唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理

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第4章 それぞれの思い

32 1人の少女が背負うもの

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 ────ゾーンモンスターとは何か。
 
『世界指定の超上級モンスター、もしくはゾーンモンスターの討伐実績』という学園に入学するための特殊条件の1つにしるされている、という存在。

 このゾーンモンスターについては事務員のヒュッゲから何も説明されなかったため、ツヴァイはこのモンスターに関しての知識を一切持ち合わせていなかった。
 だから、ツヴァイがアストライアにゾーンモンスターについて質問したのは、丁度良い機会だからついでに知っておきたい、というぐらいの軽い気持ちで聞いただけで深い理由は無かった。
 そして、その質問にアストライアは超上級モンスターの説明の時と同じように淡々と答えてくれるだろうとツヴァイは思っていた。
 だが、そのツヴァイの思惑は。
「……え、……」
 完全に外れることとなった。
 ……アストライア……?
 アストライアはゾーンモンスターという言葉を聞いた途端に何故か、誰が見ても一目でわかるほどに酷く動揺した。
「……」
 そして、アストライアは動揺しながらもリアに視線を向け、表情を浮かべ。
「……それは」
 話せない、と強い決意を持って言おうとしたが、その直前で。
 
「────アストライア。ゾーンモンスターについてはリアがツヴァイさんに説明するね」
 
 リアが静かにアストライアに話しかけた。
「……え、でも……」
「大丈夫。リア、話せるから。……ううん。リアが話したいの」
 この時、リアがどういう表情をしていたのかはツヴァイのいる位置からではわからなかったが、リアの表情を見ながら会話をするアストライアの顔には困惑が色濃く浮かび、何か反論しようとしていたようだったが、結局、その言葉はつむがれず。
「……」
 アストライアはリアの言葉に小さく頷いた。
「……今、ちょっと不思議な気配を感じたから、少しいなくなる」
 そして、リアとの会話を終えた直後によくわからない理由でアストライアは急にここからいなくなると言い出し、ツヴァイが声を掛ける間もなく、一人、歩き出した。
 ただ、歩き始めた時、アストライアは一度だけツヴァイに視線を向けた。
「────」
 その時のアストライアの表情は、昨日の決闘騒ぎの後のアストライアの顔を思い出させるような、どうしたらいいのかわからず困惑する幼い子供のような表情をしていた。
 けれども、その宝石のような紫の瞳が向ける眼差しは。
「────」
 ツヴァイを信頼し、ツヴァイならと期待しているようだった。
「……」
 そして、この場を去ったアストライアにを任されたツヴァイは、ゾーンモンスターと何らかの因縁があると思われるリアにその説明をさせていいのかと自問した。
 ……普通はダメに決まっている。すぐに変なことを聞いて悪かったと謝ってこの話はやめるべきだ。……けど、さっきのアストライアが俺に向けた視線は、期待は……。
 そういうことではない気がする。と、ツヴァイが思った瞬間に。
 
「それじゃあ、ツヴァイさん。ゾーンモンスターについてお話ししますね」

 リアがゆっくりとした口調でゾーンモンスターについて話し始めようとした。
 リアは今、とても落ち着いた表情をしていた。
 穏やかに談笑をしながら朝食を食べていたときと変わらない表情。
 ツヴァイの目にはリアが言いたくないことを我慢して言おうとしているようには全く見えなかった。
 けれども。
 内なる感情を、辛いことも悲しいことも全てを隠して、相手のために笑顔を浮かべる。そういうことができるのが人間なのだ。
 おそらく覚悟さえ決まれば、リアもそういうことができる、できてしまう子なんだとツヴァイは思った。
「……っ」
 その考えに至ったツヴァイは胸をえぐられるような心の痛みを感じ、半ば反射的にリアに無理して話さなくていいと言うために口を開いたが。
「リア、もう……」
「それでゾーンモンスターなんですけど、一言で言ってしまうと、理不尽の塊みたいなモンスターなんです」
 そのツヴァイの言葉にリアは自分の言葉を被せ、ゾーンモンスターの説明を始めた。
 リアは今、ツヴァイが会話を止めようとしたことに気付いて、それを妨害した。
 ただ、もう話すなと強く言えば、リアはこの話を今度はちゃんと止めるだろうとツヴァイは思った。そういう予感があった。
 だから、ツヴァイはもう一度口を開き、話さなくていいとリアに言えば良いのだ。
 
