永遠の誓い

rui

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番外編

過去の記憶1

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「泥棒ー!! 誰かあのクソガキを捕まえてくれぇ!!」


とある、寂れた小さな小さな町で。

辺りが薄暗くなったころ、突然、食料品店の主人の怒鳴り声が町中に響き渡りました。


「くそ……またあのガキだ! 町から追い出すしかねぇ」


村中を探し回った食料品店の主人ですが、どうやら泥棒を見失ってしまったようです。
そしてブツブツと文句を言いながら、諦めて店へと戻っていきました。


「…………」


そんな主人を、建物の陰から見ている一人の少年がいます。
手にはいくつかの缶詰やパンといった、わずかな食べ物。


そうです。
この少年が、食料品店に入った泥棒……

幼い頃の、シェイドでした。


「--シェイド、やるじゃん! みんな、食べ物だぞ!」


町外れにある、廃屋。

そこに戻ったシェイドを出迎えたのは、三人の仲間たちです。

シェイドのように親に捨てられた子ども、親に反発して家出した子ども。
それぞれの理由があり、盗みに手をそめながら生きているのです。


「これだけじゃ足りね……腹減ったなぁ……」


仲間の一人の少年がゴロンと床に転がり、ポツリとつぶやきました。

無理もないでしょう。
盗んだ食べ物はほんの少し。
四人で分ければ、気休めにしかなりません。

シェイドが黙ってパンを食べてると、リーダー格の体格のいい金髪の少年がそれを取り上げました。
そしてパンをかじりながら、命令します。


「おいシェイド、もっと盗んで来い」
「……今日はもう無理だろ」


二度も続けて盗みに行くなんて、捕まりに行くようなものです。

シェイドが無愛想に断ると


ーーガッ、


リーダーの少年が、シェイドの体を足で強く蹴りました。
シェイドが睨みつけると、今度は胸ぐらを掴まれます。


「なんだ、その目は? お前が一番年下で弱いんだ。言うこと聞かねぇならぶっ殺すぞ!」
「ちょっとやめなよ、エド」


仲間の一人の少女が、呆れた表情を浮かべながら声をかけました。
短い黒髪の少女は、缶詰を食べながら続けて言います。


「シェイドはまだ九才でしょ……。かわいそうじゃん」
「お前はいつもシェイドに甘いんだよ、ローズ」


ローズはため息をつくと、それ以上何も言いませんでした。
相手にしてられないのでしょう。

エドは舌打ちすると、シェイドの服を離して一人廃屋から出ていきました。


「お前もさ、もうちょっと愛想よくしたらいいのに……。オレら、仲間だろ」
「マシューの言う通りよ」


二人がそう声をかけますが、シェイドは黙ってその場に寝転がりました。
そんなシェイドに、二人は顔を見合わせてため息をつきます。

いつもの光景でした。


シェイドは……
生まれてすぐに、父親が蒸発していなくなりました。
そして七才になった頃、母親もいなくなりました。

後から聞いた話によると
母親は多額の借金を抱えており、若い男と夜逃げしたそうです。
幼いシェイドを、置いて。

ここは、貧しい町。
誰もシェイドを引き取ろうとはしませんでした。 

そんなシェイドに手を差し伸べてくれたのは、今の仲間……ローズたちだけだったのです。

……しかし
シェイドはローズたちに、心を開こうとはしません。
いいえ、開くのが怖いのです。


***

 
(……まただ)


長いまつげにパッチリとした大きな目、艶やかでふっくらとした桃色の唇……。
息をのむ美しさに、一瞬にして心を奪われる感覚……。


『……もしかして、あなたが……様ですか?』


ーーパチ、と
シェイドは、目を覚ましました。
目に映るのは、いつもの廃屋の天井です。


「……また、あの女の夢か」


ため息まじりに、シェイドはポツリとつぶやきました。

いつも見る、同じ女性の夢。

……もちろん
それが前世の夢だとは、今のシェイドに知る由もありません。
しかし、一つだけ分かっていることがありました。

それは
これが、ただの夢ではないということです。


「どうしたの?」


外の空気を吸おうと、廃屋から出たら
それに気づいたローズも、外へとやってきました。


「別に……」


そっけなく答えて、壁にもたれて星空を見上げると
なぜかローズも、隣に座ります。
そしてポツリと、言いました。


「ね、シェイド……。私たちは、ずっと仲間だよ。ううん、家族」
「…………」


エドとマシュー、そしてローズ。
もうじき十三才になる三人は、シェイドよりも先にこの暮らしから抜け出すのでしょう。
その時、シェイドはまた一人になるのでしょう。

そんな事を考えていると、


「絶対、何があっても一緒だよ。約束。シェイドのこと、親みたいに見捨てたりしないから」


ローズがニコッと明るい笑顔を浮かべ、シェイドの頭をなでました。


「……もう寝る」


シェイドはそう言うと、立ち上がって廃屋へと戻ります。
……ローズの言葉が嬉しくて、照れてしまったからです。

ふと、夢のことを思い出しました。


『……必ずあなたを探し出し、愛する事を誓います』


……あの約束をした女性は
今、どこかにいるのでしょうか。
約束を交わした自分のことを、待ち続けているのでしょうか。


「……バカらし」


そう。
あれは、夢の中での話。

シェイドはそう自分に言い聞かせ
再び薄いシーツに身をくるみ、眠りにつきました。

そして……

あっという間に、数年の月日が流れます。
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