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蛇足編 ひろきとフロイラインその1
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俺は夢のなかで懐かしいRPGをしているようだった。
なぜ夢のなかだとわかるかって、そのゲームは俺の両親が子供の時代に、流行ったものだからだ。
家のテレビとは違う画素の粗い四角い画面、そのなかで二頭身の王様らしき人物のセリフが文字として流れていく。
「おお勇者よ、たびだちのときがきた。
これをもってゆくがよい。
そなたのかつやくをきたいしているぞ」
『勇者は50Gをてにいれた!』
「ではゆくがよい勇者よ!」
ちょっと待てよ、勇者に渡すにしては50Gって少なくねぇ?
何の説明もないんだけど、それで活躍を期待ってどういうことよ?
画面のなかの王様に笑って突っ込みを入れながら、夢のなかの俺は勇者の出て行ったあとの王様とそばにいたもう一人のやりとりを見ていた。
あれ?何で勇者目線じゃねーの、このゲーム。
「……ふぅ、勇者気取りがどこへ行くのやらだの、大臣」
「ですな……勇者を名乗れば王公認で国を出られるとはいえ、毎回自称勇者に50G渡すのも国庫の痛手ですわい。何しろ数が数だけに……」
どういうことだ?聞いてはいけない話を聞いてしまったような気が……そこで俺は意識を手放した。
俺は目を覚まし、違和感をおぼえて目をつぶり、もう一度目を開けてみる。
目をキョロキョロさせても、視界の右上の方に半透明の枠が見えて緑の蛍光色で『50G』と書いてある。
視界の左上の方に同じ半透明の枠と緑の蛍光色。
『ゆ:ひろき
HP 38
MP 23
Lv 1 』
そして俺の家じゃない知らない場所だ。
はああぁぁぁっっ!?
ベッドから見える天井は見覚えのない木、身体を起こしてみると壁も床も同じ木に見える。
ベージュのゴワゴワした手触りのシャツと、グレーのズボンを履いている。
毛糸編みのような分厚い靴下も履いているので、ベッドの足元にあったブーツに足を入れてみる。
うん、サイズはぴったり。
部屋のなかにはベッドと木のタンスしかない、とりあえずタンスを開けると布袋と、こん棒が入っていた。
歪んだガラス窓から外を見れば、石畳に木の家が立ち並ぶ見知らぬ街並み。
ひとまずベッドに腰掛け、どうやら夢で見ていたRPGの世界らしいと思い至る。
RPGということはステータスも開けるはずだ、俺はステータスを確認することにした。
結果からいうと、ステータス枠が出現することはなかった。
心の中でステータスオープンと唱えてみたり、声に出してみたり身体を動かしてみたり。
色々試したが無理だった。
ステータスの確認は諦めてタンスから布袋とこん棒を取り出し、木のドアを開けて部屋を出る。
同じようなドアがいくつか並ぶ廊下を歩き、きしむ階段を降りるとカウンターの中から女将さんが声をかけてきた。
「おはようございます。朝食をどうぞ」
「あ…おはようございます。いただきます、ありがとうございます」
カウンターに乗せられた木のトレイには、湯気のたつスープの椀、飲み物の入った木のカップとパンが乗っていた。
カウンター前に置かれた椅子に腰掛けて、ありがたくいただく。
言葉は通じるんだなぁ、などと考えながら固いパンをちぎった。
口に入れた黒っぽいパンは酸っぱくて、あわててスープで流し込む。
バターとかジャムってないですか?と聞いたら、女将さんに変な顔で見られた。
あ、ないんですね、ならいいです、と飲み物のカップを確認したら水だった。
ミルクってないですか?と聞いたら、あっても別料金だよと答えがきた。
「どこの宿も朝食はこんなもんだろ?あんたそんな恰好してどこのお坊ちゃまだい」
「すみません……この辺に慣れていなくて」
苦笑いして素直に言ったのだが、愛想のない女将さんは肩をすくめてカウンターの向こうに消えてしまった。
朝食を終えて、カウンターの向こうにお礼を言って宿を出る。
出る前に確認したカウンターの上には、小さな木彫りで8Gとあった。
まだ夢なのか現実なのかわからないが、お金がなければ宿にも泊まれない。
貨幣の価値もわからないので、街中を歩いて調べることにする。
車は走れないような幅の石畳、その道の両脇に二階や三階建ての木の家がすき間なく建っている。
そんな道をしばらく歩けば、やがて石畳の広場に出た。
広場の中心に石で囲った小さな噴水があり、そこから流れる水が石で作られた三つの水路に分かれていく。
噴水そばのベンチに座って見ていると、木の桶を持った人がやってきて噴水の水を汲んでいった。
通行人がきては腰につけている木のカップを外し、噴水の水を入れて飲むとカップを腰に戻し歩いていく。
噴水とベンチの周りには、ぐるりと屋台が並んでいる。
値段を確認しようと覗いていくと、朝早いので開店準備前の屋台が多いようだ。
唯一開いていた屋台はパン屋で、宿で食べたのと同じ黒いパンだったが、つぶれたサッカーボールみたいな大きさで、びっくりして店主に値段を聞いた。
「ひとつ1ギルだ」
いかつい顔の店主に買うのか買わないのか、と目で問われる。
「朝食は済ませたので、またきます」
と断って歩き出す。
貨幣の単位はギルのようだ、先ほどの宿が一泊で8ギル、パンが1ギル。
積み上げられた小さなカゴに入れた生きた鳥が元気に鳴いている。
果物やハムらしきものを木箱に積んだ台車を引いて、声を上げながら人々が行きかう。
屋台が動き出すまで、もう少し時間がかかりそうだ。それまで街中を歩いてみることにする。
