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来たことの意味
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お茶とケーキを食べながらもお勉強の時間は続く……いや、普通に食べさせて欲しい。ちゃんと言えたら食べて良いのは確かに上達するんだけどね。舌が回ってないから、めっちゃ幼児語で聞こえてるみたいだよ。
『あの、そんなに見ないでいただけると……』
目の前でニコニコしながらお茶を飲んでいるレフカさん。お子さんが今こうやって色々と覚えていく時期らしくて、微笑ましいんだって。そのお子さん、三歳らしいけど。三歳と同じかぁ……ってちょっと落ち込む。
「で、会ってみてわかったか?」
「歪な縁と、違う星回りを持つ子ね。……あなたが帰ってきてからこっちも星が落ち着いていないのよ。それが落ち着いて、異物として排除されるかどうなのか。託宣があるかどうかもわからないし」
「異物か……」
兄貴が王の器として加護を持つなら、対になるのがレフカさん。星の巡り? を見ることが出来て、兄貴がこっちに帰ってくるのも「あ、明日帰ってくるな」ってわかった人。すごい急な帰還だったんだね。それでも準備出来たっていうから、多分ずっと兄貴が帰ってくるのをみんなで待っていたんだろうなぁ。
今日はなんで来たかと言うと、俺が日本に帰れるかどうかを確認しにきたそうです。顔を見たほうがわかるってことだったけど、芳しくなさそう……異物とか、歪とか、あんまり良くないことを言われてる気がする。まぁでもこの世界の人間じゃないから、異物っていうのは間違いないか。
『っていうか、託宣? があるならカーライルさんのあれこれとか、事前に対処出来なかったの?』
「託宣が俺とあいつにとって必要じゃなかったってことだろ」
「ん? あぁ、二年前のこと? そうねぇこの二人に……いえ、世界にとって必要なことなら、教えてはくれないわね」
いくら加護持ちでも、それが世界全体にとって必要な出来事なら「いってこい」すると聞いて俺は目が点になった。神様って結構シビアなんだ。あ、でも日本でも神様へのお願いは表裏一体とか聞いたことあるし、そういう側面ってあるのかも……
「死に戻りがあるから、って前提もあると思うがな。――それを考えると、こいつが来たことにも意味がある、のか?」
「あるんだと思うわよ。実際、セルトの番なんでしょう? ただどちらに転ぶかはわからないわ」
ふぅ、と溜息を吐くとレフカさんはセルトさんを見やった。俺の後ろに佇んでるから、自動的に俺もしっかり視界に入っている。思わず不安になって後ろを振り返ると、セルトさんは「大丈夫」と言ってくれたけど……
「ケントくんは、多分好きなように動くのが良いわ。君が良い風を吹かせてくれる筈」
「そよ風になるか、竜巻になるか、嵐になるか、か……」
『え、後ろの二つは危険じゃない?』
「だからセルトを護衛にしてるんだろが。まぁ言葉の壁って理由もあるけどな。だからってそこら中でキスするなよ? ここには独り身も多いんだ。……まぁ匂いは別にして」
そこまでチュッチュしてないですよ! って、そういえば獣人さんには匂い問題もあったんだった!! え? ブレスケアすればいい??
「ま、セルトが自重すりゃ良いんだよ。さて。――レフカ、まだ時間は大丈夫か?」
あわわわ……と静かに焦る俺を尻目に、兄貴はそう言ってマイペースに立ち上がってしまう。聞かれたレフカさんも「まだ平気よ」と微笑んで、ジュードさんも何故か立ち上がった。
「健翔。山、行くぞ」
『山?!』
「昨日話した創世神話だ。俺がなぜ器なんて言ってるか、見せてやる。――セルトも行くぞ」
「いや、私には……その資格は…………」
「俺が許す。だからケントおぶってこい」
なんでか登山を拒否したセルトさんだけど、ジュードさんもレフカさんも駄目だとは言わなかった。だから多分、大丈夫。ニッと笑ってさくさく歩き始めた兄貴を見て、まだ迷ってるセルトさんの背中を押す。うん。一緒に行きましょう!
