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第一話:蓮田谷真里
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「だから、蓮田谷君、聞いてる?」
「…はあ」
放課後の進路指導室。そこには一人の生徒と中年太りした教師が向かい合って座っていた。
生徒は濃いめな茶髪で、前髪の一部をピンでとめていた。髪と同じ色をした目は、目の前の教師を反抗的に睨み付けている。
対して教師は、白髪で薄くなった髪をかきあげながら、色素の薄い目で目の前の生徒を蔑むように見つめている。
「君の第一希望の大学、これ、意味分かって言ってるの?」
「…分かってますよ、まだアンタみたいにボケてないんで。このへんでは最難関の大学でしょ、俺はそこに行きたいんすよ」
「いいや、分かってない。君がこんな優秀な大学に入れるわけがない」
その言葉を聞き、生徒は荒々しく立ち上がった。
「何でだよ耄碌してんのかクソジジイ!ちゃんと資料読め老眼野郎、俺の偏差値なら、全然チャンスはあるだろうが!」
「…偏差値うんぬんの話じゃないよ、君も分かってるだろう?」
生徒の怒りはもはや絶頂に達していた。生徒は拳を振り上げる。それが今にも教師に振り下ろされようとした時――
生徒の動きが、まるで網か何かにひっかかったように止まった。
…勿論、そこに網などない。
「てめえ…無能力者に異能使うのはっ…反則だろうが……!」
「いいからちゃんと座って話を聞きなさい。異能は解いてあげるから」
生徒は一瞬躊躇ったが、すぐにすとんと腰をおろした。ただ、凄く腹立たしそうではあったが。
「…ほら。こんな風に、異能を使われたら君は反撃もできないだろう?つまり君は、凄く弱い。弱い人間は要らないんだ、必要とされないんだ。特に優秀な大学は、異能力の性質、強さ、使いこなし等も厳しくチェックされる。君の成績なら、学力試験だけはトップクラスをとれるかもしれない。でもね、蓮田谷君、そこまでだ。この世界では異能力がない人間なんて、人として扱ってももらえないんだよ?」
「……そんなこと………」
生徒は顔を伏せた。
そう、この世界には、異能力が存在する。
しかもそれが当たり前となってしまっているのだ。
異能力は江戸時代後期に発生したとされている――が、詳細は不明だ。
ただひとつだけ判っているのは、とある寄生虫が大繁殖し、それに寄生されたものがどんどん能力を手にしたということと、その寄生虫は子供にも遺伝するということ。
そんな虫たちに寄生されることを拒んだ一族――それが「蓮田谷家」、この茶髪の生徒、「蓮田谷真里」の一族である。
寄生された者の条件として、能力の発生以外に最もはっきりあらわれるのは色素の薄まりだ。
逆にいえば能力の無い者は色素が濃い、つまり一目でそれと判る。
そんな蓮田谷一族は「反逆者だ」と忌み嫌われるようになった。人々は皆、能力を欲し自ら寄生虫に身を捧げていったのだ。
そうして蓮田谷一族は徐々に廃れていった。しかし、その悪名は今でも世間に根強く残っている。
それ故にこうして、蓮田谷家は酷い差別待遇を受けていた。
「わかった、蓮田谷君?君はそういう一族に生まれた不幸な人間なんだ。諦めて進路は就職にしといた方がいい。まあ君を受け入れる企業があるかは賭けだがね。君のお父さんは一体どうやって就職したんだろうね?私だったらこんな気持ちの悪い人間、絶対に採用しないけど…」
その言葉に、再び生徒――真里は反応した。
彼にとって、父親の侮辱は自分に対する侮辱よりも腹立たしい。
真里は先程とは比べ物にならないスピードを持って、教師に再び拳を向けた。
…今度は、防御が間に合わなかったようだ。
バキィィィィイイイイッ!!!ガシャンゴッ、ガタガタ、ドッ!!
真里の拳は的確に教師の顔面をとらえ、圧倒的な力で教師を殴り飛ばした。教師は痛みと衝撃で、呆然としている。おそらくあと数十分は動けないだろう。
「このハゲクソゴミカスデブアホ中年ジジイがああああああ!!!さっさと死ね老害!!もう二度と進路相談なんかやんねーよバーカバーカ!!!次は釘バットでぶん殴る覚悟しとけアホ!!!!!そして死ね!!」
そう言い捨てると、真里は進路指導室を飛び出していった。
「ま、待て!いつつ、廊下は走るな!」
教師がややずれたコメントをした。
「わあああーーーーー!!皆死んじまえゴミカスがあああああーーーーー!!!」
真里はそのまま廊下を突っ切り、昇降口から転がり出てあてもなく走った。50m6.4秒の実力は伊達ではない。そのまま真里は疾風のように街を駆け抜け、すぐに見えなくなってしまった。
* * *
「…俺、何してんだろ……」
俺、蓮田谷真里は今、見知らぬ海岸にいる。
どうやら必死で走っているうちに、こんなところまで来てしまったようだ。
「はは…俺の体力も案外捨てたもんじゃねえな」
いくら正気を失っていたとはいえ、学校からここまで休憩なしで走り続けるのは至難の技だろう。すごいぞ、自分。あんまり誇れないけど。
「………帰るか」
これ以上ここにいて何か収穫はあるだろうか?いや、無い。ただ恥ずかしいだけだ。
立ち上がろうと、足に力をいれる。
…いれた、はずだった。
「う゛っ……」
全身に激痛が走る。そのまま砂浜に倒れこんだ。
……前言撤回。俺の体力は人並みだった。
「これ、どうやって帰ろう…」
俺は砂に埋もれながら、そう一言呟いた。どうにもならない、痛む体を引きずって帰るしかない。
その現実を目の当たりにし、さらにいっそう深く砂の中に体を沈めた。
* * *
「うー、うー、もう少し…ぜえぜえ、うう~………」
な、何とか見覚えのある風景が見えてくるところまでたどり着いた…。長かった。すごいぞ、俺。えらいぞ、俺。全身今すぐ爆裂しそうなくらい痛いけど…。
スマホの地図アプリを頼りに何とか自分の街に辿り着けそうだ。
最初は、親に迎えを頼もうかとも思った。だが父親はまだ仕事だろうし、母親は……
『気持ち悪い、無能力者の子供なんて!さっさと死ねクソガキ!お前が生きてるだけで酸素の無駄遣いだってこと理解してんのか!?』
『ごめんなさい、ごめんなさい!!許して、ぶたないで、母さん……!!』
『私のことを母さんなんて呼ぶんじゃねえよ!お前の父親とも、遺産目当てで結婚したんだ!誰がてめえらみてえな気持ち悪い奴らの家族になるか、次、母さんなんて呼んだら歯あ引っこ抜いてやるからなあ!?』
「………ま、迎え頼んだところで、来てくれるどころか電話に出てすらもらえねえよな」
母親の言葉に何一つ嘘はなかった。母は休みの日はいつも、父じゃない別の男と一緒にいた。むしろ、休みじゃない日だって、仕事が終わったらすぐ別の男のもとに行っていたこともしょっちゅうあった。
父はそれを知った上で、黙認していたようだ。当然だろう、そもそもあの女に隠す気などなかった。
俺がその事を幼いながらに問い詰めると、父は諦めたように言った。
『仕方ないんだ、父さんたちはそういうことをされても、文句を言えない人種なんだ…』
…父親のことは好きだ。でも、そうやってすぐ諦めるところは嫌いだった。
「……だから俺は諦めねえ。絶対に」
先刻の教師--菅原に宣戦布告するように呟いた瞬間、周りからの視線に気がついた。
「ね、ね、あの人みて」
「うわっ、髪の毛茶色…嘘、あれって」
「染めてんじゃねーの?」
「ちげーよ、だってほら、目も茶色だぜ」
「うわ、マジだ!じゃああいつ、ひょっとして蓮田谷とか言うやつじゃね?」
「そもそも、わざわざ好んであんな色に髪染める奴いねーだろって」
…………………………………………。
昔からこうだ。少し外を歩けば視線の波、酷い時には暴力までふるわれる。
それが昔は恐ろしくて、何もかもが敵に見えて、逃げ出したくてしょうがなくて……。
そんな感じで昔から走ってばかりいたものだから、おかげで足が速くなった。
「…ま、もう慣れたけどな」
そう言って、俺は再び歩きだした。強がりなんかではない。決して。
「……っし、地図によると、あとはここをまっすぐ行けば俺の街に出られるな」
ようやくここまで……!
