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エピローグ
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ーートントン
部屋をノックする音に、ジルはドキリと心臓が高鳴りました。
それもそのはず。
もうとっくに、日付けが変わっている時間なのです。
二人が港町に戻ってきて宿屋へと戻ると、女主人……魔女が、イリアやライアンと共に、笑顔で出迎えてくれました。
その後はもちろん、ライアンたちに捕まり、延々と説教をされ
ようやく自室でシャワーを終えて、一息ついたところです。
「もう寝てんのか?」
ノックしたのは、どうやらシェイドのようです。
「お、起きて、るけど」
「入るぞ」
「え、ちょ、ちょっと待って」
相変わらず、ジルは部屋に鍵をかけていないので、シェイドはスタスタと部屋へと入ってきました。
ジルは慌てて毛布にくるまります。
そんなジルに、シェイドは呆れた表情を浮かべました。
「……おい、何あからさまに警戒してんだよ」
「警戒なんて、してないわ……。あの、パジャマ姿だから……」
「ふーん」
ぷっ、とシェイドはふきだしてしまいます。
誰がどう見ても、警戒しているようにしか見えないからでしょう。
「……夜這いじゃねぇけど?」
「! そ、そんなつもりじゃ……」
真っ赤になってしまうジルに構わず、シェイドはベッドに腰掛けました。
そして、
「お前に、聞いてほしい話がある」
「……話?」
急に真剣な表情で、ポツリとシェイドが言いました。
ジルは黙って隣に座ります。
「…….ほんとは、ずっとお前の事探してた。オレの旅の目的だった」
「……シェイド?」
突然の言葉に、ジルは意味が理解できずキョトンとしてしまいます。
無理もありません。
……ずっと、探していた。
初めて会った時、ジルのことは知らないと言っていたというのに、どういうことでしょうか。
シェイドは話を続けます。
「ガキん時から、何度も夢で見てた。まぁ、前世の記憶だなんて事は分からなかったけどな」
「…………」
「お前の名前も分かんねぇし、場所だってあやふやだし。
……ただ、約束だけは、覚えてた」
視線が合い
……胸が、締め付けられました。
「必ず探し出して……お前を愛する、って約束」
その言葉を聞いた瞬間
ジルの目から、涙が一筋流れました。
「……覚えて、くれていたの……?」
そんなジルの涙を、シェイドは少し困った表情を浮かべながら、指で拭います。
「……あぁ。
でもお前と出逢って、惹かれてる自分を認めたくなかったから、冷たくした」
「……どうして?」
探していたのに、惹かれるのを認めたくないなんて、ジルにはよく分かりません。
すると、言いにくい理由なのか……シェイドは一瞬、黙ってしまいました。
しかし
ジッ、と見つめるジルの視線に観念したのか……ポツリポツリ、と話し出します。
自分の、過去の話を。
「親父は生まれる前に蒸発して、母親はガキん時にオレを捨てた。
物心ついた時から、生きのびるために何でもしてきたな」
「…………」
「誰からも必要とされなかったし、必要ともしなかった。
だから、お前も前世のライトの姿ばかり重ねて……結局同じだと思った」
……そう。
ジルも“騎士ライト”を重ねてしか、シェイドを見ていませんでした。
やはり誰からも必要とされていないと、シェイドは感じたのです。
「バカにすんなって、思った。オレはオレだ。誰の代わりでもないってな。
前世なんかに、振り回されるのはごめんだって思った」
ふと……ジルは思い出します。
何度か見た、シェイドの悲しげな表情を。
『……まぁ、これで分かっただろ。あんたが愛した男はもうどこにもいない。それが、現実だ』
『やっ……違うわ……! ライト様はちゃんとここに……』
『……オレは、ライトじゃない。シェイドだ』
……ジルは、無意識のうちにシェイドを傷つけていたのです。
「けど……」
シェイドは、ジルに目をやりました。
そしてフッと、笑みをこぼします。
「……まぁ、気づいたら、惚れてたな。そう気づいたら、バカらしくなった」
思わずジルは目をそらし、うつむいてしまいました。
頬は赤く染まってしまっています。
「私、私は確かに始めはライト様と重ねて見てた。けど、今は違う」
「分かってる」
「え?」
思わずパッと顔をあげ、シェイドを見ると、
「ん……」
突然、唇を、奪われました。
一度だけシェイドにキスされた時は……熱く、そして強引なものでした。
けれど今のキスは……。
「……やっぱ、前言撤回」
「……え……?」
シェイドとのキスにうっとりとしてしまっていたジルは、その言葉にキョトンとしてしまいます。
何のことか分からずにシェイドを見ると……
ーードサ、
ベッドに、押し倒されてしまいました。
「え? あ、あの、夜這いじゃ、ないって」
「黙れって」
そう言うと、シェイドは再びジルの唇を自分の唇でふさぎました。
そして……。
永遠の誓い
―fin―
special thanks!
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