ゆうみお

あまみや。旧

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4章 二学期(2)。

139.最終日

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(澪side)


翌日。




「全員乗ったかーー、出発するぞ」




ホテルから出て、生徒達がバスに乗る。

全員乗ったのを確認して………1組からバスが動き出した。




「澪、お昼何食べる?」
「たこ焼き食べたい……」
「それは大阪かなぁ………」



お昼頃に一旦バスから降りて自由行動がある。
その時に食べるものを考えていた。



「にしてもさ………せっかく東京来たのに、最終日のお昼休憩がイ○ンってひどくない?」
「人がいすぎると感染症がまだ怖いからじゃね?」
「だったらティズニーも危ないじゃん……」




どこか不服そうな郁人。
まあ確かに、せっかくなら東京ならではの食べ物が食べたかったな………





「……そういえば郁人。あっちの高校では1年の時、遠足はどこ行ったの?」


どこの高校でもあるのかは分からないけど、うちの学校では遠足がある。

去年は感染症で中止になったけど、1年生の時には確か………





「んー……覚えてないな……僕その時体調崩して休んでたんだ」
「え、そうなんだ………」
「うん……澪達はどこ行ったの?」

   


確か、





「いわき市に行った。水族館見てきた……」



うっすらとしているけど、未来斗と一緒にまわった記憶がある。




「いわき……ってことはア○アマリン○○しま!?」 
「そう……!すごい綺麗だった………」





懐かしい………


あの時は優馬とも同じ学校とはいえ面識はなかったけど、
   


今度は………皆で行ってみたい、かも。






「皆で今度行こう……!」
「お金が溜まってからねー」







ーーー



お昼休憩の時間になった。




「今から2時間の休憩に入るー、2時までにはここに戻ってくるように」


先生の「解散」の合図で、一斉に人が動き出した。



(周りがでかくて優馬達が見えない………)


必死に背伸びして優馬達を探したけど、周りの生徒達が壁になって見つからない。



本当に、自分の成長速度には反吐が出る………、、





と、その時。




「わっ」


ぱし……と手首が掴まれて、振り向くとその手は……優馬のだった。




「いたいた!小さいから見つけずらいなー」
「黙れでかいだけのくせに……」



ぶっきらぼうにそう睨むと、優馬は苦笑いして「澪からすれば、だけどなー」と頬をかいた。



「とりあえずこっち」ずるずるー





優馬に引っ張られながらついていくと、先に他の皆が集まっているのを見つけた。



「澪……、迎えに行けなくてごめんね、莉音の方行ってて……」
「あ、うん別に平気………」




………ていうか、




「僕人混みで結構周りが見えなくなったんだけど……僕の背丈で見えないんだったら莉音も海斗も大変だね」ニコ
「「え、ボク(俺)達は別に……………」」




ん………?