屋台と店ではまた値段も変わってくるだろう、そこも後で確認するとして、三つに分かれた水路の一つを辿ってみることにした。
一つ目の水路に近い石畳の道は、木の家の一階部分が店舗になっているようだ。
個人商店なのだろう、軒下に色を塗られた木彫りの看板がかかっている家が多い。
噴水に近い店の方が格子窓にガラスがはめられ、店内が覗けるようになっており、店ごとにグラスや洋服が綺麗にディスプレイされていた。
逆に噴水から離れれば、木の建物自体も小さくて古びていたり粗末になるようだ。
二つ目の水路の道沿いは、宿が多かった。
やはり噴水に近い方が立派な建物があり高級宿、離れれば建物が粗末になっていくから、宿の質も値段も下がるのだろう。
噴水広場からずいぶん歩いた場所では、夜の店が多いのか安っぽく飾りつけられた木彫りの看板が立ち並んでいた。
こんな朝にまだ仕事中なのか、お姉さんのお仕事の声が聞こえる建物もある。
高校生で彼女すらいたことのない俺には、まだ早い、そそくさと移動することにした。
三つ目の水路の道沿いは、食べ物関係が多いようだ。
レストラン、カフェ、食堂、色とりどりの食べ物の絵が看板に彫られている。
こちらもまだ開店前のようで、看板を眺めながら歩いていく。
噴水からだいぶ離れた街の端あたりだろうか、民家なのか粗末な木の小屋がひしめいている。
いつからか石畳はなくなって、代わりに踏み固められた土が薄埃をたてていた。
石造りだった水路は、途切れてなくなっていた、地面に染み込んでいくのだろう。
街の境界線とか外壁とかは、ないんだな……
だんだんと建物らしきものがなくなり、地面には草が生えている。
遠くを見れば林だか森だかが見え、青草が地面を覆っており道らしきものは見えない。
街から外れて危険な生き物と遭遇でもしたら怖いから、戻ろう。
一応右手にこん棒を握りしめながら、俺は街の中心の方へ向かって歩き出した。
ぽつぽつと建物が増え、土が見え草がなくなってくる。
こん棒を腰ひもに戻しながら、どうしたものか考える。
冒険者ギルドとかあるのかな、冒険者登録をして仲間を増やして依頼を受けて、ってやっぱりファンタジーの定番だしな。
お金を稼がなければいけないし、と歩きながら考えていた俺は何かにつまづいた。
「……っ?うわっ、すみませ…」
転びかけてこらえた俺はとっさに誤りかけて、絶句した。
土の地面にうつ伏せになった人が転がっていた。
ま、まさか、し…死んでる?
「……っ!!大丈夫ですかっ!」
伸ばされた手の先がわずかに動いたのを見て、思わず俺はしゃがんで声をかけていた。
肩にそっと手をかけても、その人は反応せず動かない。
陽が出てきたのに触れた身体はずいぶんと冷たい。
「うちの奴隷が何か??」
頭の上からしゃがれた低い声が聞こえた。
奴隷?聞きなれない単語にびくりとする。
顔を上げれば顔色の悪いむくんだ男が、値踏みするように俺を見下ろしていた。
その視線がねっとりした感じでちょっと気持ち悪くて、すぐに立ち上がり「別に何も」と答える。
「奴隷が入用ならそんな死にかけじゃなく、もっとまともなのがいるよ」
俺をじっとり足先から頭まで眺めて、崩れかけの木の小屋へ呼び込もうとする、気持ち悪いな!
さっさと立ち去りたかったが、死にかけと聞いて気になる。
「死にかけって、この人は病気なのか?」
「……はっ、病気もあるかもな。そいつは生意気な、使えない、ただのクズ奴隷だ。転がしときゃそのうちくたばるだろ」
俺から一瞬だけ地面に倒れた人に視線を向けて、憎々しげにペッとつばをはく。
なんだなんだ、ここは一体どういう世界だ?奴隷がいてほっといて死ぬとか、怖すぎるんだけど。
俺が嫌な顔をしたのを見たのだろう、視線を俺に戻してニヤリと口を歪めた男が言った。
「こいつの値段はたったの3ギルだ。兄さんがこいつを買うってんなら、こいつだって死なずにすむだろうぜ」
「よし買った」
男がまいどあり、と言うと視界の右上の数字が47Gになった。
『どれいをてにいれた』
蛍光緑の文字が視界を流れていく。
金のやり取りが終わったからか、男は奴隷の首から首輪を外すとさっさと立ち去ってしまい、倒れた人と俺は土埃のなか残された。
思わず買ってしまった、奴隷。この世界で初めてのお買い物が死にかけた奴隷だよ、大丈夫かな俺。
とりあえずこの人どうしよう……。
俺よりもガタイのいい奴隷さんを、よいしょとひっくり返した。
土がまぶされた髪の毛はもつれており元が何色か不明だが、けっこう長い。
顔も身体も暴力をふるわれたのか、肌は腫れて紫色や茶色になっている。
風呂になんて入っていないからだろうか、すえたような腐ったような臭いがする。
股の部分がかろうじて隠れる布を巻いているんだけど、それだって灰色か茶色か元の色なんてわからないボロ布だ。
抱え上げる腕力はないから、両肩の下に手を入れて腰まで持ち上げる。
足は引きずるけど、そのままずるずると移動して、壊れかけの建物の影におさまった。
ここならひとまず、通りからは見られることもないだろう。
奴隷さんを下ろして、肩に斜め掛けしていた布袋に手を入れる。
宿の部屋で確認しておいて良かったよ、布袋には『薬草:特級』というのが入っていたのだ。
薬草をひとつ取り出してみると、飴のように小さく丸められていた。
水もないけど仕方ないだろう、と奴隷さんの口に入れてみようとして、俺は困った。
奴隷さん意識ないのに口をがっつり閉じている、奥歯を噛みしめているんだろう、飴を入れようにも開かない歯がそれを許さない。
授業で習った人工呼吸を思い出し、気道確保だと首を持ち下顎を上向かせて口を開けさせる。
気道を確保して、はたと思い至る。
ここに飴みたいな固形物を入れて、果たしてこの奴隷さん飲み込めるか?
