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生意気な弟がいきなりキャラを変えてきて困っています!

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「おはよっ~お兄ちゃん!朝だよ!起きないと…キスするよ?」

…?誰だ?この声。いや…知っている声だ。いつもそばにいた声で…忘れるわけがない。

ハッとして目を開けると─────
生意気な弟の顔が目の前にあった。
チュッと音がなり目を見開くと───そこにはドアップに移った弟の姿───。

「あは!キスしちゃった!お兄ちゃんが早く起きないのが悪いんだよ!ねぇ?お兄ちゃん!」

──────はぁ?

おれは─────びっくりしずぎて死ぬかと思った。

おれ───日比谷 亮(ひびや とおる)。そんでもってさっきおれの頬にキスをかましたのが…おれの弟日比谷 勇太(ひびや ゆうた)。おれと勇太は双子だ。でおれの方が先に生まれた。
今は背も頭脳も何もかも弟の方が上だが…小さい頃はおれの方が上だった。だから…小さい頃は弟はおれを尊敬していた。いつも『お兄ちゃん!お兄ちゃん!』とおれの後を追っかけていた。それが…おれにとってもとても嬉しかった。…大切な弟だった。
だが…中学に上がったときから弟の様子が変わった。…もういきなりだ、いきなり…おれのことを『お兄ちゃん』ではなく『クソ兄貴』とよび嫌がらせをするようになった。その嫌がらせが…まぁ意味がわからない。パンツを隠したりおれのクラス写真で隣に写っていた女子を針でつついてビリビリにした。…意味わからん。ちなみにパンツはそのまま返してくれなかった。
学校では不良と絡んでいた。不良を引き連れていた弟はそりゃもう生徒、先生に怯えられていた。朝弟に会うと『クソ兄貴、今日も起きたのかよ。ハッなんで朝からこんな臭いやつと顔合わせなくちゃなんねぇんだよ!くそっほんと最悪っ…おはよう。』
と挨拶をしてくれる。…最後の一言でいいと思うんだが…。

おれの中学生活は散々だった。というのも…弟が学校で有名だったからだ。弟は不良の頂点にたっていた。その弟の兄であるおれ──それはもう恐れられてしまったわけだ。というか『日比谷兄弟には関わるな!』というレッテルが貼られてしまっていた。そしてクラスで浮いた。
弟は学校でよくおれに絡んだ。
『おい!クソ兄貴!教科書さっさと出せよ!てめぇの教科書しょうがねぇから借りてやるよ!』
『…友達いねぇのか?』
『それはてめぇだろうがぁクソ兄貴!さっさと出せ!!ひねりつぶすぞっゴラァっ!!』
と怒鳴ってきた。だが借りた後は
『…ボソッありがとな。』
と小さな声が聞こえた。だから…なんというか嫌いにはなれない。まぁ三年間友達ができなかったのは…半分以上弟のせいだとは思うが…落ち着いた中学生活を送れたことには感謝している。


弟はおれよりもっともっと上の高校にいけた
はずだ。なのに…おれと同じ高校を決めた。なぜだと聞くと『うるせぇ!!おれがどこの高校にいこうがおれの勝手だろうがぁ!死ねっ!!』
と言われてしまった。

───みたいなことがありおれは弟のことがよくわからなくなった。

そんなある日─────母さんがいった。

「これから兄弟二人で暮らしてね!」

「はぁっっ!!??」
おれはびっくりしてどういうことだと母さんに尋ねようとしたがそれより弟の反応がすごくて…弟に任せた。
「どういうことだ!!クソババアっ!!」
「クソババアなんて言う子に育てた覚えはありません!」

「……お母様。」

こいつ…母さんには弱いな。
「だからお父さんの会社の都合でお父さん東京に行かなきゃ行けなくなったの!でも私愛する夫を一人になんてできない!!だから─お父さんが東京にいる間、二人で暮らしてくれる?」
母さんはにこっとして笑う。───二人で暮らす…?
「はあっ!!?嫌だっつーの!!誰がこんなくっさい芋っぽい兄貴なんかと…、二人っきりっ…!!絶対反対だ、ボケェっ!!」
そう叫ぶ弟。…結構傷ついた。でも、いいやもう慣れたし。おれはめんどくさくなってゲームを始めた。
「もう決めたことなの!お金はちゃんと置いとくから!仕送りもするし毎日連絡するから!二人力を合わせて頑張って!」
「誰がこんなやつと力なんか合わせるか!!…ってクソ兄貴!ゲームなんかしてんじゃねぇっ!!」
…弟がうるさい…。

「てなわけで高校の入学式にはいけなくてごめんね!二人で仲良く学校にいくのよ!ファイト!」
「ファイトじゃねぇよ!!クソババアっ!」
弟の叫び声を聞きながら───おれは黙々とゲームをやり続けていた。
なんというか…めんどくささの方が勝っていた。

そして───高校にいく前日、弟の様子はどことなくおかしかった。そわそわしていて落ち着いていない様子だった。けど──声かけて怒鳴られるの嫌だし…面倒だなと思いほっといた。

そしたら──────高校の入学式、弟は変わってしまった。


「お兄ちゃん!朝だよ!ほら、見て、朝ご飯僕がつくったんだよ!」
『クソ兄貴!早く朝飯つくれよ!おれのために働けや!このクソがぁっ!!』

おれの予想…とは全然違っていた。

ちらっと机を見ると────そこには美味しそうなご飯、味噌汁、玉子焼が置かれていた。

「えへへ!ついはりきっちゃった!一緒に食べよう、お兄ちゃん!」
怖いっ…なに?こいつ、どうしたんだ…?
「えっと…勇太?」
「ん?食べないの?」
「──────食べます。」
おれは────考えるのを放置した。
「お兄ちゃん、高校楽しみだね!」
「────あぁ。」

つづく
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