 けれども。
 
 けれども。

「……」
 ……アストライアが俺に向けた眼差し。そして……。
「────」
 今、自分を見つめるリアの瞳が、最後まで話させて欲しいとそう言っているような気がしてツヴァイは。
「……その、理不尽ってどういう風に理不尽なんだ?」
 ここで無理に止める方が、きっと良くないことになる。そう思い、その判断が間違っていた場合はどんなことになろうとも自分が責任を取ると覚悟を決め、ツヴァイはゾーンモンスターについてリアから詳しく話を聞くことにした。
「……ゾーンモンスターと呼ばれる存在達は全て異常なまでに高い戦闘能力を有しています。攻撃力は最低でも超上級モンスターレベル。中には光線を一撃放っただけで小さな町を跡形も無く消し飛ばすような規格外の攻撃力を持つモノも存在します。けれど、ゾーンモンスターが真に理不尽なのは攻撃力ではなく防御力なんです。ゾーンモンスターの身体は通常のモンスターのように分厚い筋肉や硬い外皮があるだけじゃなく、特異なが全身を守っているんです」
「……法則?」
「はい。異常法則と名付けられたその法則を破らない限り、まずゾーンモンスターは倒せません。異常法則が有効状態のままのゾーンモンスターを攻撃したとしても、どんな状態異常も効かず、攻撃の威力も99.98%カットされるという研究結果が出ています」
「99.98%カット……? それって攻撃が殆ど効かないってことじゃ……」
「そうです。なので、ゾーンモンスターを倒すには何よりも先に異常法則を無効にしなければいけないんです。けれど、その条件が個体によって全て違い、眼球のような部分を攻撃するだけで法則が無効になる簡単な条件の個体もいますが、雨の降っている深夜3時に5分間攻撃し続けることで法則が無効になるという特殊すぎる条件の個体もいたそうです」
「……前者はまだしも後者は普通、絶対にわからない条件だよな。そういう場合は何かヒントがあるんだろうか。夜になると色が変わったり、雨が降ると逃げるとか」
「そういう変化は無い場合が殆どだそうです。そのため、ゾーンモンスターと対峙した人間は様々な方法で攻撃して、偶然、条件を見つけるしかないんです。そして、運良く条件を見つけて異常法則を無効にしても、その後に超上級モンスターと同レベルの力を持つ、ほぼ無傷のモンスターを倒さなければいけないんです。……それがゾーンモンスター。この世界に存在する本当の怪物モンスターです」
「……」
 そこまでの説明を聞いたツヴァイが、ゾーンモンスターの余りの理不尽さにいきどおりを覚え肩を震わせると、その様子を見たリアが追加の説明を始めた。 
「ただ、ゾーンモンスターの数はとても少なく、更にどこかに隠れて眠っている時間が長いので殆どの人間は一度もゾーンモンスターと遭遇することなく、その人生を最後までまっとうすることができると言われています。……けれども、一度、活動を開始したゾーンモンスターが人の住む町を見つけたら、その町の人間を殺し尽くすまで暴れ続けるそうです」
 そして、その追加の説明を言い終えたリアは、一呼吸置いた後。
「……お父さんは」
 一切の感情が見えない苦笑いを浮かべ。
 
「リアのお父さんは、そんな危険なゾーンモンスターが、カームの街のすぐ側に出たと────、街に住むみんなに誰よりも迷惑を掛けて、そして、死んでしまった人なんです」
 
 自分が背負う罪をツヴァイに打ち明けた。
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