たぶん、無理。下手したら気道につまらせて死ぬだろう。
んー、と10秒くらい俺は悩んだ。
だって初めてだからね、これがファーストキスだよ。
だけど人の命には代えられないんだ。
ええぃままよ、とそれを口に入れてモグモグした。
唾液と十分混ざってドロリとした液体を、奴隷さんの口に少しだけ流し込む。
たった少しの液体を、わずかに喉が動いてごくんと飲み込むのが見てとれた。
同じ要領で口づけて、自分の舌で少しずつ液体を送り出し、飲ませていく。
これは治療、これは治療と自分に言い聞かせながら奴隷さんに何度も口づける。
薬草が効いて多少回復したのか、薄っすら目を開けた奴隷さんが、液体を届ける俺の舌ごと舐めて吸った。
おいおい、いくら回復したいって、俺の舌ごと舐め回すな、こっちはキス初心者だ。
口の中の液体が少なくなって、もういいだろうと口を離そうとしたとき。
奴隷さんがひと言、浄化とつぶやくと一瞬キラキラッと光った。
すべては一瞬だった。
もつれていた髪の毛がサラサラの金髪に変わった。
汚れが消えた股を覆う布は使い古された緑色で、白い肌が露出している。
そして鼻をつくような臭いも、なくなっていた。
今のが何だったのか考えるより先に、奴隷さんの手が俺の後頭部へまわって、がっちりホールドされた。
残りの薬草まで絞り取ろうとしているのか、奴隷さんの舌が俺の口の中で大暴れだ。
前歯の裏側をすっと撫でるように舐められて、舌を強く吸われる。
上顎をべろりと奥まで舐めてから、舌を絡めて絡めて絡まってから、また吸われた。
も、もう薬草は口の中に残ってないよ!
ファーストキスがこんな大人のキッスで、俺はよくわかんないけど、息もはぁはぁしてドロドロに溶けそうだ。
と思っていたら、ようやく離れたと思った唇がまた近づいてきて、口の端っこを舐められた。
たぶん赤い顔して息も荒い俺を、微笑んで見ている大人の男のひと。
『薬草:特級』スゲーな!
さっきまで意識なくて傷だらけのボロボロだった奴隷さんが、キラッキラのイケメンに生まれ変わっていた。
スッと立ち上がってどこからか取り出した洋服を素早く身にまとい、笑顔の奴隷さんは俺に手を差し伸べた。
ぼーっとしていて俺はひとり、しゃがみこんだままだった。
手をとられて立ち上がると、繋いだ手はそのままにもう片方の手が俺の腰に添えられていた。
「ここは危険ですから移動します」
少し掠れた声がそう告げると視界が白くなって、えっと思った次の瞬間には、知らない部屋のなかにいた。
俺の腰を後ろから押すように、優しく導かれてソファーに座る。
真横に腰掛けた奴隷さんが、俺の目を見てありがとうと言った。
「ということなのです、君が助けてくれなかったら、本当にあのまま私は死んでいたでしょう、感謝しています」
かいつまんで説明すると、3年前遠い国のお金持ちの次男である青年が、家の政敵の企みにより、連れ去られ監禁ののち、隷属の首輪を付けられた上で奴隷として売り払われた、と。
隷属の首輪により、主人を傷つけたり魔法を使うことはできなかったが、性奴隷として複数の男たちに辱められることを大暴れして拒否したため、死ぬほど痛めつけられた、と。
そうか、主人を傷つけられなくても、他の人間に抵抗することはできるんだな。
と俺が頷くと、隷属の首輪で主人の命令に逆らうと首輪が締まって息ができなくなるらしい。
それでも主人ひとりならともかく、命令されて複数の男に奉仕した上で廻されるのは、絶対に嫌だったのだという。
「最期は結局全員に犯されまくったようですし、死にたくないと思っていた私が、死んでもいいと思うほどには、痛めつけられましたね。私にとっては永遠のように長い3年間でした」
微笑む奴隷さんだが、『薬草:特級』で身体の傷は癒えても、心の傷は癒えやしないだろう。
首には首輪の跡がくっきりと、日焼けとして残っている。
俺なんか通学電車でたぶん女子に間違われて痴漢にあっただけで、誰にも話せなくて怖くて、しばらく立ち直れなかったよ。
淡々と語る奴隷さんの話を聞いて俺は泣いた。
申し訳ないが涙は止められなくて、奴隷さんの胸を借りて号泣した。
泣いているあいだ、奴隷さんは俺の頭や背中を優しく撫でてくれていた。
「あなだを奴隷から解放しまずっ」
『どれいをかいほうした』
えぐえぐと泣きながら奴隷解除を願えば、蛍光緑の文字が視界を流れる。
青年は『奴隷』という身分から解放されたようだった。
「ありがとう……いいの?」
「いいんでずっ、あなだが俺の奴隷である必要はありまぜん、今までのぶんじ…幸せになってぐだだいぃっ…」
気を抜けば出てくる涙をこらえ、ぐしょぐしょの顔を拳で拭きながら、青年の幸せを願う。
「そうですか……では私の幸せのために、私と結婚してもらえませんか?」
…………は…??
「命を助けてくれた恩人の君を愛してしまいました、私の残りの一生を捧げたい」
「は?え?……は??」
「私の幸せのために、どうか断らないで」
優しく抱きしめられて髪に額に頬に、ついばむように口づけられていく。
なんだこの急展開?理解できないうちに、青年はどんどん進んでいくようだ。
「ひろき、ひろき……意識を取り戻して、初めて君を目にした瞬間、恋に落ちていました」
優しい優しいキスの合間に、青年は甘くささやく。
「奴隷として生きてきた3年間、この身体はたくさんの手で汚され穢れています。こんな私はお嫌ですか?」
合わせた視線に眉を下げた泣きそうな顔した青年が映る。
長い金髪が揺れている、映画の俳優さんみたいに綺麗な顔、色の薄いグレーの瞳に驚いた顔の俺が写り込んでいる。
俺は息をのんで、自分の立場を思い出した。
ここはおそらく異世界、レベルは1…あれレベル3になってる、で所持金は47ギルの俺。
荷物は布袋ひとつとこん棒のみだ。
俺の方こそ嫌がられるのではと、全てを話せば。
「ならば一刻も早く結婚しましょう」
逆に一層強く押されてしまった。
えぇっ、で、でもっ、俺男だよ??
「知っています、かわいいひと。継ぐ家もなければ、子もいらない。私が欲しいのはひろきだけです」
少し掠れた甘い、あまーい声が耳元でささやく。
俺はさっきのが初めてのキスで、これが2回目のキスで……って、えぇぇ!
いつの間にかベッドに移動し、いつの間にかキスで蕩けさせられ、いつの間にか裸に剥かれ、いつの間にか解された俺は、やはりいつの間にか青年を体内に受け入れて喘いでいた。
「は、初めてだから優しくしてぇ……」
恥ずかしくも初心者であることを晒せば、痛みなど絶対に感じさせません、と返されて。
正面からゆるゆると繋がった身体を揺すられて、初めてなのに感じまくって喘いでいる俺。
すごい、すごすぎる……と吐く息に乗せて言えば、嬉しそうにフロウと呼んでと言われた。
「フロウ…フロウ……こんな…初めてなのに、すごく気持ちい…」
「あぁひろき、なんてかわいらしい……愛しています」
「フロウ…ッ!…んんっ!」
初めての快楽に蕩けている俺、もう何回もイキすぎて透明の液すら出ないのに、入れられた中は気持ちよくてどうしようもない。
力も入らないのに、フロウをもっと感じていたい。
「ひろきをもっと愛したい、ね、もっと気持ちよくしてあげますから結婚してください」
「……ぁっ…ああっ…」
腹をくっつけるように密着し耳元で愛をささやかれ、ゆったりと奥を掻き混ぜられて、俺の背が逃げるように浮き上がる。
「ね、うんと言って、ひろき」
その腰を両手で掴んで律動を始めたフロウに、俺は脳みそごと揺さぶられるような快感に吠える。
「うん…うんっ…っんんっっ!」
もう何もわからなくて、ただただフロウを感じていたくて。
「嬉しい…嬉しい…愛しています、ひろきっ、ひろきっ!」
「あぁぁぁあんんんっっ!!!」
激しく打ちつける音が響き、水音が鳴りやまず、誰かが叫んだ、と思ったら俺の喉から出た声だった。
事後の余韻に火照った身体をフロウに濡れた布で清められながら、俺は現在賢者タイムだ。
恥ずかしい、自分でどうにかしたいが、指一本動かせない。
身体を拭いて水を飲ませてくれたフロウに、ありがとうと言おうとしたら喉が枯れて声も出なかった。
フロウは嬉しそうに俺の世話をし、結婚の証明を受けに、あとで一緒に教会へ行きましょうねと微笑んでいる。
バーーーーンンッッ!!!とすごい音がして、どうやら隣の部屋の扉が開いて誰かが来たらしい。
俺たちはソファーのあった隣の部屋から寝室に移動してきている。
フロウが眉根をよせて、俺に布団をかけると額に優しくキスをして、少し待っていてと寝室を出て行った。
天蓋っていうんだっけ、ベッドの周りの布を下ろしていってくれたから、隣の部屋の声はあまり聞こえない。
「フロイラインーーーッッ!!無事であったか!!」
「無事じゃありませんよ、あなたの政敵……にかどわかされて奴隷落ち、……った3年間が、今日でようやく終わって、……愛する人と結婚の………くところです」
悲鳴と叫び声の合間に、家を襲撃、家名はく奪、今すぐ首を獲ってこい、というセリフが聞こえた。
ガヤガヤと人が増え、話がなされているようだ。
俺はそれを子守唄に眠りについた。
うん、どうせ今は身体を動かせないしな。
起きたよ、おはようございます?
あれ、レベルが8になっている。
何か身体が動かないよ?と思ったら背中からフロウに抱きしめられていました。
フロウの腕から抜け出してトイレに行こうと立ち上がったらヒザから崩れて歩けず、フロウに抱っこで連れて行ってもらいました。
全裸で抱っこよ。そんでおはようのチュッとか、俺もう恥ずかしぬ。
ここでレベルが9にアップしたわけ、わかる?俺の衝撃。
このレベルってもしかして、エロレベルなんじゃねーかって話。
フロウにレベルの話を聞いてみたんだけど、聞いたことがないって。
MPってあるからたぶん魔法も覚えられると思うんだけど、って聞いたら魔法なら教えられますよ、って言われた。
それからフロウが急に洋服持っていたからびっくりしたら、空間魔法だって教えられた。
あと、昨日この部屋に移動したのは転移魔法だって!
