美少女エルフ隊長へ転生した俺は、無能な指揮官に愛想がついたので軍隊を抜けました ~可愛い部下たちとスキル【ダンジョン管理】で生きのびます~

二野宮伊織

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第二章 モモとダンジョン

第56話 ベルンと休憩(1)

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 馬にまたがる指揮官のマルティナを中心に、隊長の私とニコが両脇を守り、後ろを残り三人がついてくる形だ。もうかなりの距離を休憩なしで歩き続けている。
 森に消えたベルゼゼはどうしたのか……彼女と他の仲間の笑顔が次々と頭の中をよぎっていった。

「道を間違えたか……」
 指揮官がそう言うと手綱を引き、馬を止めた。それと同時に横を歩いていたミルダと私たちも歩みを止める。少し足を止めるだけでも、かなり楽になった。

「ミルダ」

 マルティナは馬上からミルダを大声で呼ぶ。敵に見つかるリスクを考えるとするべきではないだろう……本当に士官学校を出ているのだろうか、そんなことを思いながら、ミルダのほうを見つめた。
 彼女は「へい」と答えると、私のほうを見て叫んだ。

「ベルン、休憩だ」

「はい! ほら、みんな休憩だ」

 私は仲間のエルフたちに向かってそう言うと、道の脇に腰を下ろす。
 ニコが汗でまとわりつく長い髪を、顔をしかめながらかき上げた。私みたいに短くすればいいのにとも思うが、軍で自由にできるのは髪型ぐらいである。ニコもちゃんと女なんだなと思った。私も女だが。

「なんですか、隊長……ニヤニヤして」

 彼女を見てにやけていた私を見て、ニコは少し不満げにそう言った。

「いや、お前も女なんだなって」

「なんですか! 今さら……」

 少し口を尖らせて、あからさまに怒ってみせる彼女。そんな元気があるなら大丈夫か……私は彼女の態度見てそう思うと、水筒の水を一口飲んだ。
 そして目線を上にあげ、指揮官のほうへと顔を向ける。ミルダは手でこれまで歩いてきた道の前方を指差して、指揮官とまだ何か話をしていた。

「このまま進む気ですかね」

「そうだな」

 私も道なりに北に進むべきだと考える。国境に近いカルロベの町には、数千の兵がいるはずだ。
 すでに敵の手に落ちていることはないだろう。
 ただ現在地が我々の思ってる位置より西にいる場合は、話は別である。国境を越えて敵国内に出てしまうからだ。

「東には進まないですよね……」

 私たちの後ろから、部下の一人であるジャムが心配そうな顔で私に問いかける。東に向かえば大きな都市があるが、ここからは歩いて三日以上かかり、大きな川も超えないといけない。
 さらに平坦な道を歩くわけではない、起伏の激しい山道だ。とてもじゃないが、みんなの体力も食料ももたないだろう。

「かなり揉めてるな」

「そうですね」

 私の言葉にニコも、その碧い瞳で指揮官たちを見つめる。私もここで東を選択することはありえないと思った。だが、マルティナのここまでの行動からすると、ひょっとして東を選択する可能性があるのではないかと不安が頭をよぎる。

「まあ、揉めてる間は休めるからいいか」

 ニコは大きく両手を伸ばすと、道路脇の草地にどろんと横になる。そうとう疲れていたのだろう、それを見た残りの三人も同じように横になった。

「隊長、気持ちいいですよ」

 ニコは空を見ながら、笑って言った。

「ああ」

 私はそう気のない返事をすると、そのままマルティナとミルダが話しているのを見つめていた。

 ☆

 彼女たちは時間にして10分以上、太陽の位置や山々のほうを指差しながら話し込んでいる。たぶん、二人で意見が違うのだ。
 ミルダはかなり腕が立つ冒険者だったという話を聞いたことがある。たぶん指揮官としての経験の浅いマルティナでは、彼女を説得しきれないのだ。

「よし、じゃそれでいこう」

 ミルダに向かってマルティナが言った言葉がここまで届いた。どうやら話し合いはミルダの意見が通ったようである。
 その言葉と同時に指揮官は馬から降りると、私たちに向かって言った。

「お前たち水を調達しろ、それが終わったら出発だ」

「はい!」

 その言葉に私は立ち上がり、敬礼をして返事する。部下たちはここまでの行軍で疲れ切っている。少しでも彼女たちを休ませてやりたい私は、自ら指揮官とミルダの水筒を回収した。
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