「………あ、ボクお腹空いたな」
「だな!何食べる!?」



なにか気まずいのか莉音が話題を変えて、未来斗もそれに反応した。




「とりあえずイ○ンの中に入ってレストラン街行こっか」
「さんせい!」




ーーー




中に入って……レストラン街に来た。




「何食べようかな……」
「なあ澪、中華とか食べたくない?」


お店を見て回っていると………優馬に話しかけられた。




「中華……んー……いいと思うけど……皆の意見は?」


試しに他の人にも聞いてみると、



未来斗。
「にく!」

海斗。
「寿司」

郁人。
「あっさりしたやつ」

莉音。
「マカロン!」






すごくバラバラ…………
あまりにバラバラすぎて、優馬が


「未来斗、肉なら中華にもある!海斗は一般学生である俺達の持ってる残高を見て考えろ!郁人の意見はどうでもいい、莉音は1人で食ってろ!!」



と……後半あたりはかなりブーイングがきそうなことをずけずけと言った。



「えーひどーい、マカロン美味しいじゃん…………、澪は?」
「……メロンパン」
「ここまで来て…………?」




「計画、ちゃんと立てるべきだったね………、班長として申し訳ない」


班長の郁人はそう謝って、少しだけ落ち込んだ素振りをした。



「……副班もちゃんとしてないし、大丈夫だよ郁人」
 
ちなみに副班は優馬。
班長も副班もじゃんけんで決めた。





そこで、莉音が

「……あ、いっそ食べ放題はどう?」





そう言って……得意げに、目の前にあった食べ放題のお店を指さした。









ーーー




少し高いけど………ここなら、皆の意見が通りそうだったのでここで決めた。



「おぉ……寿司もあるらしい」
「よかったな!海斗!」



というわけで、席に座った後に食べ放題なのでご飯を取りに行くことになって、先に郁人と莉音と優馬が席を立って、僕達は留守番中。

華奢とはいえ流石に男子高校生が3人ずつ座るとなると厳しいから、少し大きめの席に案内される。



「澪、何食べる?いろいろあるみたいだけどーー……」

間にいる海斗が、壁際の席で疲れてぼーっとしている僕にそう聞いた。



「とりあえず美味しそうなやつを取ってく……海斗は?」
「バランスに気をつけて、寿司多めにとる予定!」
「あ、海斗、寿司は数量限定らしいぞ」




ーーー



3人がもどってきて、今度は僕達の番。



皿を持って列に並びながらどんなものがあるか見ていた。


「唐揚げ…エビチリ、オムレツ、ハンバーグ………」


全部美味しそう………

躊躇なく、自分の好きなものばかり皿にわけた。
 

………けど、



「野菜も目に入れような」
「あう………」



さっきからずっと目を逸らしていた野菜を、後ろから海斗に容赦なくわけられた。




「ハンバーグをいれない奴なんているのか……?」
「苦手な人もいるだろ……あとが詰まってるから早く行くぞ、未来斗」




ーーー



海斗お目当ての寿司が並んでいるところに来た。



「い、イカオクラ……ないんだな………」
「流石にそれはないなー……まぐろとかあるぞー!」



僕も食べては見たいけど、昔寿司でひどい腹痛に襲われたことがあってそれからあんまり食べない。

食べれないことは無いけど………無理に食べようとは思わなくなった。



ドリンクバーでメロンソーダをついで、先に席に戻った。




ーーー




「美味しい……美味しい………」
「ほんとに澪は幸せそうに食べるねぇ……写真撮りたい………」
「莉音、うちの子の撮影は事務所通して下さい」


いつから僕は事務所所属のアイドルになってたんだろ………


「……まぐろ、美味しいな」
「え、じゃあ僕もとってこようかなー………」



勧める海斗に郁人は、「あ、でも食あたりとかあったら怖いしいいや……」と首を横に振った。




「帰ったら明日は土曜だし、とりあえず寝るわ………あ、でもご飯作んないとな………」
「優馬は大変なんだなー……俺も、母さんに任せないでたまには作ってみようかなー……」


未来斗のその発言に、莉音以外の周りが一斉にざわつき始めた。




「未来斗が作ったら死亡事故起きるからやめなよ……」
「……郁人…?」



意味がわからない、みたいな表情になった。

自覚………ないのかな。





「……まあいいや、優馬は何食べてるんだー?」
「俺?チンジャオロース」
「そんなのあったんだ………」




肉とピーマンが混ざってるやつ。

………美味しいけどピーマンが嫌いだから、僕は肉だけ食べてる。



「ていうかさ、妹達がピーマン嫌いだから俺ん家はニラをいれてるんだけど、お前らは何入れる?」



ニラ……優馬頭良い。



「僕は普通にピーマンかな……」
「ボクは食べたことない………」

「俺も普通にピーマンだよ」
「ピーマンだな!」





...



