美少女エルフ隊長へ転生した俺は、無能な指揮官に愛想がついたので軍隊を抜けました ~可愛い部下たちとスキル【ダンジョン管理】で生きのびます~

二野宮伊織

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第二章 モモとダンジョン

第37話 副管理者(1)

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「やっと着いたな」

「はい!」

 俺の言葉に元気よく返事をするモモ。
 俺たち二人は、最初にたどり着いた洞窟へと戻ってきた。陽はもうかなり傾いており、空は赤く夕方である。まあ、あれだけ色々あれば、このくらいの時間にはなるのだろう。
 他のメンバーは、助けた冒険者と村人を村へと送り届けに行ってもらった。

「ええと、ライムのやつ、一ヶ所暗号を間違えてましたね」

 練習のためにライムに書かせた暗号、それが一ヶ所間違えて書いてあったのだ。

「ああ、そうだったな。まあ、二度目だから道は問題なかったけどな」

「もう、帰ってきたら絶対に言ってやります!」

 モモは可愛らしい頬を膨らませ、少し怒った様子で口を尖らせる。

「怒らないでやってくれ。俺がやるように言ったんだ」

「でも」

「初めてだし、一ヶ所ぐらい間違えることもある。それにちゃんと戻ってこれたしな」

「まあ、隊長が言うんなら……もう、優しいんですから……」

 最後にそうつぶやくと、モモはこっちを見ると少し微笑んだ。

「しかし、よく俺たちにあそこにいたのが分かったな。まあ、来てくれたから助かったけど」

 俺たちは山賊たちの会話を偶然聞き、小屋に向かった。
 そこで捕まっていた冒険者たちをラフランと助けようとしたが返り討ちに遭い、ピンチになったところで副隊長のエリーたちが入ってきたのだ。

「村ですぐに副隊長たちと合流できたんです」

「そうか」

「そこでちょうど村人が、緑髪のエルフが山賊に捕まったらしいって」

「仲間の逃げた冒険者の話を噂してたのか」

「ええと、たぶんそうだと思います。そしたら副隊長が『隊長かも』って慌ててしまいまして」

 それで慌てて小屋にやってきたのか。話が長くなりそうだったので、俺が座り、モモも向かいに座るように促した。
 モモはちょこんと一礼すると、俺の前に座る。

「で、みんなを連れて小屋にやってきたんだな」

「はい。副隊長が慌ててまして」

 なるほど、それであのタイミングで現れたのか。モモの話っぷりに、エリーが相当慌ててたのが分かる。

「助かった。ありがとな」

「ええと」

 俺のその言葉にモモは顔を赤らめ、視線をそらした。そして、小さな声で続けた。

「ありがとうございます……すみません、顔が熱くなってしまいまして」

「大丈夫か、熱とかあるんじゃないのか」

 俺が顔を近づけて様子を見ようとすると、モモは照れ隠しのように咳払いをする。そして、慌てて言葉を続けた。

「……っ! あの、隊長のおかげでみんな助かりました。ありがとうございます」

 すると、モモはその場ですっと立ち上がり、俺にピンと指を立てた手を頭に添えて敬礼する。

「ああ、もうそう言うのいいから。もう軍隊じゃないし、エリーにも言わないとな」

「えっ……隊長……」

 そう言うと彼女は眉を八の字にして、もの悲し気にこちらを見つめながら、また座りなおした。

「まあ、エリーがここに来てから、みんなで相談だな」

「は、はい……」

 彼女の力のない返事に少し可哀かわいそうになる。だけど、このまま俺がリーダーをやっていくよりかは、エリーのような優秀な人材をトップにしたほうが生き残れるだろう。
 俺ではどう考えても力不足だ。
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