13 / 14
また泣いてるのか
しおりを挟む
また泣いてるのか、と揺すって起こされて、目が覚めた。
「田中……また、夢見て」
「今までお前が、こんなに過去を思い出したことなんて、ないんだけどな」
俺は止まらない涙を流す目をこすりながら、絶望をかみしめ、そして目が覚めたことに安堵した。
ここには田中が生きて、今そばにいる。
夢で見たエルフの永い絶望の日々を思い出して、俺は震えた。
明け方に起きてしまった俺たちは、田中のベッドの上で起き上がる。
田中がリモコンを押せば、明るくついた画面にはモノクロの映画が流れていた。
俺は枕を抱きしめるようにして、モノクロの世界から放たれる光に、ただ見入った。
なかなか震えの止まらない俺を、後ろから抱きしめて、田中が言い聞かせるように耳元でささやく。
「夢は夢、過去は過去だ。あっちに引きずられるなよ」
「……うん」
「俺が大事なのは、今の鈴木だ」
「うん」
俺はこうしてたまに夢を見るだけだけど、田中は全部覚えているという。
輪廻で巡る果てしない人生、俺たちの旅に終わりはないんだろうか。
「あのさ、鈴木」
「うん」
「俺、たくさんの人生を生きてきたけど、今が一番幸せだわ」
「うん」
「平和でさ、命のやり取りなんかなくて。鈴木が俺のことわかってて」
「うん、うん」
だから、と後ろから抱きしめる力が強くなった。
俺の耳に唇をつけた田中がささやく、この人生で最後にしようと思う。
俺は振り向きたくても、抱きしめる田中の力が強くて無理だった。
仕方ないからモノクロの光を見たまま俺は尋ねる。
「もう次は会えないってこと?」
俺の涙がまた流れ出したのは、きっと画面の光がまぶしいからだ。
「そうじゃない」
鼻をすすった俺の顔を覗き込んで、田中が眉を下げている。
俺は困った顔した田中の顔も好きだけど、田中を困らせるのは好きじゃない。
「次は俺と鈴木、じゃなくて。最初から一緒に、一個の生命体で生まれてくりゃいいだろ」
「そんなこと、できるの?」
たぶんな、と田中が俺の顔を、手のひらで雑に拭った。
どちらからともなくキスをして、お互いの身体の隙間を埋めるように、抱きしめ合って眠った。
海の中の珊瑚とか、大きな樹とか、山の奥の土の中で挟まれて眠る鉱石とか、そんなものがたくさん夢に出てきた。
目が覚めて、まだ眠る田中が目の前にいて、こんな風に好きな相手を目で見ることは、幸せなことだと気づく。
触れて声を聞いて、泣いて怒って笑い合って。
時間がどんなにあっても、足りない気がした。
パチリと目を開けた田中が、またすげー見てると笑った。
「おはよう田中」
「おはよう鈴木」
これが田中と一緒に人生を歩む最後かと思うと、もったいなくて寝てられない。
俺がそう言って起き上がると、笑った田中にもう一度寝転がされた。
「じゃあさ、最後が始まった最初のエッチ、しよっか」
「あ、アホか」
本気だよー、と体制を入れ替えた田中に、今日は鈴木が俺に挿れる? と聞かれて俺もその気になってしまった。
結局盛りのついた俺たちは、そのまま挿れて挿れられて、家から一歩も出ずに正月の三ヶ日を田中の家で過ごした。
夕方、玄関の扉がガチャガチャを音を立てて開き、年賀状すらポストに入ったままじゃないの、あんたたちときたら。と帰ってきた田中のおばさんに、二人して怒られた。
「田中……また、夢見て」
「今までお前が、こんなに過去を思い出したことなんて、ないんだけどな」
俺は止まらない涙を流す目をこすりながら、絶望をかみしめ、そして目が覚めたことに安堵した。
ここには田中が生きて、今そばにいる。
夢で見たエルフの永い絶望の日々を思い出して、俺は震えた。
明け方に起きてしまった俺たちは、田中のベッドの上で起き上がる。
田中がリモコンを押せば、明るくついた画面にはモノクロの映画が流れていた。
俺は枕を抱きしめるようにして、モノクロの世界から放たれる光に、ただ見入った。
なかなか震えの止まらない俺を、後ろから抱きしめて、田中が言い聞かせるように耳元でささやく。
「夢は夢、過去は過去だ。あっちに引きずられるなよ」
「……うん」
「俺が大事なのは、今の鈴木だ」
「うん」