今までの疲労がどっと押し寄せ、ふらふらと壁に寄りかかる。
……と、その時。
寄りかかった壁に、変なものを見つけた。
「あ?なんだこりゃ…?表札?」
字はずいぶん擦れてしまっていて、なかなかに読み取りずらい。もう日が暮れて、辺りが暗いというのもあるだろう。俺はスマホを取り出し、その表札(?)を照らしてみた。
「……………なんだ、これ」
そこには――
『蓮田谷』
……そう記されていた。
「…………、………あっ!」
そうだ、思い出した。ここは俺の――
俺が幼稚園児だった頃死んだじいさんの家だったところだ。
「取り壊しはしねえっていってたが…こんなにボロボロになっちまったとは」
……だが無理もない。たしかこの家はずっとずっと前から、建て替えたり修復工事をしたりはしたものの、残っていた家なのだから。
大昔から、どんな大災害にも負けずに。
………少し不自然なほどにこの家だけは無事だったと、昔じいさんが言っていた。
「…たしか、母さんがこんなところに住みたくないって駄々こねて、今の俺んちを買ったんだよな」
昔から、俺のひいひいひいひいひい……………じいちゃんやばあちゃんが生きてた頃からずっと残っている家。
そんな家なら、もしかしたら……
「何か情報が残されてるかも知れねえ」
ちょうど、少し腰を下ろして休みたいと思っていたところだ。そのついでだと思えばいい。
俺は迷わず、その門を開けて中に入った。
………どうしても、欲しいものがあったから。
そのための情報が、世間には知られていないような情報が、どうしても欲しかったから。
「…はあ」
放課後の進路指導室。そこには一人の生徒と中年太りした教師が向かい合って座っていた。
生徒は濃いめな茶髪で、前髪の一部をピンでとめていた。髪と同じ色をした目は、目の前の教師を反抗的に睨み付けている。
対して教師は、白髪で薄くなった髪をかきあげながら、色素の薄い目で目の前の生徒を蔑むように見つめている。
「君の第一希望の大学、これ、意味分かって言ってるの?」
「…分かってますよ、まだアンタみたいにボケてないんで。このへんでは最難関の大学でしょ、俺はそこに行きたいんすよ」
「いいや、分かってない。君がこんな優秀な大学に入れるわけがない」
その言葉を聞き、生徒は荒々しく立ち上がった。
「何でだよ耄碌してんのかクソジジイ!ちゃんと資料読め老眼野郎、俺の偏差値なら、全然チャンスはあるだろうが!」
「…偏差値うんぬんの話じゃないよ、君も分かってるだろう?」
生徒の怒りはもはや絶頂に達していた。生徒は拳を振り上げる。それが今にも教師に振り下ろされようとした時――
生徒の動きが、まるで網か何かにひっかかったように止まった。
…勿論、そこに網などない。
「てめえ…無能力者に異能使うのはっ…反則だろうが……!」
「いいからちゃんと座って話を聞きなさい。異能は解いてあげるから」
生徒は一瞬躊躇ったが、すぐにすとんと腰をおろした。ただ、凄く腹立たしそうではあったが。
「…ほら。こんな風に、異能を使われたら君は反撃もできないだろう?つまり君は、凄く弱い。弱い人間は要らないんだ、必要とされないんだ。特に優秀な大学は、異能力の性質、強さ、使いこなし等も厳しくチェックされる。君の成績なら、学力試験だけはトップクラスをとれるかもしれない。でもね、蓮田谷君、そこまでだ。この世界では異能力がない人間なんて、人として扱ってももらえないんだよ?」
「……そんなこと………」
生徒は顔を伏せた。
そう、この世界には、異能力が存在する。
しかもそれが当たり前となってしまっているのだ。
異能力は江戸時代後期に発生したとされている――が、詳細は不明だ。
