Pop Step

慰弦

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- 9章 -

- すれ違い -

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班乃自身、撫子の君とはよく話しをするが、実際なんという名前なのか、なんで此処に居るのか、普段は何をしている人なのか、まったく知らなかった。

知っているとすれば…


「…月影」

「つきかげ?」

「うん、名字だけど」

「ありがとうございます。では月影さん、単刀直入にお聞きします」

「あー…、待ってぇ」

「…なんですか」


単刀直入にはいかないようだ。間の抜けた声で、ゆるーく上げた手に、班乃の決意は一瞬にして崩される。


「うん。そうだよね。君の隠したい事、俺は知ってるのに、俺の隠し事を君が知らないのはちょっと気分悪いよね」

「まぁ、それもありますね」

「じゃぁ、教えてあげる」

「……」

「実は……この学校の制服デザインしたの俺なんだよね。仕事はデザイナーで、一応社長してます」


一時時間が止まる。

一世一代の秘密を打ち明けたような神妙な表情の月影を、班乃は驚愕の表情でガン見してしまう。一体いつ仕事をしているのかと思うほどしょっちゅう見かけるこの人がー…


「…社長!?こんなふらふらしてる人が?ちゃんと仕事してるんですか!?」

「失礼だなぁーちゃんとしてるってば。此処には休憩か、煮詰まった時に来てるだけだよ」

「…信じられない」

「先生達が俺のことを隠してるのは勿論口止めしてるからで、部外者立ち入り禁止の学校に堂々と入れるのは、俺が静創学園のOBだからだよ。謎があった方が面白いでしょ?」

「…どこから突っ込めば良いのかわからないのですが…卒業生だったんですね。だから先生方も協力してたわけですか」

「そうそう。これが俺の秘密」

「まぁ、確かに。ー…じゃなくって!」

「えっ、違うの?」

「いや、違くはないですがっ」


どうしよう。ペースが崩される。
秘密には間違いないのだろうが、聞きたいことはそんな事じゃない。
流されてはならないと気持ち新たに仕切り直すと、どう話を持っていけば良いのか試行錯誤する。

難しい顔で黙りコクったそんな班乃を眺める月影の笑顔には、微かに悲しみの色が混ざっていた。


「ごめんごめん。少しだけ意地悪した」

「はい?」

「君が聞きたい事はこんな事じゃないよねぇ」


椅子の上で、月影は器用に回転して班乃を真っ直ぐに見やる。

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