(と、思っていましたが本当に登山となってしまい、セルトさんにおんぶされ中です……)
そんなこと言っててもハイキングくらいでしょうって思ったのにさ、結構しっかり登山でね……「このあたりまでは国の人間はいつでも登ってるぞ」と言われて、嘘つけと思ったら目の前から「おーぅ、レオルカ様に皆様も、お揃いでぇ! お気を付けてぇ!!」なんて言いながらおじいちゃんが普通に降りてきた。登山道具っぽいのなんて杖だけだったよ。
「飛竜の巣までは入れませんが、決まったルートなら解放されています」
「子供の遊び場でもあるのよね~」
『えぇえ……』
国内からの登山道? は決まっていて、その入り口からなら入山可能。結構高い山だから、入って良いのは三分の一くらい。それでも俺は歩けなくなってるんだけど。
「おら、着いたぞ」
『おぉお~~~~……すごい、ほんとに遊び場っぽい』
広場になっていて、ちょっとの休憩とかが出来るようにベンチも置かれていた。お城と城下町を全て見ることが出来る。登っちゃ駄目な方向には柵が設けられていて、でもその先はもっと道が続いていた。
『ん? 何、あれ??』
「あれが祭壇。俺はちょっと行ってくるから見てろ。あ、イヤーカフは外しておけよ。多分混乱すっから」
ひょいって柵をまたいで行っちゃったよ。誰も心配していないから、いつものことなんだろうけど。
柵の向こうには大きな石が積み上がっていて、確かに祭壇っぽさはあった。あの更に向こうに飛竜の巣があるんだって。と説明を受けていたら、頭上から〝バサッバサッ〟と音がして見慣れた姿が降りてきた。
[歌ウ、歌ウ]
「あら気付くのが早いわね。一番乗りよ、ヤーミル。特等席ね」
「シッ……始まりますよ」
そう言われて慌ててイヤーカフを外した。
下から仰ぎ見ているから見にくいけど、兄貴が祭壇に立った途端にかすかにメロディが聞こえてきた。それに呼応するように山の下から風が吹く。それが木々を揺らし、色んな音を連れてくる。笛のような音まで聞こえてきたけど、兄貴は笛を吹いていない不思議。更に遠くのほうではハミングというか、色んな楽器みたいな音が流れている。
『あの、そんなに見ないでいただけると……』
目の前でニコニコしながらお茶を飲んでいるレフカさん。お子さんが今こうやって色々と覚えていく時期らしくて、微笑ましいんだって。そのお子さん、三歳らしいけど。三歳と同じかぁ……ってちょっと落ち込む。
「で、会ってみてわかったか?」
「歪な縁と、違う星回りを持つ子ね。……あなたが帰ってきてからこっちも星が落ち着いていないのよ。それが落ち着いて、異物として排除されるかどうなのか。託宣があるかどうかもわからないし」
「異物か……」
兄貴が王の器として加護を持つなら、対になるのがレフカさん。星の巡り? を見ることが出来て、兄貴がこっちに帰ってくるのも「あ、明日帰ってくるな」ってわかった人。すごい急な帰還だったんだね。それでも準備出来たっていうから、多分ずっと兄貴が帰ってくるのをみんなで待っていたんだろうなぁ。
今日はなんで来たかと言うと、俺が日本に帰れるかどうかを確認しにきたそうです。顔を見たほうがわかるってことだったけど、芳しくなさそう……異物とか、歪とか、あんまり良くないことを言われてる気がする。まぁでもこの世界の人間じゃないから、異物っていうのは間違いないか。
『っていうか、託宣? があるならカーライルさんのあれこれとか、事前に対処出来なかったの?』
「託宣が俺とあいつにとって必要じゃなかったってことだろ」
「ん? あぁ、二年前のこと? そうねぇこの二人に……いえ、世界にとって必要なことなら、教えてはくれないわね」
いくら加護持ちでも、それが世界全体にとって必要な出来事なら「いってこい」すると聞いて俺は目が点になった。神様って結構シビアなんだ。あ、でも日本でも神様へのお願いは表裏一体とか聞いたことあるし、そういう側面ってあるのかも……
「死に戻りがあるから、って前提もあると思うがな。――それを考えると、こいつが来たことにも意味がある、のか?」
「あるんだと思うわよ。実際、セルトの番なんでしょう? ただどちらに転ぶかはわからないわ」
ふぅ、と溜息を吐くとレフカさんはセルトさんを見やった。俺の後ろに佇んでるから、自動的に俺もしっかり視界に入っている。思わず不安になって後ろを振り返ると、セルトさんは「大丈夫」と言ってくれたけど……
「ケントくんは、多分好きなように動くのが良いわ。君が良い風を吹かせてくれる筈」
「そよ風になるか、竜巻になるか、嵐になるか、か……」
『え、後ろの二つは危険じゃない?』
「だからセルトを護衛にしてるんだろが。まぁ言葉の壁って理由もあるけどな。だからってそこら中でキスするなよ? ここには独り身も多いんだ。……まぁ匂いは別にして」
そこまでチュッチュしてないですよ! って、そういえば獣人さんには匂い問題もあったんだった!! え? ブレスケアすればいい??