ただひとつだけ判っているのは、とある寄生虫が大繁殖し、それに寄生されたものがどんどん能力を手にしたということと、その寄生虫は子供にも遺伝するということ。
そんな虫たちに寄生されることを拒んだ一族――それが「蓮田谷家」、この茶髪の生徒、「蓮田谷真里」の一族である。
寄生された者の条件として、能力の発生以外に最もはっきりあらわれるのは色素の薄まりだ。
逆にいえば能力の無い者は色素が濃い、つまり一目でそれと判る。
そんな蓮田谷一族は「反逆者だ」と忌み嫌われるようになった。人々は皆、能力を欲し自ら寄生虫に身を捧げていったのだ。
そうして蓮田谷一族は徐々に廃れていった。しかし、その悪名は今でも世間に根強く残っている。
それ故にこうして、蓮田谷家は酷い差別待遇を受けていた。
「わかった、蓮田谷君?君はそういう一族に生まれた不幸な人間なんだ。諦めて進路は就職にしといた方がいい。まあ君を受け入れる企業があるかは賭けだがね。君のお父さんは一体どうやって就職したんだろうね?私だったらこんな気持ちの悪い人間、絶対に採用しないけど…」
その言葉に、再び生徒――真里は反応した。
彼にとって、父親の侮辱は自分に対する侮辱よりも腹立たしい。
真里は先程とは比べ物にならないスピードを持って、教師に再び拳を向けた。
…今度は、防御が間に合わなかったようだ。
バキィィィィイイイイッ!!!ガシャンゴッ、ガタガタ、ドッ!!
真里の拳は的確に教師の顔面をとらえ、圧倒的な力で教師を殴り飛ばした。教師は痛みと衝撃で、呆然としている。おそらくあと数十分は動けないだろう。
「このハゲクソゴミカスデブアホ中年ジジイがああああああ!!!さっさと死ね老害!!もう二度と進路相談なんかやんねーよバーカバーカ!!!次は釘バットでぶん殴る覚悟しとけアホ!!!!!そして死ね!!」
そう言い捨てると、真里は進路指導室を飛び出していった。
「ま、待て!いつつ、廊下は走るな!」
教師がややずれたコメントをした。
「わあああーーーーー!!皆死んじまえゴミカスがあああああーーーーー!!!」
真里はそのまま廊下を突っ切り、昇降口から転がり出てあてもなく走った。50m6.4秒の実力は伊達ではない。そのまま真里は疾風のように街を駆け抜け、すぐに見えなくなってしまった。
* * *
「…俺、何してんだろ……」
俺、蓮田谷真里は今、見知らぬ海岸にいる。
どうやら必死で走っているうちに、こんなところまで来てしまったようだ。
「はは…俺の体力も案外捨てたもんじゃねえな」
いくら正気を失っていたとはいえ、学校からここまで休憩なしで走り続けるのは至難の技だろう。すごいぞ、自分。あんまり誇れないけど。
「………帰るか」
これ以上ここにいて何か収穫はあるだろうか?いや、無い。ただ恥ずかしいだけだ。
立ち上がろうと、足に力をいれる。
…いれた、はずだった。
「う゛っ……」
全身に激痛が走る。そのまま砂浜に倒れこんだ。
……前言撤回。俺の体力は人並みだった。
「これ、どうやって帰ろう…」
俺は砂に埋もれながら、そう一言呟いた。どうにもならない、痛む体を引きずって帰るしかない。
その現実を目の当たりにし、さらにいっそう深く砂の中に体を沈めた。
* * *
「うー、うー、もう少し…ぜえぜえ、うう~………」
な、何とか見覚えのある風景が見えてくるところまでたどり着いた…。長かった。すごいぞ、俺。えらいぞ、俺。全身今すぐ爆裂しそうなくらい痛いけど…。
スマホの地図アプリを頼りに何とか自分の街に辿り着けそうだ。
最初は、親に迎えを頼もうかとも思った。だが父親はまだ仕事だろうし、母親は……
