ゆうみお

あまみや。旧

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6章 三学期。

199.暴走

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「ッ……痛い………!!…莉音……!」



押し付けられて壁に当たる背中が痛い。


背中だけじゃない………掴まれてる肩も。



「………」
「ねぇ………莉音ってば………」




苦しい……………






何も喋らなかった莉音は、ようやく一言。



「桜木にはね………いらないんだよ……、僕以外誰も、誰も………」



小さな声ではあるけど、一声一声が力強くて恐ろしい。



「りお「ねえ、そうだよね?!」…ッ!」ビク



今の莉音に逆らえない。



頷くしか出来なかった。




「そう…そうだよ、桜木は僕だけのもの、他の奴らになんて………」




初めて見た、こんな莉音。



「ごめ…ごめんね、莉音…ごめん」



震えながら何回も謝った。

その意味を自分の理想通りに捉えた莉音は、



「……ふふ、だよね…?もう桜木は僕の事しか好きになれないんだよ、あんな奴より………!!」



止められない………諦めかけた時、




「何やってんだよ莉音!!」



止めに入ったのは優馬だった。




「優馬……!なんで」
「鞄取りに戻ってきたらお前らがなんかやってるから急いで来たんだよ…!」


そう説明してくれた。



「……ってそれより、どういうつもりだよ莉音!」


莉音を無理矢理僕から引き離して、怒鳴りつけた。




「………」




莉音は黙ったままだったけど………そこに、遅れて澪がやって来た。



(今莉音と澪と会わせたら、澪が………)



澪が危ない、そう思ったけど………



どうやら様子を見ていたらしい。




「………ねえ莉音」
「………」



黙る莉音に対して澪は………





「………、………ッあ"ッ!!」





………優馬も僕も驚いた。




澪が……自分と莉音の額を勢いよくぶつけたから。



莉音は黙っていられず澪に怒鳴り始める。



「はぁ!!?痛いんだけど何なのお前!!」



じんじんと痛む額を抑えながら、もう片方の手で澪を指差す。



「ふっざけんなこのチビ!!」




すると………





「……莉音、今僕、喧嘩売ったんだけど」




澪も莉音を睨みつけた。


何この状況………



莉音も負けじと澪を睨み付ける。




「………上等じゃん」







………え






「ちょ、ちょちょっと待って!!?こんな所で……!!」
「ていうかなんで喧嘩なんだよ…!他に何か………」


僕達は必死に止めたのに、2人ともやめてくれなかった。



莉音の上にまたがって弱々しい力で髪を引っ張ったり服を掴んだりする澪。
莉音も澪の服を引っ張ったり暴れたりして抵抗する。


なんで……こんなことに、、、





「ちょっと~……!勘弁してよ…!」



もう人はいないけど、先生に見つかりでもしたら…………





「郁人はお前だけのものじゃない!!ものでもない…!!」
「うっざいなぁ…!!振った癖に今更干渉してくんじゃねーよ!!」



どうしようガチ喧嘩だ…………



「ゆ…優馬、……先生呼ぶ?」
「小学生女子かお前は…………でもまあ、そうした方がいいんだろうけど」



何故か見届けたい気もしてきた。


だって…………特に怪我もしないし、小動物同士で戯れてるみたいでなんというか…………可愛い。





(……でも、澪はきっと本気だ)



そして莉音のさっきの力。

自分より背の高い僕を簡単に壁に押し付けられるくらいだし………




(……そうなると、今互角に戦えてるのは)




「僕の勝手じゃん!桜木をどうしようかなんて!!」
「違う…!それを決めるのは郁人、」



…………でも、





(僕の為に……って言っていいのかな。)


どちらも引っ込み思案な性格なのに、僕の為にここまで争ってくれてる。


失礼だけど…………嬉しいと思ってしまった。




「ッ……いい加減にしろお前ら!!!」



でもやっぱり、優馬が止めに入った。


優馬に引き剥がされてようやく離れて、息を整える2人。




そのうち、莉音がぽつりと話してくれた。






「嫌い……だよ」





澪はそれに反応して、そして莉音も続けた。






「大っ嫌いだよお前なんか…!!


いい所ばっかり持っていって、偽善者で周りから可愛がられてその上頭も良くて………


どんなに努力しても勝てない自分が惨めになる………!」





莉音の本音だったんだと思う。





「嫌いだ…!お前の全部……!!」




全部、全部、全部






莉音は言い切ったのか息を荒らげて、それを整えるのに必死だった。


ずっと無言だった澪が………ようやく口を開いた。





「………そんな理由で避けてたの?」





ひどく、冷淡な口調。





「ッ……悪い?クズで悪かったね」




莉音は嫌味ったらしく、息を整えながら笑う。








「…………






……くだらない。」









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