596 / 1,168
- 23章 -
- 青の終焉 -.
しおりを挟む昼休みも終わりに近づき教室へと向かう最中、班乃が安積の服を摘み引き留めた。植野にも聞きたいことがあるのだが、今はこっちの方が最優先だ。
不思議そうに班乃を振り返った安積は一度前を歩く3人を一瞥してから再び班乃へと向き直る。
「どーかした?」
「…前に保健室でしたお願い事覚えてますか?」
保健室という単語に顔が曇る。
本心を偽り自分を受け入れると言った安積に
本心を偽りその提案を断った自分がした頼み事。
彼を傷つけることは分かっていても
それ以上に傷つけてしまうのを恐れた。
でももう、それを恐れる必要はない。
「ぁ…あぁ、うん。もちろん。暫く距離置きたいってやつだよね?…ごめん、俺駄目だった?」
「いえ、そうではなくて、ただ、もう大丈夫ですって伝えようと思って」
「……え?」
「悲しませるような事を頼んでしまってすいません。我が儘、聞いてくれてありがとうございました。貴方を酷く傷つけたこと、本当に申し訳ないと思ってます。虫の良いことだとは分かってるのですが…また前みたいに仲良くしていただけると嬉しい、です」
驚いたように班乃を見つめパチパチと瞬きを繰り返した安積は、すぐさま眉間にシワを寄せぱっと視線を床に落とした。
こんな最初から最後まで自分勝手なこと、安積が怒ったとしてもしょうがない。けれど市ノ瀬とも約束をしたのだ。もう悲しませることはしないと。
「……良いよ。でも1個、条件がある」
「条件、ですか?」
絞り出したように呟いた安積はゆっくりと顔を上げしっかり班乃と視線を合わせると、すっと人差し指を立て手を顔の高さまで持ち上げる。
条件交換を持ち出されるとは予想もしておらず驚く班乃だったが、安積からの条件を断る資格など自分にはないと無言で頷き耳を傾けた。
「文化祭から今日までの事、お互いに色んな事情があって、お互い、どこか間違ったんだ。どっちが悪くてどっちが悪くないなんて話じゃないと思う。だからさ、もうこの事で自分を責めたり謝ったりするのはなしにする事。俺はもう、気にしてないよ。でもあっきーは真面目だから…そう言ってもいつまでも気にしちゃいそうだもん。だから、それが条件」
「…それで、良いんですか?」
「勿論。だから俺も謝るのはこれで最後っ!酷いことして、嫌な思いさせてごめんね」
「…僕の方こそ、傷つけて裏切るような事、とか、その、色々と、すいませんでした」
謝らなければいけない事が多すぎて上手く言葉に出来ないのが歯痒いが、それでも笑顔を返してくれた安積にぎこちなく笑い返した。
彼がお互いにと言ったのは、自分だけを責め続け辛い思いをしないようにという配慮なのだと思う。
それでも、非がないとは言わずにお互いどこか間違ったと言うその言葉で、反省し成長出来る可能性も残してくれているように感じる。
優しさと、強さと、厳しさと、様々なものを兼ね備えている、そんな彼の親友でいられて良かったー
「じゃ、約束ね」
「はい」
そんな彼を、好きになれて良かった。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
あの部屋でまだ待ってる
名雪
BL
アパートの一室。
どんなに遅くなっても、帰りを待つ習慣だけが残っている。
始まりは、ほんの気まぐれ。
終わる理由もないまま、十年が過ぎた。
与え続けることも、受け取るだけでいることも、いつしか当たり前になっていく。
――あの部屋で、まだ待ってる。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
この胸の高鳴りは・・・
暁エネル
BL
電車に乗りいつも通り大学へと向かう途中 気になる人と出会う男性なのか女性なのかわからないまま 電車を降りその人をなぜか追いかけてしまった 初めての出来事に驚き その人に声をかけ自分のした事に 優しく笑うその人に今まで経験した事のない感情が・・・
美澄の顔には抗えない。
米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け
高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。
※なろう、カクヨムでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
