あるある設定な異世界に転移しましたが、俺は普通に生きようと思います。

宮野愛理

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共食い禁止

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 一緒にご飯を食べたのは兄貴とジュードさんだけ。ダミアンさんは兄貴の傍で給仕をしていて、ジュードさんや俺のところにもそれぞれ給仕の人が付いてくれた。ってセルトさん、来ないし!! 「あっちで飯食ってんだろ」って兄貴は言ってたけどさ。ちゃんと食べてくれてるなら良いんだけど……ずっと一緒だったからなんか違和感。
 こっちに来てから食べてた料理は、セルトさんの野戦料理(といったら失礼だけど、お肉のスパイス焼きと乾パン)、トゥリスで買い食いしたやつ、宿屋で食べた煮込み料理、後はアデラールさんが用意してくれた軽食……サンドイッチというか、ブリトーとかピタパンみたいなやつ。だからそういう素朴? シンプル? なのがこっちの料理なのかなーって思ってたんだけど、さすが王宮。お皿とカトラリーがいっぱい出て来た。一応、食べ方は知ってるけど……ビビる。「基本マナーはわかってるんだから、後は好きに食え」って兄貴は言うし、ダミアンさんもニコニコしてたけどぶっちゃけ怖いよね! 食べたけど!!

『スネンダの包み焼き美味しかったー』
「まだ言ってやがる」
『スパイス焼きも美味しかったけど、包み焼きはジューシーだった……』

 スネンダ。額に角が三本生えているヘビ……かな。お腹のところが太いから不格好で、ヘビのイメージとちょっと違うけど。セルトさんが最初に獲ってくれたのがそれだったんだよね。捌くのを見て貧血起こしたのもそれです……

「セルト、あの見た目で料理好きだからな。そのスパイスって自分で調合したやつだろ」
「狼獣人には多いらしいですからね。マメというかなんというか……腹が膨れれば同じだと思いますけど」
「お前は興味なさ過ぎ。もっとちゃんとしたモン食えよ」

 獣種によって趣味や性格に偏りが出るのはあるあるなんだそうな。比較的ってだけで、勿論例外さんはいるみたいだけどね。
 兄貴は黒豹。性格はまぁ……うん、お察しで。
 ジュードさんはヘビ。「スネンダ食べてませんでした?!」て叫んだら、「スネンダはヘビではありませんから」って言われちゃった。あ、通訳は兄貴です。
 兄貴の説明によると、獣人の獣種と家畜とかの獣種って違うらしい。だから豚の獣人はいても、豚の家畜はいない。共食いになっちゃうから。俺たちの世界で見聞きした動物はほぼほぼ獣人の獣種なんだってさ。俺、レティアちゃんのことをお馬さんだと思ってたけど、正確には〝ホルリス〟っていう獣種だった……急な異世界っぽさに混乱するよ。でも確かにセルトさんは〝馬〟って言ってなかったね。

『はぁ……混乱する。兄貴、本当にこっちの人だったんだねぇ』
「なんだ急に」
『だってさぁ……ホルリスと馬は違うって言われても、俺としては納得出来ないっていうか……スネンダだってヘビじゃん』

 この混乱必須な情報を〝常識〟として捉えられるって、大きな違いだよ。いや、耳が生えて尻尾も生えて、髪まで長くなっちゃってるのは大きな違いなんだけど。

『なんで髪伸びたの?』
「こっちでは元々この髪型だったからな」
『……どういう仕組み? てかこっちの記憶とか元々あったの?』

 伸びて結んである髪の毛をツンツンと弄っていたら、同じ色の尻尾でブンって叩かれてしまった。この尻尾もねぇ……セルトさんと違って、猫科特有のうにょうにょ感。掴んでみたら艶々ツルツルだったから、そのまま撫でておこう。アニマルセラピー。
 もしさ、向こうの兄貴にもこっちの記憶あったならさ……弟って立場の俺のこととか、どう思ってたんだろうとか考えてしまう。痛い記憶を残したまんまだったら辛すぎるし。

「記憶はなかった」
『あ、ほんと? なら良かった』
「てか記憶があったなら必死こいて就活してねぇよ。めっちゃ無駄だった。好きなブランドだったんだけどなぁ……あの日、魔方陣が部屋に浮かんでさ、それ触ったらビッカビカに光り始めて……それで全部思い出したんだよ」

 自分がオーベルシュハルトという国の王だったこと。
 二十歳の時に番に殺されたこと。
 こっちの世界の決まりで、オーベルシュハルトには直系の血を繋がなければいけないこと。
 そして、その決まりによって地球に転生し、今まさに戻る必要があること。

 死んだ体と魂を癒やす為に異世界転生して、それが癒やされたから戻った感じみたい。癒やされるのに二十二年掛かったのか。

『なんで直系を残すの? 兄貴しかいないの??』
「元々、うちの王家って子供多くないんだよ。俺のじーさんが三兄弟だったけど、そっちから分かれた家は分家扱いだし」
「もっと遡れば、それこそ我が家にも血は流れていますからね。とはいえ、世界から王として定められるのは一人だけです」
『それが兄貴?』
「だな。特に俺の場合は黒髪黒目だから、オーヘル神とエールピオス神の加護も強い。もし兄弟姉妹がいたとしても、俺だけ特別になってた可能性が高いな」

 人型の神様がオーヘル神、獅子型がエールピオス神。その二人から産まれた獣人が、このオーベルシュハルトの始まりなんだって。

『でも、エールピオス神てさ……雄だよね? たてがみあったけど。あれは石像にするのに格好良かったからってだけで本当は雌?』
「いや? 普通に雄神。そうだなぁ……そこに関連するのは、こっちの神話から説明するか。ジュード、よろしく」

 話すのが面倒くさくなった兄貴にぶん投げられたジュードさん。「創世神話ですか?」って言いながら、モノクルを押し上げてゆっくりと教えてくれた。
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