勇者候補として転生した少年タキと見習い天使のリリーと荒野のガンマンジャコモ

醤碁

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第一章少年と天使と賞金稼ぎ

三人の出会い

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教会はサンハウスの街のはずれにあった。

鬱蒼とした雑木林に囲まれた古い建物で、どこもかしこも老朽化している。

それでも広さだけはあった。

犬人の老女であるシスターマリーに10ダラー金貨の詰まった革袋を押しやると、踵を返したジャコモが、教会から去ろうとする。

その背中にシスターマリーは声を掛けた。

「いつもありがとうね、ジャコモ。あなたのおかげで教会の子供たちも飢えずに済んでいます。でも、こんな危険な真似を続けていれば、貴方はいつか命を落とすわ。
私の夫のように……」

ジャコモは振り返らずに言った。

「そんときゃ、祈りの一つでも唱えてくれ、シスター」
マリーはジャコモを黙って見送った。

そして年老いたシスターは彼のために静かに祈りを捧げた。

神よ、どうか、彼をお守りくださいと。





朝日が昇りはじめた。

夜中に冷たい雨が降りしきったせいで、あちこちにぬかるみが出来上がっている。

だが、砂埃が吹きあがらないおかげで、道中は楽に過ごすことができそうだ。

途中で立ち寄った宿場町の食料品店で買ったリンゴを一つ齧ると、ジャコモはつむじ風の村へと急いだ。
村で疫病が流行り、その為に薬を届けなければならないのだ。

ジャコモの跨ったビートルホースが、六本肢を忙しなく動かしながら、ろくに舗装もされていない街道を突き進む。

ビートルホースはカブトムシのような見た目の昆虫で、飼いならせば乗り物になってくれる。

馬やバイクも悪くはないが、ジャコモにはビートルホースが一番性に合っていた。
無骨で頑丈で、それでいて馬力があるビートルホースは、頼りになる旅の相棒だ。

特にこのビートルホースのピエールは、とても賢く、力も強かった。
乗り物屋の隅に置かれていた一際大きなビートルホース、それがピエールだ。

もっとも乗りこなせる者がいなかったので、ピエールは店で放置されている状態だったのだが。
そこをジャコモが安く手に入れた。
店主も売れ残りのピエールを捌くことができて、ホッとしている様子だったのを覚えている。

お互いに良い取引だった。

ジャコモは最高のビートルホースを手に入れ、店主は数枚の金貨を受け取ることができたのだから。
それから日暮れになるまで、歩を進めていたジャコモは、一旦休憩を取ることにした。

出立したのが早朝だったから、かれこれ、12時間は休まずに移動していたことになる。
流石のピエールも疲れを感じているだろうし、腹が減っているはずだ。

つむじ風の村はもう目と鼻の先なので、食事をしてから少しばかり睡眠を取り、それから出発しても遅くはない。

「一休みするか、ピエール」
鈍色に光るピエールの頭部を撫でると、ジャコモは糖蜜を水で溶かした液体を皿になみなみと注いだ。
皿に顔を突っ込んだピエールが液体を啜り始める。

ジャコモは固形燃料に着火し、暖を取ると沸かしたコーヒーを飲みながら干し肉を頬張った。
「うまいか、ピエール?」

その言葉にピエールは黒く無機質な目を僅かばかりジャコモに向け、それからまた糖蜜を舐めた。

その時、不意にピエールが顔を上げた。

悲鳴を上げながら誰かがこちら側へと駆けてくる。
一体なんだ、野盗か、それともモンスターか。

警戒するようにジャコモは、ガンベルトにぶら下がった銃をホルスターから引き抜いた。

「誰かっ、誰か助けてっ」
ヒューマンの若い男女のペアが助けを求めながら走っている。

その背後からは人間ほどの大きさのゾンビドッグがふたりを追っていた。

すぐにジャコモはゾンビドッグの額に二発、銃弾を撃ち込んだ。
もんどりうったゾンビドッグが、黒血をまき散らしながら空中で回転してみせる。

それからゾンビドッグは、ぴくりともしなくなった。

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