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第一章少年と天使と賞金稼ぎ
少年と天使と山猫
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「助けていただいてどうもありがとうございます」
「し、死ぬかと思ったわ……」
ジャコモに深々と頭を下げる少年と地面にへたり込んだ少女。
ジャコモがコーヒーのカップを二人に差し出す。
「まずはこれでも飲んで少し休むといい。それでなんでまた、ゾンビドッグなんかに追われてたんだ?」
「あ、それはリリーが石を投げたら、たまたまゾンビドッグに当たって……」
「あ、あれはあたし何も悪くないわよっ、たまたまあそこにいたあの気持ち悪い犬が悪いんだわっ」
銀髪の少女が頬を膨らませながら、少年に抗議する。
極めて美しい容姿をした少女だ。
小柄な黒髪の少年のほうもまだあどけなさを残しているが、とても端整な顔立ちをしている。
それこそ、無人の街道をうろつく人買いどもからすれば、こんな極上の獲物は滅多にお目にかかれないだろう。
「でもあれはリリーが明らかに悪いよ……」
「そもそも高貴な天使であるあたしが、なんであんな犬に追われなきゃいけないのよっ。
そもそも、タキもあんな犬コロの一匹、追い払えないでどうすんのよっ」
声を荒げるリルに反応するかのようにピエールが、落ち着かない様子で触覚を震わせている。
ジャコモはそんなピエールの背中をなだめるように何度も撫でた。
「まあ、落ち着きなよ、シャンハイリリーのお嬢ちゃん。それでふたりとも、どこにいくつもりなんだ?」
「誰がシャンハイリリーよっ、誰がっ、あたし達はサンハウスの街を目指してるのっ」
「サンハウスだって?ここから1000キロは離れてるぞ」
「1000キロ……」
頭を抱え込むタキと虚ろな視線で遠くを見やるリリー。
「そもそもお前ら、武器も食料も携帯せずになんで、こんな寂れた街道をうろついてたんだ。それもたったふたりでだ。もしかして、仲間とはぐれたとかか?」
「いえ、僕達はふたりでサンハウスを目指していました」
そのタキの言葉にジャコモが肩をすくめて見せた。
「それならなおさらだ。こう言っちゃなんだが、追いはぎやモンスターに殺してくれと頼んでるようなもんだ。死にたくなきゃ、家に引き返すこったな」
焚火で焙っていた干し肉と乾パンをタキに差しだしながらジャコモはいった。
「ふんっ、勝手なこと言わないでよっ、あたし達には帰る故郷も家もないわっ、それにあたし達には大事な使命があるのよっ」
金切り声をあげるリリーを一瞥し、ジャンゴは葉巻に火をつけるとけだるげに吹かした。
「ワケアリか。まあ、こんな世の中だ。誰だって脛に傷の一つや二つはあるさ。いいだろう。ついででよければ、俺がサンハウスまで送ってやるよ」
「え、いいんですかっ?」
思わずタキがジャコモに聞き返す。
「ああ、ただ、俺は今から村に薬を届けなきゃならないんだ。それが済んでからになっちまうが。そういえば自己紹介がまだだったな、俺はジャコモ、よろしくな」
ジャコモが三角帽の先端を持ち上げて顔を覗かせる。
すると驚いたようにタキとリリーが声を上げた。
「「ね、猫だっ」」
「おいおい、ご挨拶だな。それと俺は厳密には山猫だ」
「どうでもいいわっ、山猫だろうが猫は猫でしょっ」
そんなリリーにジャコモは肩をすくめて見せた。
「全く、口の減らないお嬢ちゃんだ」
「ふんっ、口が減ったらご飯が食べられないわよっ」
「お、中々言うねえ、お嬢ちゃん」
口端を曲げて、ジャコモが笑って見せる。
