神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
199 / 462
神の宿り木~再生~

水の魔法石

しおりを挟む
 リーンとカズキが水上集落の神殿に向かうと、入口にダレスか待っていた。
 ここは以前とほとんど変わっていない。
 神殿はそのまま手を付けずに、補強だけをしたのかもしれない。
 そして中に入ると、『水中都市』と唯一連絡が取れる、通信網が起動されていて、体格の良い美丈夫、水底を思い出すような長い紺色の髪の、金色の目をしたフールシアの姿がそこに有った。
「リーン!」
 顔を見せるなり必死の形相でこちらを見てくる。
「来るなとはどういう事だ!」
「約束が有るから、フールシアが来る頃には帰っているからだ」
「…。」
 フールシアはガックリとした様子だが、リーンはさっさと本題に入った。
「それより、お願いが有ってきた。『水の魔法石』は直ぐに手に入るか?」
 フールシアは少し考え、首を傾げた。
「…直ぐには無理だ。…リーンが欲しいのは、普通のではないのだろ?」
 その辺は察しが良いので助かる。
「ああ。強力な魔力を持っている『水の魔法石』だ」
「魔力を込めるから、しばらく時間が欲しい」
 と、言うことは、出きるのだろう。
「準備出来たら、水上集落のダレスに渡して欲しい。…誰かここまで使いを寄越すから…」
「俺が持っていってはダメか?」
「ダメに決まっているだろう!湖ほど水はないし、突然竜人族が現れたらビックリするだろ!」
 竜人族は長寿なのだが、数が少ないのだ。
 一生に一度、見れれば幸運なくらい…。
 それに、魔力を制御しないまま、陸上の者達が姿を見れば、逃げ惑うのは目に見える。
「魔力を普通の魚人族の方達くらいに押えて、制御出来るようになれば、かまわないが…」
「うううっ…」
 フールシアは呻いて、頭を抱えている。
 今の魔力を赤子くらいに押えるつもりでないと、強力な魔力が漏れ出てしまう。
 フールシアに取っては酷な事だろう。
「『水の魔法石』お願いします」
 リーンは改めて、フールシアにお願いした。
 まだ、何かフールシアが叫んでいたが、ダレスに言って通信をさっさと切ってしまった。
「宜しかったのですか」
 ダレスは心配そうに訪ねてくる。
「良いんだよ。フールシアに付き合っていたら、日が暮れてしまう。…それに、後ろで誰かが書類を抱えていたし…」
 リーンはそう言って笑った。
 仕事の途中に繋いでもらったのだ。
 フールシアは良いかもしれないが、回りの者達が困るだろう。


 フールシアとの話が終わり、リーンが神殿から出ようとすると、ダレスが声をかけてきた。
「今日は、こちらにお泊まりになりませんか」
 リーンはカズキと顔を見合わせる。
 …急ぐわけではないが、週末にはリオナスにたどり着きたい。
「せっかくですし、宴を催したい。…若い者達にも、リーン様のお姿を見てもらいたいのですが…」
 そう言えば、集落にいたのは女性や子供達が多かった。
「男達は貯水槽の管理掃除に行っております。塩のおかげで生活は楽になりましたが、我々の生命線である貯水槽の管理は、集落の男達で定期的に行っているのです」
 それで男達が少なかったのだ。
 この集落には貯水槽が二つある。
 交代で定期的に掃除するとなると、集落の者達でした方が効率的には良い。
「暗くなる前には戻ってきますし、是非に…」
 ダレスは必死のようだ。
「カズキ、どうする?」
「…明日の早朝に、ここを出発すれば、夕方にはリオナスに着きますよ」
 そう言ってカズキは微笑む。
 …決めるのは、私…。
「…わかった。今夜はお世話になるよ」
 リーンはそう言って微笑む。
「皆も喜びます」
 ダレスはホッとため息をついて、質問してきた。
「…リオナスとは、獣人族と人族が暮らす、最近出来た町の事ですよね」
「そうだよ。今、ルークが中心になって町を運営している」
「ルーク様が…。我々魚人族には、なかなか行けない場所ですよね…」
「そうだね。陸地ばかりだから、川が流れているくらいで、水も少ないし…」
「…若い者達が、行ってみたいと言い出していて…陸地は大変だと言っても聞いてくれず…」
 ダレスは困った顔をして、リーンにどうしたら良いか聞いてくる。
 魚人族が陸地を旅するのはとても過酷だ。
 人族や獣人族よりも水が多く必要で、なるべく日影を移動するか、水辺を移動するしかない。
 しかしリオナスの近くに川は流れているが、元草原地帯である陸地だ。
「…そうだな…『天水球』は作れるように教えただろうか?」
「『天水球』ですか…」
「まだですよ。塩と分離して、水球は作れるようになりましたが、『天水球』を作っている者は見ていないです」
 カズキがそう補足してくる。
「それなら、『天水球』を作れるようになったら、大量の水を運べるから、リオナスに行くことが出きるかもしれない。…水を自分で確保してれば、水不足にならないから…」
 リオナスに水人族の人達が来れるようになると、また、リオナスは活気づく。
 あっ、リオナスにも水人族用の宿があった方が良いかも…。
 水が大量に欲しくなるから、場所とか考えないといけないな…。
「夕食までの間に、『天水球』の作り方を教えるよ」
 リーンはそう言って微笑む。
「そうですね。『水球』を作れる者達を集めて、男の方達が戻ってきたら、彼らにも…」
 これが、夕食をご馳走になる分の対価。
 どうしても、そう考える癖が治らない。
 …好意で夕食をと、言われているのに。
「ありがとうございます。…若い者達にダメだとばかり言うのも、可愛そうで…」
「リオナスに来るときには、役所に声をかけてください。多分、ルーク様が居ますから」
 カズキがそう言って、集落の住民にもらった物を持ち直し神殿を出る。
 リーンもその後を追いかけて神殿を出ると、水上集落の住民が集まっていて、また、拝まれ始めた。
「…。」
「『水球』を作れる方は、水際に集まってください。ワンランク上の『天水球』を教えてくれるそうですよ」
 カズキはそう言って、住民に言いながら水上集落から橋に向かい、橋を渡り出す。
 …カズキ。馴染んでるね…。
 リーンはそう思いながら、後を付いていった。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

処理中です...