神の宿り木~旅の途中~ルーク~ …旅の終わりの始まり…⦅完結⦆

ゆう

文字の大きさ
389 / 462
希少種

療養所のスバル

しおりを挟む
 タミネキ村の療養所を営むスバルの所に、リーンはしばらく滞在していた事が有るので、二階建ての建物が見えてきて、懐かしく感じた。
 最後にスバルに会ったのは、いつだったか…。
 そんなことを思っている内に、療養所の前で馬車が止まった。
 すると建物の中から体格の良い、短いボサボサの茶色の髪で、だらしなく白衣を着た、おじさんが出てくる。
 なんとなく見覚えの有る…。
「なんだ、カムイとマークか」
 馬車の御者にカムイが座っているので、マークも一緒に来たと分かっているくらい、彼らはここによく来ているのだろう。
「お客さんもいるよ」
 カムイがニヤけておじさんに言う。
「お客?」
 リーンは御者台の横から顔を覗かせ、おじさんを見た。
 おじさんは目を丸くして硬直し、動かないでいる。
 …年を重ねて渋い感じになったスバルだ…。
 リーンはそこまで驚くとは思っておらず、苦笑いして声をかけた。
「久しぶりだな。スバル」
 リーンの声に反応して、ノロノロとスバルが動き出す。
「…心臓が止まるかと思ったぞ…」
「そんな弱くないでしょ…」
 カムイはニヤニヤと笑いながらスバルを見ると、マークが荷物を持って声をかけてきた。
「リーンさん、馬車を降りましょう。積もる話は部屋でゆっくりと」
「そうだな」
 リーンは一度顔を引っ込めて、荷物を持って馬車を降りた。
 カムイも御者台から中に荷台に入り、箱に入った荷物をいくつも下ろし、建物の中に運んでいく。
 箱の中身は、しばらくの食料と村で使う医薬品。
 療養所と言っているが、誰も療養しているわけてもなく、ほとんど宿泊施設となっていて、マーク達や狼獣人が利用する拠点となっていた。

 カムイが荷物を下ろし、慣れた手付きで馬を馬小屋に納めて餌と水を与えると、リーンとマークとスバルがお茶を飲んでいる、リビングに戻って来たところで、改めて、ここに来ることになった経緯を話し始めた。
 マークの屋敷の相続の話…。
 羽の生えた木霊の話…。
 スバルは頭を押さえて、リーンに言う。
「俺も一度だけ見た。…ジンそっくりの子供の木霊に、風霊が持つ透明の羽を持っていた。…こちらに気がつくとすぐに姿を消してしまったが…」
「…。」
 ジンそっくりの子供…。
 それに風霊となると、もしかして、あの時の風霊の魔力が影響して、羽が生えているのか…?
 ジンと一緒に眠りについた、風霊…。
 あの子は意思を持ち、自分の判断でジンと共に『宿り木』に同化した…。
「…あれは保護すべきだ」
 スバルが真剣な眼差しで言う。
「…よからぬ事を考える者が現れて、昔の二の舞にしたくない…」
 昔、『宿り木』が斬り倒され、この周辺一帯を守って来た魔力が尽き、『始まりの宿り木』の時と同じような事になりかけた。
 だが直前で、私がジンと共に訪れていて、命の尽きかけたジンが『宿り木』を復活させるため残りの生命力を全て与え、リーンは村人と狼獣人達と共に魔力を注ぎ込み、復活させた経緯がある。
 それから復活した『宿り木』はタミネキ村と狼獣人達によって守られてきた。
 リーンはしばらく考え、スバルに言う。
「ロキにも連絡を取ってくれるかな。…まだ、狼獣人達のリーダーだよね」
「ああ。…その事で…リーンに報告しないとな…」
 スバルは苦笑いして、照れ臭そうに言う。
「…ロキの弟…ロイと一緒に暮らしていてな…、リーンが来た時に、里へひとっ走り向かってもらった…」
「…。」
 ロキの弟…。
 あの頃、ロキの家には誰もいなかった。
 どこか別の場所にいたのだろうか。
 リーンが疑問に思っていると、スバルが経緯を説明してくれた。
「…ロイは身体が弱くて、成人しないとな言われていた。が、俺達人族と交流するようになって、この療養所で養生して、人族の薬を飲むようになって、元気になったんだ…。それで…まぁ…いろいろ有ってな…」
 スバルは照れ臭そうに頭をかく。
 でも、その表情は幸せそうだったのでリーンはホッとした。
 何がきっかけで、未来が変わるかわからない…。
 それは、リーンが一番、経験して知っている…。
「明日、ロキと合流してから会いに行こう」
 リーンはそう言った。
 今日は、馬車の移動で疲れているし、スバルともいろんな話をしたい。
 …ああ。
 …ルークの事…話してなかったから、言うとアズマ達みたいに驚くよな…。
 でも保護するとなると、この地の領主だけでなく、カザンナ王国まできっと関わってくることになる…。
 早めに話しておいた方が良いだろう。
 リーンはマークと視線を合わせ苦笑いすると、十年間で変わった今のリーンの状況を話した。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...