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に
9 そのアイドルは
しおりを挟む突然だけど……この世界って本当にチョロいと思う。
だって、適当に愛想振りまいときゃやっていけるでしょ?
少なくともボクはそうやって今までこの業界で生きてきた。
可愛い顔して愛想を振りまいて、沢山のお金を貰う。
それがボク………「雛瀬紫乃」の生き方。
ーーー
とある土曜日。
「わあぁぁ~~~!見て見て葵、陽太!日向紫乃が映画に出るんだって!」
「すごいですね、なんの映画ですか?」
今日も平和ボケしてる顔をしたガキ共がボクを羨ましがっている。
(まぁ……無理もないよね、ボク、すっごい可愛いし、芸能人だし!)
そう……今の平和ボケしてるガキ共のすぐ後ろを歩く、帽子を深くかぶった美少年、それがこのボク、雛瀬紫乃…っ!
……ん?日向じゃないのかって、馬鹿、それは芸能界での名前。
本名は雛瀬紫乃、日向じゃないから。
(ま、お前らみたいなお子様にはボクは羨ましいだろうね……)
その時。
「ひなたしの…?誰それ!」
……
………
「はあぁッッッッッ!!!!!???」
「わっ…!」
「…ッ!」
「あわっ…!!?」
あ、有り得ない……
ボクをしらないなんて、有り得るはずない!!
「ちょっとそこの茶色!!」
「え、え…?おれ?」
「そうだよ、お前…ボク、じゃなかった日向紫乃を知らないってどういうこと!!?舐めてんのかよ!!」
茶色は驚きと焦りで半泣きだった。
「え、えと、ご、ごめん…?おれ、そんなつもりじゃ……」
「ちょ、ちょっと、急に何…!?陽太が可哀想、やめてよ……!」
そこにすかさず白髪が加わってきた。
「日向紫乃を知らない時点で終わってる!こんなに可愛いし愛想もあるのに!!」
「え、えっと、確かに日向紫乃は可愛いしいつも愛想よくふるまえてて同い年として羨ましいしすごいって思う……でも、皆が皆日向紫乃を知ってるわけじゃないと思う!!!」
「…ッ!」
正論だってわかってるけど………貶されてる気がしてすごく腹が立つ。
怒りを堪えようと耐えていたその時、青髪の男が俺の顔を見てハッとした。
「あ、貴方………日向紫乃、ですか?」
「ッ…!!」
白髪が「え!?」と驚いて、茶色は「? ?」と頭にハテナを浮かべていた。
「ち、ちがっ……、あっ……」
騒ぎを聞き付けた周りの人達が、じっとボクを見てひそひそしている。
(まずい……こんな大勢にバレたら……ッ)
こうなったら………
「ッ…!」
逃げる一択!!!
「あっ……待って下さい!!」
「っ、何だよ!!?」
「陽太に謝ってください!!」
………はぁ!?
「誰が謝るかばーーっか!ッ…!!」
喚く青髪を無視して、急いでその場から離れた。
「っ、追いかけます!」
「えっ、ま、待ってよ~!」
「…?…?」
早く、逃げないと………ッ!
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