俺はこうしてたまに夢を見るだけだけど、田中は全部覚えているという。
輪廻で巡る果てしない人生、俺たちの旅に終わりはないんだろうか。
「あのさ、鈴木」
「うん」
「俺、たくさんの人生を生きてきたけど、今が一番幸せだわ」
「うん」
「平和でさ、命のやり取りなんかなくて。鈴木が俺のことわかってて」
「うん、うん」
だから、と後ろから抱きしめる力が強くなった。
俺の耳に唇をつけた田中がささやく、この人生で最後にしようと思う。
俺は振り向きたくても、抱きしめる田中の力が強くて無理だった。
仕方ないからモノクロの光を見たまま俺は尋ねる。
「もう次は会えないってこと?」
俺の涙がまた流れ出したのは、きっと画面の光がまぶしいからだ。
「そうじゃない」
鼻をすすった俺の顔を覗き込んで、田中が眉を下げている。
俺は困った顔した田中の顔も好きだけど、田中を困らせるのは好きじゃない。
「次は俺と鈴木、じゃなくて。最初から一緒に、一個の生命体で生まれてくりゃいいだろ」
「そんなこと、できるの?」
たぶんな、と田中が俺の顔を、手のひらで雑に拭った。
どちらからともなくキスをして、お互いの身体の隙間を埋めるように、抱きしめ合って眠った。
海の中の珊瑚とか、大きな樹とか、山の奥の土の中で挟まれて眠る鉱石とか、そんなものがたくさん夢に出てきた。
目が覚めて、まだ眠る田中が目の前にいて、こんな風に好きな相手を目で見ることは、幸せなことだと気づく。
触れて声を聞いて、泣いて怒って笑い合って。
時間がどんなにあっても、足りない気がした。
パチリと目を開けた田中が、またすげー見てると笑った。
「おはよう田中」
「おはよう鈴木」
これが田中と一緒に人生を歩む最後かと思うと、もったいなくて寝てられない。
俺がそう言って起き上がると、笑った田中にもう一度寝転がされた。
「じゃあさ、最後が始まった最初のエッチ、しよっか」
「あ、アホか」
本気だよー、と体制を入れ替えた田中に、今日は鈴木が俺に挿れる? と聞かれて俺もその気になってしまった。
結局盛りのついた俺たちは、そのまま挿れて挿れられて、家から一歩も出ずに正月の三ヶ日を田中の家で過ごした。
夕方、玄関の扉がガチャガチャを音を立てて開き、年賀状すらポストに入ったままじゃないの、あんたたちときたら。と帰ってきた田中のおばさんに、二人して怒られた。
10
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
隊長さんとボク
ばたかっぷ
BL
ボクの名前はエナ。
エドリアーリアナ国の守護神獣だけど、斑色の毛並みのボクはいつもひとりぼっち。
そんなボクの前に現れたのは優しい隊長さんだった――。
王候騎士団隊長さんが大好きな小動物が頑張る、なんちゃってファンタジーです。
きゅ~きゅ~鳴くもふもふな小動物とそのもふもふを愛でる隊長さんで構成されています。
えろ皆無らぶ成分も極小ですσ(^◇^;)本格ファンタジーをお求めの方は回れ右でお願いします~m(_ _)m
KINGS〜第一王子同士で婚姻しました
Q矢(Q.➽)
BL
国を救う為の同盟婚、絶対条件は、其方の第一王子を此方の第一王子の妃として差し出す事。
それは当初、白い結婚かと思われた…。
共に王位継承者として教育を受けてきた王子同士の婚姻に、果たしてライバル意識以外の何かは生まれるのか。
ザルツ王国第一王子
ルシエル・アレグリフト
長い金髪を後ろで編んでいる。 碧眼 188cm体格はしっかりめの筋肉質
※えらそう。
レトナス国第一王子
エンドリア・コーネリアス
黒髪ウェーブの短髪 ヘーゼルアイ
185 cm 細身筋肉質
※ えらそう。
互いの剣となり、盾となった2人の話。
※異世界ファンタジーで成人年齢は現世とは違いますゆえ、飲酒表現が、とのご指摘はご無用にてお願いいたします。
※高身長見た目タチタチCP
※※シリアスではございません。
※※※ざっくり設定なので細かい事はお気になさらず。
手慰みのゆるゆる更新予定なので間開くかもです。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる