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5.リナ姫の忠告
しおりを挟む『チチ?』
エサを食べ終えた小鳥の声に、ジル姫がハッと我にかえった……ちょうどその時です。
キィ、と庭園の入り口の扉が開く音が、聞こえてきました。
「ライト様だわ」
ジル姫は高鳴る胸の鼓動の意味に、まだ気づいていません。
騎士ライトが来たものだと思い、笑顔で振り向きます。
しかし、
「お久しぶりですね、ジル様」
庭園へとやって来たのは、意外な人物……リナ姫だったのです。
兄亡き今、よほどの理由がない限り、この庭園に訪れるのは騎士ライトだけのはず。
リナ姫はいつもと変わらず、美しいドレスを身にまとい、着飾っていました。
どうやら、急ぎの用事ではなさそうです。
「リナ? あなたがここへ来るなんて珍しいですね。紅茶でも入れ……」
「今日は、ジル様にお願いがあって参りました」
ジル姫の言葉を遮って、リナ姫は強い口調でそんな事を言いました。
「……お願い?」
あまりに珍しい事に、ジル姫は少々驚きます。
「ライト様はお優しい方でしょう? 疲れているはずなのに、嫌な顔一つせず、毎日毎日あなたに会いに来るなんて」
リナ姫は美しく咲いている一輪の花に触れながら、話し始めます。
「えぇ……そうですね」
何が言いたいのか。
ジル姫は何となく気づきながらも、ただ小さく頷きます。
すると。
ーークシャ。
リナ姫は、触れていた一輪の花を、その手で握りつぶします。
手の平からハラハラと散ってゆく花びらを眺めている表情は……あまりに、冷たいものでした。
「……リナ?」
「あなたはおじい様だけでなく、ライト様の人生まで振り回すおつもりですか?」
ジル姫はビクリと体を震わせ、言葉を失います。
「見てください、この脆い花を」
自分がたった今握りつぶした花の残骸を、リナ姫は指差します。
そして、
「この花のように、私たちの人生は一瞬で散りゆく儚いもの。
あなたには分からないのかもしれませんが」
ジル姫に歩み寄り、冷たい瞳で見つめます。
ジル姫は真っ青になり、体を小さく震えさせていました。
「……ライト様は未来ある騎士様です。どうか、無駄な事のために大切な時間を奪わないであげて下さい」
それだけを告げると、リナ姫は颯爽と庭園をあとにしました。
***
……呪われたジル姫のことは、昔から気味が悪いと感じていました。
それだけではありません。
誰よりも美しいその姿、優しさあふれるその心が、ずっと疎ましくて仕方がなかったのです。
そんなジル姫に、何年も前から恋心を抱いていた騎士ライトが……惹かれている?
そう感じたリナ姫は、いてもたってもいられなかったのです。
「……リナ姫? ジル姫のところへ行かれてたのですか?」
城へと戻る途中。
騎士ライトがリナ姫に気づき、声をかけました。
きっと、これから庭園に向かうのでしょう。
「えぇ、久しぶりにお話をしたくて」
にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべ、いつものようにスッと、手を差し出しました。
すると、やはりいつものように、騎士ライトはその手に挨拶のキスをおとします。
しかし……リナ姫の表情は、晴れません。
(何故、私にはあんな表情を向けて下さらないの?)
それは、騎士ライトが小鳥を連れて行った日……ジル姫に向けられた、愛しそうな表情の事です。
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