すごい、ぜひ教わりたい。鼻息荒く頼んだら魔力が少しだけ足りないようですね、って言われた。
マジックポイント23じゃダメみたい。
フロウのマジックポイントはいくつなのか聞いたら、魔力というのは数値では測れないものらしい。
「私の魔力が身体全体に行き渡っているとすると、ひろきの魔力は人差し指の先あたりに可愛らしく灯っていますよ」
フロウに優しい笑顔でそう言われた。
うん、フロウにまったく悪気がないのはわかってる。
レベルは上がってもHPもMPも数値変わってないんだけど、これどうなの。
朝かと思ったら、もう昼に近いらしくて肌触りのいい洋服を着せてもらってから、隣の部屋へ移動して運んできてもらった食事をふたりで食べた。
ひろきさえ良ければ、フロウの家族がいる部屋へ食後のお茶を飲みに行かないか、と誘われたので頷く。
俺はフロウに抱っこされていったよ、まだひとりで歩けない。
抱っこで階段を下りて、ドアを開けてくれた人に会釈をして部屋に入る。
ソファーに優しく降ろされて頭を撫でられて髪の毛にキスを落とされるところまでが、一連の流れ。
フロウの家族に生暖かい目で見守られていて、ここでまたレベルがひとつ上がったよ、やったね。
俺は真っ赤な顔だけど開き直って、はじめましての挨拶をした。
フロウの家族はお父さんとお兄さんだけだった。
お母さんはずいぶん前に亡くなったらしい。
お兄さんには婚約者がいて、フロウが戻ってきたのですぐにでも結婚をするそうだ。
フロウが攫われてから、お父さんもお兄さんもずっと探していて、婚約者さんを待たせていたみたい。
まさかフロイラインが、ずっと遠い国交のない国まで連れて行かれたとは、と震える声で話していた。
フロウにだって婚約者とかいたんじゃないのかな、だってどう見ても貴族って家だよね。
昨日は盛り上がってしまったけど、冷静になれば俺は男だし、この世界の人間じゃないし。
フロウはイケメンだし魔法もすごいし、じゃああの結婚話はなかったことに、ってなるんだろうなと思っていたら。
「ひろきくんの体調が心配だったので、こちらで教会の人に来てもらったよ」
「早速フロイラインとひろきくんの結婚の証明を済ませてしまおうか」
お父さんとお兄さんが促して、部屋の少し離れた椅子に掛けていた人が、立ち上がって近づいてきた。
「ではここにお名前を書いてください」
長くて青い服を着た教会の人が、テーブルの上に分厚い紙を広げて指さした場所に、フロウと俺がそれぞれ名前を書いた。
「結婚の証明をいたします」
教会の人がおごそかに呪文を唱えると、分厚い紙はキラキラ光って消えた。
『フロイライン=ヴァスコーネス=ヴィンクヴィストとけっこんしました
ヒロキ=ヴァスコーネス=ヴィンクヴィストとなまえがかわりました』
視界をいつもの蛍光緑の文字が流れていった。
あぁ俺結婚しちゃったんだ、ていうかフロウ名前長くね?俺覚えられるかな。
フロウのお父さんとお兄さんが俺たちの結婚を反対しないどころか、急がせた理由はちゃんとあった。
俺みたいに異世界からきた人間は落ち人と言われて、国を挙げて保護すべし、という約束があるらしい。
国に利益をもたらすとか、俺はできませんよ?何の能力も知識もありませんからと言ったら笑われた。
「そのようなこと、可愛らしいひろき殿は心配いりませんよ」
「兄上、ひろきは確かに可愛らしいですが、私の伴侶です」
「そうそう、落ち人様はその存在が幸福をもたらす、と伝えられておりまして」
つまり俺が生きているだけで、そのあたり一帯が幸せになるって話らしい。
あとフロウ、俺のことを別にどうとも思っていないお兄さんを睨んじゃダメだ。
「私を束縛していたようなひどい人間に、ひろきが目を付けられなくて良かった」
フロウが俺を膝の上でぎゅうぎゅう抱きしめながら言う。
あー、あのむくんだ男のことね、確かに視線が舐めるみたいで気持ち悪かった。
半分崩壊した小屋に連れて行かれそうになったしな、と笑って話したら。
「……あいつ、二度と会いたくないと思っていたが、今から行って影すら残さず消し炭にしようか」
「すぐ楽にしてやることはないよ、フロイライン。生きていることを後悔させてやろう」
「すまん、二人とも、今朝すべて終わらせてしまった」
フロウとお兄さんが笑ったまま怒り、お父さんがそんな二人に頭を下げた。
あのむくんだ男は奴隷商人ではないので、他の奴隷はいなかったらしい。
じゃあ俺はフロウと出会えてラッキーだったんだな。
フロウは今まで大変な目にあったけど、俺が生きている限り幸せに生きような。
笑顔でフロウに告げて頬にチュッとしたら、俺のレベルがまたひとつ上がった。
なぜ夢のなかだとわかるかって、そのゲームは俺の両親が子供の時代に、流行ったものだからだ。
家のテレビとは違う画素の粗い四角い画面、そのなかで二頭身の王様らしき人物のセリフが文字として流れていく。
「おお勇者よ、たびだちのときがきた。
これをもってゆくがよい。
そなたのかつやくをきたいしているぞ」
『勇者は50Gをてにいれた!』
「ではゆくがよい勇者よ!」
ちょっと待てよ、勇者に渡すにしては50Gって少なくねぇ?
何の説明もないんだけど、それで活躍を期待ってどういうことよ?
画面のなかの王様に笑って突っ込みを入れながら、夢のなかの俺は勇者の出て行ったあとの王様とそばにいたもう一人のやりとりを見ていた。
あれ?何で勇者目線じゃねーの、このゲーム。
「……ふぅ、勇者気取りがどこへ行くのやらだの、大臣」
「ですな……勇者を名乗れば王公認で国を出られるとはいえ、毎回自称勇者に50G渡すのも国庫の痛手ですわい。何しろ数が数だけに……」
どういうことだ?聞いてはいけない話を聞いてしまったような気が……そこで俺は意識を手放した。
俺は目を覚まし、違和感をおぼえて目をつぶり、もう一度目を開けてみる。
目をキョロキョロさせても、視界の右上の方に半透明の枠が見えて緑の蛍光色で『50G』と書いてある。
視界の左上の方に同じ半透明の枠と緑の蛍光色。
『ゆ:ひろき
HP 38
MP 23
Lv 1 』
そして俺の家じゃない知らない場所だ。
はああぁぁぁっっ!?