「ま、セルトが自重すりゃ良いんだよ。さて。――レフカ、まだ時間は大丈夫か?」
あわわわ……と静かに焦る俺を尻目に、兄貴はそう言ってマイペースに立ち上がってしまう。聞かれたレフカさんも「まだ平気よ」と微笑んで、ジュードさんも何故か立ち上がった。
「健翔。山、行くぞ」
『山?!』
「昨日話した創世神話だ。俺がなぜ器なんて言ってるか、見せてやる。――セルトも行くぞ」
「いや、私には……その資格は…………」
「俺が許す。だからケントおぶってこい」
なんでか登山を拒否したセルトさんだけど、ジュードさんもレフカさんも駄目だとは言わなかった。だから多分、大丈夫。ニッと笑ってさくさく歩き始めた兄貴を見て、まだ迷ってるセルトさんの背中を押す。うん。一緒に行きましょう!
(と、思っていましたが本当に登山となってしまい、セルトさんにおんぶされ中です……)
そんなこと言っててもハイキングくらいでしょうって思ったのにさ、結構しっかり登山でね……「このあたりまでは国の人間はいつでも登ってるぞ」と言われて、嘘つけと思ったら目の前から「おーぅ、レオルカ様に皆様も、お揃いでぇ! お気を付けてぇ!!」なんて言いながらおじいちゃんが普通に降りてきた。登山道具っぽいのなんて杖だけだったよ。
「飛竜の巣までは入れませんが、決まったルートなら解放されています」
「子供の遊び場でもあるのよね~」
『えぇえ……』
国内からの登山道? は決まっていて、その入り口からなら入山可能。結構高い山だから、入って良いのは三分の一くらい。それでも俺は歩けなくなってるんだけど。
「おら、着いたぞ」
『おぉお~~~~……すごい、ほんとに遊び場っぽい』
広場になっていて、ちょっとの休憩とかが出来るようにベンチも置かれていた。お城と城下町を全て見ることが出来る。登っちゃ駄目な方向には柵が設けられていて、でもその先はもっと道が続いていた。
『ん? 何、あれ??』
「あれが祭壇。俺はちょっと行ってくるから見てろ。あ、イヤーカフは外しておけよ。多分混乱すっから」
ひょいって柵をまたいで行っちゃったよ。誰も心配していないから、いつものことなんだろうけど。
柵の向こうには大きな石が積み上がっていて、確かに祭壇っぽさはあった。あの更に向こうに飛竜の巣があるんだって。と説明を受けていたら、頭上から〝バサッバサッ〟と音がして見慣れた姿が降りてきた。
[歌ウ、歌ウ]
「あら気付くのが早いわね。一番乗りよ、ヤーミル。特等席ね」
「シッ……始まりますよ」
そう言われて慌ててイヤーカフを外した。
下から仰ぎ見ているから見にくいけど、兄貴が祭壇に立った途端にかすかにメロディが聞こえてきた。それに呼応するように山の下から風が吹く。それが木々を揺らし、色んな音を連れてくる。笛のような音まで聞こえてきたけど、兄貴は笛を吹いていない不思議。更に遠くのほうではハミングというか、色んな楽器みたいな音が流れている。
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