『気持ち悪い、無能力者の子供なんて!さっさと死ねクソガキ!お前が生きてるだけで酸素の無駄遣いだってこと理解してんのか!?』
『ごめんなさい、ごめんなさい!!許して、ぶたないで、母さん……!!』
『私のことを母さんなんて呼ぶんじゃねえよ!お前の父親とも、遺産目当てで結婚したんだ!誰がてめえらみてえな気持ち悪い奴らの家族になるか、次、母さんなんて呼んだら歯あ引っこ抜いてやるからなあ!?』
「………ま、迎え頼んだところで、来てくれるどころか電話に出てすらもらえねえよな」
母親の言葉に何一つ嘘はなかった。母は休みの日はいつも、父じゃない別の男と一緒にいた。むしろ、休みじゃない日だって、仕事が終わったらすぐ別の男のもとに行っていたこともしょっちゅうあった。
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『仕方ないんだ、父さんたちはそういうことをされても、文句を言えない人種なんだ…』
…父親のことは好きだ。でも、そうやってすぐ諦めるところは嫌いだった。
「……だから俺は諦めねえ。絶対に」
先刻の教師--菅原に宣戦布告するように呟いた瞬間、周りからの視線に気がついた。
「ね、ね、あの人みて」
「うわっ、髪の毛茶色…嘘、あれって」
「染めてんじゃねーの?」
「ちげーよ、だってほら、目も茶色だぜ」
「うわ、マジだ!じゃああいつ、ひょっとして蓮田谷とか言うやつじゃね?」
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…………………………………………。
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それが昔は恐ろしくて、何もかもが敵に見えて、逃げ出したくてしょうがなくて……。
そんな感じで昔から走ってばかりいたものだから、おかげで足が速くなった。
「…ま、もう慣れたけどな」
そう言って、俺は再び歩きだした。強がりなんかではない。決して。
「……っし、地図によると、あとはここをまっすぐ行けば俺の街に出られるな」
ようやくここまで……!
今までの疲労がどっと押し寄せ、ふらふらと壁に寄りかかる。
……と、その時。
寄りかかった壁に、変なものを見つけた。
「あ?なんだこりゃ…?表札?」
字はずいぶん擦れてしまっていて、なかなかに読み取りずらい。もう日が暮れて、辺りが暗いというのもあるだろう。俺はスマホを取り出し、その表札(?)を照らしてみた。
「……………なんだ、これ」
そこには――
『蓮田谷』
……そう記されていた。
「…………、………あっ!」
そうだ、思い出した。ここは俺の――
俺が幼稚園児だった頃死んだじいさんの家だったところだ。
「取り壊しはしねえっていってたが…こんなにボロボロになっちまったとは」
……だが無理もない。たしかこの家はずっとずっと前から、建て替えたり修復工事をしたりはしたものの、残っていた家なのだから。
大昔から、どんな大災害にも負けずに。
………少し不自然なほどにこの家だけは無事だったと、昔じいさんが言っていた。
「…たしか、母さんがこんなところに住みたくないって駄々こねて、今の俺んちを買ったんだよな」
昔から、俺のひいひいひいひいひい……………じいちゃんやばあちゃんが生きてた頃からずっと残っている家。
そんな家なら、もしかしたら……
「何か情報が残されてるかも知れねえ」
ちょうど、少し腰を下ろして休みたいと思っていたところだ。そのついでだと思えばいい。
俺は迷わず、その門を開けて中に入った。
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