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第一章 逃走と合流

第8話 洞窟(3)

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 この先、洞窟がどこまで続いているのか、それを今のうちに調べておくのもいいだろう。
 俺はそう思い、まず視界を確保するために照明リュールの魔法を使う。それは前に差し出した右手の平から、上空に向けて光の玉が飛び出る魔法だ。

 周囲を少し明るくするだけの魔法だが、こんな時は便利だ。

「うーん、思ったよりも広いな」

 暗くてよく見えなかったが、俺たちが居た場所はかなり広い空間だったようだ。
 一番幅があるところで幅20メートルくらいはあるだろう。そこから二つの方向に通路が伸びており、片方が出入口へ、もう一つは洞窟の奥へと続いているようである。
 あとは通路かと思って入ってみると、数メートルで行き止まりのへこみ? みたいなものしかなかった。

「とりあえず、奥へと行ってみるか」

 俺は一応何かあったときのために、腰のナイフを抜いておく。それを右手に持つと、しっかり構えながら奥へと足を進めた。
 しばらく細く長い道が続いていたが、なぜか人が一人分は必ず通れるような大きさで続いていた。人工的に作ったのは? そう思えるくらいに。

「あれ? ここで行き止まりか……」

 そんな感じで順調に進んでいた俺だったが、ごつごつした岩肌が前に立ちふさがってしまう。
 うーん、残念、ここまでか。
 岩肌の壁を手で触りながら、俺は少し残念な思いで振り返える。そして、戻ろうと左足を一歩踏み出した時だった。

 カラン、カラン、カン、カン。

 つま先に小石が当たり、その弾みで飛んでいく。すると、なぜか金属の上を転がっていくような音が聞こえた。
 その音がしたほうへ、光を向ける。すると、そこには多少土で埋もれていたが、金属のハッチみたいなものがあった。

「何だ……これ?」

 どう見ても金属の脱出用ハッチにしか見えなかった。

 黒かったので見落としたらしい。
 引手など付いていなく、見た目には簡単に開きそうになかった。誰かがここに何かを隠すために設置したのか、それとも秘密基地か。俺はそんな少年のような発想に「そんな訳ないよな」と、少し笑いながら首を振る。

 しかし、俺はその場違いな存在を不思議に思いながらも、そのハッチに手を触れてみる事にした。

「転生者ミッション――――――クリアしました」

 どこからか女性の声が聞こえる。なんかこう……スマホで文章を読み上げているような声だ。
 すると俺の周囲が一変し、真っ白な空間となったのだった。
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