ゆうみお

あまみや。旧

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1章 一学期。

34.日曜日

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日曜日

「ううぅーーー……」
「澪、どうしたんですか?」

もうすぐ正午になる時間。
リビングでなんとなくテレビを見ていたけど、そのテレビには、「モテる男の特徴」と書かれていた。


「………モテたいんですか?」
「ううん…そういう訳じゃないんだけど、さ。」

注がれたココアを飲もうと舌をつけて、熱すぎてすぐに舌をはなした。

「僕、女の人と付き合うとか、そういう事には一切興味なくて……これって、おかしいかな……」
「え?」


結構本気で聞いているつもりだった。
けど、美優はふっと笑う。


「いえ、そんなことは無いですよ。恋愛に無関心な人は沢山います。焦る必要はないんですよ。」
(ていうか、澪に女(ゴミ)は近付けたくないですし。)


流石 美優……正直美優の方がお姉さんに見える。



「……そっか、ならよか………」
安心してテレビを見た、その時。





『やっぱり身長差は欲しいですよね!高身長男子最高です!』
髪をショートカットにした女性アナウンサーが元気よく理想を話していた。


高身長、男子………!?




「……美優、僕って身長高いかな?」
「小さいです」
「そっか…」


普通に落ち込む僕を見た美優は少し呆れ気味になって、

「……流石に男子高校生、3年生で159cmは驚きましたけど。」
「小数第一位まで言ってよ!四捨五入したら160なんだよ!?」


「うるさい」と言わんばかりの顔をされた。


「はぁ……身長欲しい。郁人、身長くれないかな……」


あいつは確か172あるって言ってたし……欲しい、まじで欲しい。



「可哀想に……ないものねだりですか……」
「………シークレットブーツ買って……」
「買いません!」
「誕生日プレゼントは身長ちょうだい……」
「妹の私が最低限プレゼント出来るものでお願いします……」





ピンポーン





「……ん?誰か来た。」
「私、出てきます。」
美優はそう言うとすたすたと部屋を出ていった。


しばらくして聞こえてきた声は、聞き覚えのある声。



「澪君いますかーっ?」
「……………莉音?」





莉音だった。




ーーー



「お邪魔しますっ!」
「り、莉音……!なんで僕の家知って……」

堂々と部屋に入ってきた莉音は、「桜木に教えてもらったの!」と言ってにこっと笑った。

「み、澪にも女の子の友達がいたんですね……ちょっと、お手洗いに………」

美優は吐きそうな顔をしてトイレに向かった。



「今のお姉さん?可愛いね!」
「妹だよ、莉音はどうしたの?……そんな大きなリュック持って。」


昨日みたいに可愛いロリータ服ではなく、ラフにYシャツにスカートにタイツ。
髪もハーフツインではなく、くしでとかしただけで寝癖がぴょんぴょんしてる。


……休日スタイルってやつかな?



そして一番気になるのは……


莉音の腰下から肩まである、すごく大きなリュックサック。


「ふふ~、実はね、ボク、ミンスタを始めたのですっ!」

最近はやりのアプリらしく、写真を投稿していいねを貰うアプリらしい。


「そうなんだ、それで?」



「ほら、ボクって可愛いじゃん?」

自分で言えるのってすごいよね。
確かに莉音は可愛い、黙ってれば。



「だから自撮りを載せてみたいなって!」

ん?

「そうなんだ。頑張ってね。」


なんか、嫌な予感が……



「何言ってるの?澪もやるんだよ?」



的中した……………!!!







「というわけで、可愛い洋服にメイクポーチにヴィッグにアイロンに~沢山持ってきちゃいました!」




しかも、それって………






「さ、女装しよ?」






まずい。





「ボク、ちょっとトイレ……「行かせないよ、早く澪の部屋に行こっか。」う''…っ」





最悪だ……







ーーー


「この服とか可愛いくない?」
「可愛いね、うん」

黒くてフリルやリボンが沢山ついた服。
ゴスロリというやつらしい。


「髪型は何がいい?この服ならツインテとか?リボンもつけちゃおうよ~!ボクとお揃い!」
「いや僕、着るなんて一度も……「着るよね?ね?ね?」」

圧が、怖い……

「……っ」
静かにうなづくしか無かった。


(なんで、僕がこんな目に……)






「やっぱ黒とピンクでいくから、ロリータとゴスロリの相性は最高だよね~」

独り言かな……



(誰か、助けて……)





「澪は目つぶってていいよ、目開けたらめちゃくちゃ美少女になってるから!」
「ええ……」





(でも僕、男だよ……?)


そんなわけ………










ーーー




『だからお前は……!!!』




「ひっ…!!」


あの悪夢に、突然目が覚めた。
汗だくになっていて、動悸が激しい。


「澪……うなされてたけど大丈夫……?」

後ろで、莉音が不安そうにこっちを見ていた。

「う、うん、大丈夫……もう出来たの?」
「うん!ばっちり!」


「はい、鏡」と差し出された鏡で自分の姿を見た。





「……!」



ーーー


(郁人side)
「……ん?澪からLime?」
することも無いので家でアニメを見ていたら、珍しく澪からLimeがきた。



『今から会える?見せたいものがあるんだけど……』



「…………見せたい、もの?」








ーーー


「おじゃましまーす」
「お邪魔されます!」

澪の家に向かうと、何故かご機嫌な莉音が出てきた。


……家、間違えたかな?



しかもトイレとおもわれるところから何やらうめき声が聞こえるんだけど……



「さ、あがってあがって!」
「え、ど、どうしたの…?てか、澪は?」
「説明はあと!早く早く!」





一体、なんなんだよ………






(でもまあ、莉音の突然な行動は、今に始まったことじゃないしね……)







ほぼ無理矢理部屋まで連れられて、莉音が「澪、入るよー!」と扉越しに呼びかけた。
(部屋にいるんだ……)



「……ていうか気付かなかったけど莉音、なんか今日は…アレだね。」
「ん?なにがー?」

言いにくいけど、はっきり言うなら、寝起き感があってダサい。



「あ…ふ、服装?」
「……ああ、ボクも後でちゃんと着替えるから!その前に、見て欲しいものがあって……」



そう言って莉音が、扉を開けた。





そこにいたのは…………














「…………え?」











腰まである長くて綺麗な黒髪、黒と葡萄茶(えびちゃ)で統一された膝下までのドレス。

足はタイツにブーツと、いかにもな美少女。




「…………え、だ、れ……」











美少女がいた。




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