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番外編 合コン

2話 合コンは…続く…やっぱ黎はモテるよな…はいはい、知ってた知ってた

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「はぁいっ、私メグっていいまぁす!よろしくでぇす!」

「私、さきでーす!」


──────いや、無理っ!!!

なにこれ!?
おれの前にはかわいらしい女の子が座っていた。あ、かわいいっ…♡と見ることで精一杯だ。これ以上、どうすればいいのか。

話すことも困難だっ…!
だって、おれこれまで女子と話したことなかったし!
話したとしたって一言二言だぞ!?
童貞なめんなよっ!!

「あ、おれは日比谷 亮(ひびや とおる)です…。…よ、よろしくお願いします…。」

「あー、照れてる?かわいいねぇ、君っ。」

キャハハっと女の子たちが笑う。
やめろっ!仕方がないだろ!!
女の子、ほんと、慣れないんだよ!
だからって男だって慣れてなんていないけどなっ!

それに比べて─────

「おれは 黎( れい)だ。高一だ。今日はよろしく頼む。」

黎はそういうとぺこりっと頭を丁寧に下げた。

「えっ、なに、めっちゃかっこよくない!?」

「てか、凄く固いんだけどwめっちゃうけるw」
「うけ…?」

黎はきょとーんとした顔で女の子たちの反応を見ていた。

「なにそのきょとーん顔。面白いっ!」
「ギャップありすぎでしょっ!」

あははっと笑う女の子たち。
そしてポケットからナイフを出そうとする黎。
黎、やめて、しまって!!

そして、予想通りの黎への女子たちの反応にギリギリと嫉妬の目線を向ける男子たち…。わぁっ…、なんかすごく帰りたくなった…。

「黎君ってめっちゃかっこいいよね?モテないの?」
「ん?かっこよくなんてない。
普通だと思っている。」
「えー、嘘ぉっ。」
「おれなんかより亮の方がかっこいい。」
「っ…ぶっ!?」

いきなりおれに飛んでくる言葉。黎っ…、やめてくれっ。

「…えー、亮君?」

女子たちは一斉におれの顔を見てくる。
やめて、くれ。本当に。

「おれはっ…えっと…」

そう戸惑っていると──

「注文のフライドポテトと唐揚げでーす。」

と店員の声が聞こえ、この話は流された。よかった…、本当に。




そして合コン?は続いた。

…やはり黎はすごいなと思った。
何がすごいのかというと…。

例えば…

「唐揚げおいしいっ。」
「もー、さき、そんなに食べると太るよぉ。」
「…?太ってなどいないだろう。
むしろ痩せていて心配になる。もっと食べた方がいい。」
「え、黎君っ…//」

といって女子たちの顔を真っ赤にさせたり

「それで、今日はこの服で来たんだけど…」
「あぁ、そうだな。この服はあんたのようなかわいい人に合っていると思う。とても…綺麗だな。」
「え、黎君…それ、お世辞でしょっ!」
「…?なにがお世辞なんだ?」

ときょとんと首を傾げてみせたり…。

来た料理を黎がすべて取り皿にわけ、飲み物をついだり、女の子たちが着ていたコートをハンガーにかけたり…。
なんというか…凄すぎて言葉が出ない。

そして、黎を狙う女の子たちがなんとかアピールしようとしているのに…サラダとかピザとか全部黎が1人で取りわけてしまうため…女子たちの出る幕がない。
何かしようとわたわたしている女子をなぜかとても申し訳なく思った…。

そして
それらの行動を黎は何も意識もせずにやっているから余計にすごい。
黎はいつも授業が終わったあと黒板を消したり教室の花の水をかえたり美化委員にかわり毎日朝早く学校に来て花壇の花に水をあげたりと…いろんな手伝いをしている。

それが…合コンにいかされていた。しかも無意識に。

そして、その無意識が女子たちの心を鷲掴みした。

「黎君は、なにか趣味とかあるの!?」
「黎君はなんの食べ物が好き!?今度つくるよ!!」
「黎君っ!こっち座って!!」

などなど…黎へのアプローチの数々…。

黎の取り合いになっていた。

だが、黎はそんな女子たちに目もくれずただただにこにこしていた。
席を隣になろうという女子たちの声には丁寧に断りおれのそばにいた。

「ねぇ、黎君って兄弟とかいるの?」

そしてその質問をした瞬間、かっと目が開きポケットからナイフを出し振り上げようとしていたため…必死に止めた。

「黎…、落ち着いて!!」
「…おれはっ…」
「なに?お兄ちゃんとかいるの?」

そう女子が聞くともう一つのポケットから二つ目のナイフを構えようとした。

「い、いないよな!?黎には…兄も妹もいないっ!1人っこだもんなっ!」

おれはギリギリっと黎の両手を抑えながらそう答えた。

「え~、なんで亮君が答えるの?」

女子は黎に答えて欲しかったのか残念そうにつぶやいた。
いや…、残念なのはわかるけど露骨にださないで!傷つくからぁっ!

「…あぁ。おれは1人っこだ。…いない、兄弟なんぞ…いるわけがない。」

黎ははぁはぁ呼吸をしながら、そう答えた。

女子たちはそうなんだぁっと納得したような表情をし、自分の兄のことや妹の話をし始めた。

ふぅっとおれが息を吐くと

「…亮、ありがとう。とても助かった。…亮のような友達をもって…おれは幸せだなっ」

と笑って見せた。きゅっんっとおれの胸がなる。くそっ…、黎おれまで落とすんじゃないっ!!ドキドキしただろうっ!

「…亮とこうやってご飯を食べることは始めてだろう?だから…嬉しい。」
「あ…、うん。そうだね。」
「…えっと、よければいいんだが…次の休みに一緒に遊ばないか…?」

黎は顔を真っ赤にしながらそうおれに誘った。

「えっ…!?い、いいの!?」
「いいもなにも…。
…おれ、思ったんだ。学校では亮と一緒にいるが…遊んだことは…ない、なって。
だから…遊びたいって思ったんだ…。」

黎はそういって真っ赤になった顔を手で隠した。

「おれもっ…!黎と一緒に遊びたいって…ずっと思ってた!けど…人を誘ったことなんてなかったからっ…なかなか誘えなくて…!誘ってくれて嬉しいっ!
おれでよければ…一緒に遊ぼう…!
だめ…?」

黎はぱぁっ!っと顔を明るくさせて答えた。

「そんな、だめじゃないっ!!遊ぼう、一緒に…。お願いします。」

黎の初めての敬語にぷっと笑ってしまった。
黎と一緒に遊べるだなんて思わなかったからとても嬉しかった。



(女子たち:…ただ遊ぶ約束するだけで…なんであんなに必死になってるんだろう…?)

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