糖蜜を飲み終えたピエールが、黒く丸い眼で焚火の明かりを黙って眺めている。
その硬質な表面が、炎の光を反射した。
「し、死ぬかと思ったわ……」
ジャコモに深々と頭を下げる少年と地面にへたり込んだ少女。
ジャコモがコーヒーのカップを二人に差し出す。
「まずはこれでも飲んで少し休むといい。それでなんでまた、ゾンビドッグなんかに追われてたんだ?」
「あ、それはリリーが石を投げたら、たまたまゾンビドッグに当たって……」
「あ、あれはあたし何も悪くないわよっ、たまたまあそこにいたあの気持ち悪い犬が悪いんだわっ」
銀髪の少女が頬を膨らませながら、少年に抗議する。
極めて美しい容姿をした少女だ。
小柄な黒髪の少年のほうもまだあどけなさを残しているが、とても端整な顔立ちをしている。
それこそ、無人の街道をうろつく人買いどもからすれば、こんな極上の獲物は滅多にお目にかかれないだろう。
「でもあれはリリーが明らかに悪いよ……」
「そもそも高貴な天使であるあたしが、なんであんな犬に追われなきゃいけないのよっ。
そもそも、タキもあんな犬コロの一匹、追い払えないでどうすんのよっ」
声を荒げるリルに反応するかのようにピエールが、落ち着かない様子で触覚を震わせている。
ジャコモはそんなピエールの背中をなだめるように何度も撫でた。
「まあ、落ち着きなよ、シャンハイリリーのお嬢ちゃん。それでふたりとも、どこにいくつもりなんだ?」
「誰がシャンハイリリーよっ、誰がっ、あたし達はサンハウスの街を目指してるのっ」
「サンハウスだって?ここから1000キロは離れてるぞ」
「1000キロ……」
頭を抱え込むタキと虚ろな視線で遠くを見やるリリー。
「そもそもお前ら、武器も食料も携帯せずになんで、こんな寂れた街道をうろついてたんだ。それもたったふたりでだ。もしかして、仲間とはぐれたとかか?」
「いえ、僕達はふたりでサンハウスを目指していました」
そのタキの言葉にジャコモが肩をすくめて見せた。
「それならなおさらだ。こう言っちゃなんだが、追いはぎやモンスターに殺してくれと頼んでるようなもんだ。死にたくなきゃ、家に引き返すこったな」
焚火で焙っていた干し肉と乾パンをタキに差しだしながらジャコモはいった。
「ふんっ、勝手なこと言わないでよっ、あたし達には帰る故郷も家もないわっ、それにあたし達には大事な使命があるのよっ」
金切り声をあげるリリーを一瞥し、ジャンゴは葉巻に火をつけるとけだるげに吹かした。
「ワケアリか。まあ、こんな世の中だ。誰だって脛に傷の一つや二つはあるさ。いいだろう。ついででよければ、俺がサンハウスまで送ってやるよ」
「え、いいんですかっ?」
思わずタキがジャコモに聞き返す。
「ああ、ただ、俺は今から村に薬を届けなきゃならないんだ。それが済んでからになっちまうが。そういえば自己紹介がまだだったな、俺はジャコモ、よろしくな」
ジャコモが三角帽の先端を持ち上げて顔を覗かせる。
すると驚いたようにタキとリリーが声を上げた。
「「ね、猫だっ」」
「おいおい、ご挨拶だな。それと俺は厳密には山猫だ」
「どうでもいいわっ、山猫だろうが猫は猫でしょっ」
そんなリリーにジャコモは肩をすくめて見せた。
「全く、口の減らないお嬢ちゃんだ」
「ふんっ、口が減ったらご飯が食べられないわよっ」
「お、中々言うねえ、お嬢ちゃん」
口端を曲げて、ジャコモが笑って見せる。
糖蜜を飲み終えたピエールが、黒く丸い眼で焚火の明かりを黙って眺めている。
その硬質な表面が、炎の光を反射した。
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