ベッドから見える天井は見覚えのない木、身体を起こしてみると壁も床も同じ木に見える。
ベージュのゴワゴワした手触りのシャツと、グレーのズボンを履いている。
毛糸編みのような分厚い靴下も履いているので、ベッドの足元にあったブーツに足を入れてみる。
うん、サイズはぴったり。
部屋のなかにはベッドと木のタンスしかない、とりあえずタンスを開けると布袋と、こん棒が入っていた。
歪んだガラス窓から外を見れば、石畳に木の家が立ち並ぶ見知らぬ街並み。
ひとまずベッドに腰掛け、どうやら夢で見ていたRPGの世界らしいと思い至る。
RPGということはステータスも開けるはずだ、俺はステータスを確認することにした。
結果からいうと、ステータス枠が出現することはなかった。
心の中でステータスオープンと唱えてみたり、声に出してみたり身体を動かしてみたり。
色々試したが無理だった。
ステータスの確認は諦めてタンスから布袋とこん棒を取り出し、木のドアを開けて部屋を出る。
同じようなドアがいくつか並ぶ廊下を歩き、きしむ階段を降りるとカウンターの中から女将さんが声をかけてきた。
「おはようございます。朝食をどうぞ」
「あ…おはようございます。いただきます、ありがとうございます」
カウンターに乗せられた木のトレイには、湯気のたつスープの椀、飲み物の入った木のカップとパンが乗っていた。
カウンター前に置かれた椅子に腰掛けて、ありがたくいただく。
言葉は通じるんだなぁ、などと考えながら固いパンをちぎった。
口に入れた黒っぽいパンは酸っぱくて、あわててスープで流し込む。
バターとかジャムってないですか?と聞いたら、女将さんに変な顔で見られた。
あ、ないんですね、ならいいです、と飲み物のカップを確認したら水だった。
ミルクってないですか?と聞いたら、あっても別料金だよと答えがきた。
「どこの宿も朝食はこんなもんだろ?あんたそんな恰好してどこのお坊ちゃまだい」
「すみません……この辺に慣れていなくて」
苦笑いして素直に言ったのだが、愛想のない女将さんは肩をすくめてカウンターの向こうに消えてしまった。
朝食を終えて、カウンターの向こうにお礼を言って宿を出る。
出る前に確認したカウンターの上には、小さな木彫りで8Gとあった。
まだ夢なのか現実なのかわからないが、お金がなければ宿にも泊まれない。
貨幣の価値もわからないので、街中を歩いて調べることにする。
車は走れないような幅の石畳、その道の両脇に二階や三階建ての木の家がすき間なく建っている。
そんな道をしばらく歩けば、やがて石畳の広場に出た。
広場の中心に石で囲った小さな噴水があり、そこから流れる水が石で作られた三つの水路に分かれていく。
噴水そばのベンチに座って見ていると、木の桶を持った人がやってきて噴水の水を汲んでいった。
通行人がきては腰につけている木のカップを外し、噴水の水を入れて飲むとカップを腰に戻し歩いていく。
噴水とベンチの周りには、ぐるりと屋台が並んでいる。
値段を確認しようと覗いていくと、朝早いので開店準備前の屋台が多いようだ。
唯一開いていた屋台はパン屋で、宿で食べたのと同じ黒いパンだったが、つぶれたサッカーボールみたいな大きさで、びっくりして店主に値段を聞いた。
「ひとつ1ギルだ」
いかつい顔の店主に買うのか買わないのか、と目で問われる。
「朝食は済ませたので、またきます」
と断って歩き出す。
貨幣の単位はギルのようだ、先ほどの宿が一泊で8ギル、パンが1ギル。
積み上げられた小さなカゴに入れた生きた鳥が元気に鳴いている。
果物やハムらしきものを木箱に積んだ台車を引いて、声を上げながら人々が行きかう。
屋台が動き出すまで、もう少し時間がかかりそうだ。それまで街中を歩いてみることにする。
屋台と店ではまた値段も変わってくるだろう、そこも後で確認するとして、三つに分かれた水路の一つを辿ってみることにした。
一つ目の水路に近い石畳の道は、木の家の一階部分が店舗になっているようだ。
個人商店なのだろう、軒下に色を塗られた木彫りの看板がかかっている家が多い。
噴水に近い店の方が格子窓にガラスがはめられ、店内が覗けるようになっており、店ごとにグラスや洋服が綺麗にディスプレイされていた。
逆に噴水から離れれば、木の建物自体も小さくて古びていたり粗末になるようだ。
二つ目の水路の道沿いは、宿が多かった。
やはり噴水に近い方が立派な建物があり高級宿、離れれば建物が粗末になっていくから、宿の質も値段も下がるのだろう。
噴水広場からずいぶん歩いた場所では、夜の店が多いのか安っぽく飾りつけられた木彫りの看板が立ち並んでいた。
こんな朝にまだ仕事中なのか、お姉さんのお仕事の声が聞こえる建物もある。
高校生で彼女すらいたことのない俺には、まだ早い、そそくさと移動することにした。
三つ目の水路の道沿いは、食べ物関係が多いようだ。
レストラン、カフェ、食堂、色とりどりの食べ物の絵が看板に彫られている。
こちらもまだ開店前のようで、看板を眺めながら歩いていく。
噴水からだいぶ離れた街の端あたりだろうか、民家なのか粗末な木の小屋がひしめいている。
いつからか石畳はなくなって、代わりに踏み固められた土が薄埃をたてていた。
石造りだった水路は、途切れてなくなっていた、地面に染み込んでいくのだろう。
街の境界線とか外壁とかは、ないんだな……
だんだんと建物らしきものがなくなり、地面には草が生えている。
遠くを見れば林だか森だかが見え、青草が地面を覆っており道らしきものは見えない。
街から外れて危険な生き物と遭遇でもしたら怖いから、戻ろう。
一応右手にこん棒を握りしめながら、俺は街の中心の方へ向かって歩き出した。
ぽつぽつと建物が増え、土が見え草がなくなってくる。
こん棒を腰ひもに戻しながら、どうしたものか考える。
冒険者ギルドとかあるのかな、冒険者登録をして仲間を増やして依頼を受けて、ってやっぱりファンタジーの定番だしな。
お金を稼がなければいけないし、と歩きながら考えていた俺は何かにつまづいた。
「……っ?うわっ、すみませ…」
転びかけてこらえた俺はとっさに誤りかけて、絶句した。
土の地面にうつ伏せになった人が転がっていた。
ま、まさか、し…死んでる?
「……っ!!大丈夫ですかっ!」
伸ばされた手の先がわずかに動いたのを見て、思わず俺はしゃがんで声をかけていた。
肩にそっと手をかけても、その人は反応せず動かない。
陽が出てきたのに触れた身体はずいぶんと冷たい。
「うちの奴隷が何か??」
頭の上からしゃがれた低い声が聞こえた。
奴隷?聞きなれない単語にびくりとする。
顔を上げれば顔色の悪いむくんだ男が、値踏みするように俺を見下ろしていた。
その視線がねっとりした感じでちょっと気持ち悪くて、すぐに立ち上がり「別に何も」と答える。
「奴隷が入用ならそんな死にかけじゃなく、もっとまともなのがいるよ」
俺をじっとり足先から頭まで眺めて、崩れかけの木の小屋へ呼び込もうとする、気持ち悪いな!