皆……ピーマン……食べれるんだ………




「澪は?」




……………







「勿論ピーマンだけど?」ドヤ
「おーー」






別に嘘はついてない。ピーマン入ってるのは本当だし。

上手く避けて肉だけ食べてるとか、そんな子供っぽいことしてたりとか絶対ない。





……………絶対、ない










ーーー




時間より全然早く満腹になった。



「マカロンおいしい~」
「莉音、こっちのチョコケーキも美味しい」


とりあえず締めにデザートを食べて、





「ごちそうさまでした…。」





食べ終わった。



「まだ全然時間あるねー、せっかくだからイ○ンの中探索しようよ」
「俺本屋行きたい!」



まだ時間があるし、お金も少し余裕があるから………中を見てまわることになった。







ーーー


本屋。

ここに来た途端、未来斗がいきなりすん……とした。


「じゃあ俺あっち見てくるから。10分で済ませる」


それだけ言ってすたすたと、どこかに行ってしまった。



「……?」
「あれはBL漫画を見に行く感じだな」




そんな勇者みたいな雰囲気出して行くのか………




「俺は参考書でも見に行こうかなー」
「僕もBL見てくる……」
「じゃあ俺は………、料理本でも見てくるか………」
「ボクもなんか見よー」




………



僕は何を見よう……………







ーーー



とりあえず、好きなアニメの漫画を探しに来た。


「……」


でも来たことのない本屋って………どこに目当ての本があるか分からない。
 
出版社のところにはたどり着けても、そこから本単体を見つけるのが本当に苦手。

集中力がないからすぐ諦めるし……………





頑張って指で追いながら探していると、




「……莉音」



莉音が来た。





「澪…、なんかいいのあった?」
「今探してて………莉音は?」



さりげなく隣に立った莉音が、全く見回しもせず「あった」と一発で見つけた目当ての本を手に取った。



「ボクはこれ…!かわいいでしょ?」



見せてくれたのは、ロリータ服を着た女の子が、十字架の窓を背景にぬいぐるみを持って座っている表紙の漫画だった。



「うん、かわいい………服とか、全部………」



あまりに絵が綺麗で、つい見とれてしまっていた。

莉音は笑って



「ボク、ロリータ服が好きなんだ!この作品は沢山ロリータが出てきて……この子はクラロリキャラでー……」
「くらろり………」




何それ……





僕が意味を理解していないのが分かったのか、莉音は途端に喋るのをやめた。




「……ごめん、ボクの悪い癖で……………」



……?




「悪い癖?」
「うん……好きなことになるとつい話しすぎちゃって、相手がわからない言葉とかも説明無しで使っちゃうし………普段喋んないのに、きもくてごめん………」




なんか……すごいネガティブだな。

確かに莉音は好きなことには沢山語るし、でもそれがきもいとかは別に考えたこともなかった。



「別にきもいとは思ってないよ、わからない単語の意味は教えて欲しいけど。」




そう言うと、莉音は表情は変えず、けど少しだけ頬が赤くなった。




「えっと………クラロリは、クラシカルロリータの略で。ロリータの一種で甘ロリより少し大人っぽいお嬢様みたいな落ち着いた感じが特徴なんだ………!」



うん、またわかんないの出てきた。

教えてくれるのは嬉しいけど、今度は甘ロリという分からない単語が出てきてしまった……



「甘ロリ?」
「あー……甘ロリは甘い感じが特徴で、ピンクとか……白が主に使われてるのかな………」



………なるほど……………





「ロリータって言葉しか知らなかった。いろいろあるんだね………」
「うん……ゴスロリはわかる?」



それはなんか、聞いたことある。




「黒いやつだよね……」
「そうそう!ゴスロリは黒が多いんだ~、ねえ澪、今度また女装しない?着て欲しいロリータが沢山あって……」
「……!遠慮しとく………」





ーーー



とりあえず、莉音の欲しい本を買って皆より先に店の前に出た。



「和ロリ……華ロリ………」
「姫ロリってのもあって………」


「澪、莉音、何話してんの?」



莉音にロリータについて教わっていたら、海斗が来た。



「「ロリータの話」」
「女子かよ……」



...





「海斗も混ざる?」
「聞いてるだけでいいや……家のメイドさん達がいつもその話してるから、飽きた」



「メイド」という言葉に莉音が目を輝かせた。


「ロリータってあれだろ?やけにフリフリしてる………」
「うんうん……!海斗も女装して着てみない?!」
「絶対無理」




…………





「ちなみにうちのメイドって言ってるあの人たち………メイドではないんだよ」
「え?」


メイド服を着てて、普通にメイドかと思ってた。



「家政婦。メイド服は趣味らしくて、あの2人の休憩部屋にこの前大量にロリータ服があったんだ…………」




初耳だけど、すごくどうでもよかった。










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