側から居なくなるのは嫌だ」
「うん?側にいるよ」
 クロが優しく微笑む。
「…ずっと…側に…いて…」
 小説の中の台詞が自然に口から出てきて、クロにしがみつく。
「…あっ…えっと…ココでするわけには、いかないから…下に降りようぜ」
 クロは視線をさ迷わせながら、聖から身体を離した。
「…。」
 聖は何を言われたのか、一瞬戸惑い、分かって頬を染める。
 クロが聖のほほに口付けてくる。
「先に下に降りてるよ」
 そう言って、クロは階段を下りて行った。
 聖は本をしまい、電気を消すと、階段を下りて、クロの使っている部屋へ入った。
 そして、布団の上に座るクロの側に座り、聖は自分からクロに口付けた。
「…何で、あんな風にイライラするのか、ドキドキするのかわかった。…クロだけ…」
 聖は耳を真っ赤に染めて、今の精一杯を伝える。
「…これが…多分…好き…」
「好きだぜ、聖」
 何度もクロに言われてきたこと。
 …今なら、その意味も…気持ちも伝わる。
 クロが唇を重ねてくる。
「少しずつでいいから、俺を独占したくなってくれ」
「もう、独占している」
 そう言って聖はクロを抱きしめた。
 ハッキリと自覚して、心が暖かくなって、離れたくなくて…。
「…クロが…好き…」

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