さっさと立ち去りたかったが、死にかけと聞いて気になる。
「死にかけって、この人は病気なのか?」
「……はっ、病気もあるかもな。そいつは生意気な、使えない、ただのクズ奴隷だ。転がしときゃそのうちくたばるだろ」
俺から一瞬だけ地面に倒れた人に視線を向けて、憎々しげにペッとつばをはく。
なんだなんだ、ここは一体どういう世界だ?奴隷がいてほっといて死ぬとか、怖すぎるんだけど。
俺が嫌な顔をしたのを見たのだろう、視線を俺に戻してニヤリと口を歪めた男が言った。
「こいつの値段はたったの3ギルだ。兄さんがこいつを買うってんなら、こいつだって死なずにすむだろうぜ」
「よし買った」
男がまいどあり、と言うと視界の右上の数字が47Gになった。
『どれいをてにいれた』
蛍光緑の文字が視界を流れていく。
金のやり取りが終わったからか、男は奴隷の首から首輪を外すとさっさと立ち去ってしまい、倒れた人と俺は土埃のなか残された。
思わず買ってしまった、奴隷。この世界で初めてのお買い物が死にかけた奴隷だよ、大丈夫かな俺。
とりあえずこの人どうしよう……。
俺よりもガタイのいい奴隷さんを、よいしょとひっくり返した。
土がまぶされた髪の毛はもつれており元が何色か不明だが、けっこう長い。
顔も身体も暴力をふるわれたのか、肌は腫れて紫色や茶色になっている。
風呂になんて入っていないからだろうか、すえたような腐ったような臭いがする。
股の部分がかろうじて隠れる布を巻いているんだけど、それだって灰色か茶色か元の色なんてわからないボロ布だ。
抱え上げる腕力はないから、両肩の下に手を入れて腰まで持ち上げる。
足は引きずるけど、そのままずるずると移動して、壊れかけの建物の影におさまった。
ここならひとまず、通りからは見られることもないだろう。
奴隷さんを下ろして、肩に斜め掛けしていた布袋に手を入れる。
宿の部屋で確認しておいて良かったよ、布袋には『薬草:特級』というのが入っていたのだ。
薬草をひとつ取り出してみると、飴のように小さく丸められていた。
水もないけど仕方ないだろう、と奴隷さんの口に入れてみようとして、俺は困った。
奴隷さん意識ないのに口をがっつり閉じている、奥歯を噛みしめているんだろう、飴を入れようにも開かない歯がそれを許さない。
授業で習った人工呼吸を思い出し、気道確保だと首を持ち下顎を上向かせて口を開けさせる。
気道を確保して、はたと思い至る。
ここに飴みたいな固形物を入れて、果たしてこの奴隷さん飲み込めるか?
たぶん、無理。下手したら気道につまらせて死ぬだろう。
んー、と10秒くらい俺は悩んだ。
だって初めてだからね、これがファーストキスだよ。
だけど人の命には代えられないんだ。
ええぃままよ、とそれを口に入れてモグモグした。
唾液と十分混ざってドロリとした液体を、奴隷さんの口に少しだけ流し込む。
たった少しの液体を、わずかに喉が動いてごくんと飲み込むのが見てとれた。
同じ要領で口づけて、自分の舌で少しずつ液体を送り出し、飲ませていく。
これは治療、これは治療と自分に言い聞かせながら奴隷さんに何度も口づける。
薬草が効いて多少回復したのか、薄っすら目を開けた奴隷さんが、液体を届ける俺の舌ごと舐めて吸った。
おいおい、いくら回復したいって、俺の舌ごと舐め回すな、こっちはキス初心者だ。
口の中の液体が少なくなって、もういいだろうと口を離そうとしたとき。
奴隷さんがひと言、浄化とつぶやくと一瞬キラキラッと光った。
すべては一瞬だった。
もつれていた髪の毛がサラサラの金髪に変わった。
汚れが消えた股を覆う布は使い古された緑色で、白い肌が露出している。
そして鼻をつくような臭いも、なくなっていた。
今のが何だったのか考えるより先に、奴隷さんの手が俺の後頭部へまわって、がっちりホールドされた。
残りの薬草まで絞り取ろうとしているのか、奴隷さんの舌が俺の口の中で大暴れだ。
前歯の裏側をすっと撫でるように舐められて、舌を強く吸われる。
上顎をべろりと奥まで舐めてから、舌を絡めて絡めて絡まってから、また吸われた。
も、もう薬草は口の中に残ってないよ!
ファーストキスがこんな大人のキッスで、俺はよくわかんないけど、息もはぁはぁしてドロドロに溶けそうだ。
と思っていたら、ようやく離れたと思った唇がまた近づいてきて、口の端っこを舐められた。
たぶん赤い顔して息も荒い俺を、微笑んで見ている大人の男のひと。
『薬草:特級』スゲーな!
さっきまで意識なくて傷だらけのボロボロだった奴隷さんが、キラッキラのイケメンに生まれ変わっていた。
スッと立ち上がってどこからか取り出した洋服を素早く身にまとい、笑顔の奴隷さんは俺に手を差し伸べた。
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「ここは危険ですから移動します」
少し掠れた声がそう告げると視界が白くなって、えっと思った次の瞬間には、知らない部屋のなかにいた。
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泣いているあいだ、奴隷さんは俺の頭や背中を優しく撫でてくれていた。
「あなだを奴隷から解放しまずっ」
『どれいをかいほうした』
えぐえぐと泣きながら奴隷解除を願えば、蛍光緑の文字が視界を流れる。
青年は『奴隷』という身分から解放されたようだった。
「ありがとう……いいの?」
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「私の幸せのために、どうか断らないで」
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フロウは嬉しそうに俺の世話をし、結婚の証明を受けに、あとで一緒に教会へ行きましょうねと微笑んでいる。
バーーーーンンッッ!!!とすごい音がして、どうやら隣の部屋の扉が開いて誰かが来たらしい。
俺たちはソファーのあった隣の部屋から寝室に移動してきている。
フロウが眉根をよせて、俺に布団をかけると額に優しくキスをして、少し待っていてと寝室を出て行った。
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「フロイラインーーーッッ!!無事であったか!!」
「無事じゃありませんよ、あなたの政敵……にかどわかされて奴隷落ち、……った3年間が、今日でようやく終わって、……愛する人と結婚の………くところです」
悲鳴と叫び声の合間に、家を襲撃、家名はく奪、今すぐ首を獲ってこい、というセリフが聞こえた。
ガヤガヤと人が増え、話がなされているようだ。
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うん、どうせ今は身体を動かせないしな。
起きたよ、おはようございます?
