先読み~あなたが一緒じゃなければ眠れない~⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
6 / 38
日常

警報

しおりを挟む
 仕事に出掛けていたカイトさんが久しぶりに、半年ぶりに帰ってきた。
 疲れた様子だが、途中で市場に寄ってきたのか、買い物袋を抱えて、二階の部屋に向かって階段を登り始めた。
 アヤトはカイトの部屋の状態を思い出して、カイトに声をかける。
「…ベッドを使えるように整えようか?」
 ずっと不在だったので、ベッドマット立て掛け、布を掛けてあるだけだ。
 すぐには使えない。
「ああ、頼む」
 アヤトは昼食の片付けを後にして、カイトと一緒にカイトの部屋へと向かった。
 部屋に入り、カイトはテーブルの上に買い物袋を置くと、シャワールームへと向かっていった。
 アヤトはベッドマットをもとの位置に戻し、準備してあったベッドのシーツをかけ、枕と枷布団を準備して部屋を出た。
 疲れているだろうし、シャワーを浴びたらそのままベッドへ直行だよね…。
 起きたときに、何か軽食を準備しておこうか…。
 アヤトはそう思いながら、調理場に戻り、昼の片付けを始めた。

 そしてしばらく…一時間も過ぎないくらで、屋敷の警報が鳴った。
 
 警報と言っても、登録者以外の者が屋敷の敷地に入ると、ワンワンと犬の鳴き声が鳴るようになっているのだ。
 最初はうるさいサイレンだったので、ビックリしてコップを落として割ってしまい、もう少し違う音が言いとハズキさんに言って、悩んだ結果、番犬のような犬の鳴き声で収まった。
 防犯用のベルなのだが、日中は、誰かが来たと教えてくれるだけなので、それほど警戒するほどでもない。
 だけど一応、仕事が休みで屋敷にいるとき、警備している、今日の当番のゴスが玄関ホールに向かったのが見えた。
 僕も気になって食堂から玄関ホールの方を見る。
 玄関ホールの横の、室内からしか見えない小窓から、小柄な人影が見えた。
 すると小柄な人は玄関前に立ち、しばらく立ち止まって、律儀に扉をノックしてきて扉が開いた。
「こんにちわ」
 若い青年の声がした。

 開いた扉の隙間から、ゴスの向こうに、年の近い青年がいるのが見えた。
 ふわりとしたクリーム色の髪の、可愛らしい感じの、高等科の学生かと思うくらいの青年だ。
 何の用だろう…。
「…何かご用ですか」
 ゴスは警戒したまま青年をじろりと見ている。
 青年は肩をすくめて言った。
「あの、ココにカイトさん…いると思うんですけど…」
 青年がそう言うと、ゴスは後ろにいたアヤトの方を向いた。
 どう、判断して良いのか迷ったからだ。
 それにカイトさんの知り合い!?
 アヤトは眼を丸くして驚いて、足早に玄関ホールに近付き、青年の前まで来ると訪ねた。
「…カイトさんの知り合い?」
「…えっと…」
 彼はどう言ったら良いのか迷いながら、意を決してようにアヤトを見て答えた。
「国交連合軍のイサと言います。急ぎでカイトさんに話が有って来ました」
 彼が緊張気味に言うと、アヤトはゴスに、カイトを呼びに行くように言い、ゴスは玄関ホールの奥に有る階段を登っていった。
 国交連合軍の関係者の、急ぎの話?
 連合軍からの急ぎなら、カイトさんかハズキさんに緊急連絡が入るが、そんな様子もない。
 個人的な話だろうか…。
 名前も名乗っているし、カイトさんが来れば分かること…。
「どうぞ、中に入って」
 アヤトは彼を促し、屋敷の中に入れた。
 
 玄関ホールの談話室側に、談話室に有った小さなソファーとテーブルを置き、以前は無かった待合室の様な場所を作って有った。
 訪ねてきた知らない人を談話室に入れるわけにも、食堂に入れるのも嫌だったので、広い玄関ホールで座って待ってもらう場所を作ったのだ。 
 僕では危険とか危険じゃないとか判断できないし、この場所ならば、どこからでも客人の様子が見れる…。
 アヤトは彼を促し、ソファーに座ってもらったが、彼は落ち着き無い様子でソワソワしている。
 カイトさんの知り合い…だよね…。
 そう思っていると、ゴスが階段から下りてきて、その後に、二階から不機嫌そうなカイトが顔を覗かせた。
 シャワーを浴びてそのまま眠ってしまっていたのか、まだ上半身裸で、首からタオルをかけている。
 ゴスに起こされて機嫌が悪いのかも…。
 カイトはこちらを見下ろして、彼を見て驚いている。
 彼が来る予定では無かったと言うこと…。
「…何しに来た」
「…急ぎの話をしたくて…」
 彼が真剣にカイトを見上げていると、カイトは大きなタメ息を付いて階段を下りてきた。
 そして彼の前まで来て、屈んで彼の手首を掴んだ。
「…来い」
 彼はカイトに引っ張られソファーから立ち上がると、カイトに手首を掴まれたまま、後を付いて階段を上がり始めた。

 アヤトとゴスは呆然とその様子を見て、二人の姿が見えなくなって、ハッとした。
 …カイトさん?
 戸惑うような、困った顔をしたカイトさんを見るのは始めてだったからだ。
 アヤトとゴスは顔を見合わせ、大きなタメ息を付くと、何事も無かったかのように、自分の仕事に戻った。


 えっと…夕方の、夕食の時間になってもカイトさん達は食堂に降りてこなかった。
 部屋に入ったまま、一度も出てきてない…。
 それほど深刻な話なのだろうか…。
 それともカイトさんは、疲れていたようなので、眠ってしまっているのだろうか…。
 気にはなるが、部屋に訪ねていくのをためらっていた。
 …まぁ、お腹が空いたら、降りてくるだろ…。
 アヤトは残ったご飯でおにぎりを作り、夜中にでもお腹が空いて降りてきたとき食べれるように、食堂のいつもスイーツを入れているガラスケースの中に置いた。
 ここに置いておけば、気がつくだろう。
 そして明日の朝食の下準備をして、誰もいなくなった大浴場でシャワーだけ浴びてベッドに入った。
 

 そしてウトウトと寝落ち仕掛かったとき、ガタリと部屋の扉が開き、アヤトがぼんやりと視線を向けると、ハズキさんがそこに立っていた。




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

青い炎

瑞原唯子
BL
今日、僕は同時にふたつの失恋をした——。 もともと叶うことのない想いだった。 にもかかわらず、胸の内で静かな激情の炎を燃やし続けてきた。 これからもこの想いを燻らせていくのだろう。 仲睦まじい二人を誰よりも近くで見守りながら。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

処理中です...