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何か身体が動かないよ?と思ったら背中からフロウに抱きしめられていました。
フロウの腕から抜け出してトイレに行こうと立ち上がったらヒザから崩れて歩けず、フロウに抱っこで連れて行ってもらいました。
全裸で抱っこよ。そんでおはようのチュッとか、俺もう恥ずかしぬ。
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このレベルってもしかして、エロレベルなんじゃねーかって話。
フロウにレベルの話を聞いてみたんだけど、聞いたことがないって。
MPってあるからたぶん魔法も覚えられると思うんだけど、って聞いたら魔法なら教えられますよ、って言われた。
それからフロウが急に洋服持っていたからびっくりしたら、空間魔法だって教えられた。
あと、昨日この部屋に移動したのは転移魔法だって!
すごい、ぜひ教わりたい。鼻息荒く頼んだら魔力が少しだけ足りないようですね、って言われた。
マジックポイント23じゃダメみたい。
フロウのマジックポイントはいくつなのか聞いたら、魔力というのは数値では測れないものらしい。
「私の魔力が身体全体に行き渡っているとすると、ひろきの魔力は人差し指の先あたりに可愛らしく灯っていますよ」
フロウに優しい笑顔でそう言われた。
うん、フロウにまったく悪気がないのはわかってる。
レベルは上がってもHPもMPも数値変わってないんだけど、これどうなの。
朝かと思ったら、もう昼に近いらしくて肌触りのいい洋服を着せてもらってから、隣の部屋へ移動して運んできてもらった食事をふたりで食べた。
ひろきさえ良ければ、フロウの家族がいる部屋へ食後のお茶を飲みに行かないか、と誘われたので頷く。
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抱っこで階段を下りて、ドアを開けてくれた人に会釈をして部屋に入る。
ソファーに優しく降ろされて頭を撫でられて髪の毛にキスを落とされるところまでが、一連の流れ。
フロウの家族に生暖かい目で見守られていて、ここでまたレベルがひとつ上がったよ、やったね。
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フロウの家族はお父さんとお兄さんだけだった。
お母さんはずいぶん前に亡くなったらしい。
お兄さんには婚約者がいて、フロウが戻ってきたのですぐにでも結婚をするそうだ。
フロウが攫われてから、お父さんもお兄さんもずっと探していて、婚約者さんを待たせていたみたい。
まさかフロイラインが、ずっと遠い国交のない国まで連れて行かれたとは、と震える声で話していた。
フロウにだって婚約者とかいたんじゃないのかな、だってどう見ても貴族って家だよね。
昨日は盛り上がってしまったけど、冷静になれば俺は男だし、この世界の人間じゃないし。
フロウはイケメンだし魔法もすごいし、じゃああの結婚話はなかったことに、ってなるんだろうなと思っていたら。
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「早速フロイラインとひろきくんの結婚の証明を済ませてしまおうか」
お父さんとお兄さんが促して、部屋の少し離れた椅子に掛けていた人が、立ち上がって近づいてきた。
「ではここにお名前を書いてください」
長くて青い服を着た教会の人が、テーブルの上に分厚い紙を広げて指さした場所に、フロウと俺がそれぞれ名前を書いた。
「結婚の証明をいたします」
教会の人がおごそかに呪文を唱えると、分厚い紙はキラキラ光って消えた。
『フロイライン=ヴァスコーネス=ヴィンクヴィストとけっこんしました
ヒロキ=ヴァスコーネス=ヴィンクヴィストとなまえがかわりました』
視界をいつもの蛍光緑の文字が流れていった。
あぁ俺結婚しちゃったんだ、ていうかフロウ名前長くね?俺覚えられるかな。
フロウのお父さんとお兄さんが俺たちの結婚を反対しないどころか、急がせた理由はちゃんとあった。
俺みたいに異世界からきた人間は落ち人と言われて、国を挙げて保護すべし、という約束があるらしい。
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「そのようなこと、可愛らしいひろき殿は心配いりませんよ」
「兄上、ひろきは確かに可愛らしいですが、私の伴侶です」
「そうそう、落ち人様はその存在が幸福をもたらす、と伝えられておりまして」
つまり俺が生きているだけで、そのあたり一帯が幸せになるって話らしい。
あとフロウ、俺のことを別にどうとも思っていないお兄さんを睨んじゃダメだ。
「私を束縛していたようなひどい人間に、ひろきが目を付けられなくて良かった」
フロウが俺を膝の上でぎゅうぎゅう抱きしめながら言う。
あー、あのむくんだ男のことね、確かに視線が舐めるみたいで気持ち悪かった。
半分崩壊した小屋に連れて行かれそうになったしな、と笑って話したら。
「……あいつ、二度と会いたくないと思っていたが、今から行って影すら残さず消し炭にしようか」
「すぐ楽にしてやることはないよ、フロイライン。生きていることを後悔させてやろう」
「すまん、二人とも、今朝すべて終わらせてしまった」
フロウとお兄さんが笑ったまま怒り、お父さんがそんな二人に頭を下げた。
あのむくんだ男は奴隷商人ではないので、他の奴隷はいなかったらしい。
じゃあ俺はフロウと出会えてラッキーだったんだな。
フロウは今まで大変な目にあったけど、俺が生きている限り幸せに生きような。
笑顔でフロウに告げて頬にチュッとしたら、俺のレベルがまたひとつ上がった。
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