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最初の犠牲者
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北海道の外れにあるM村。人口数百人。
M村の大きな建物といえば、小・中が合体している生徒数数十人の学校、少々年季の入った市役所ぐらいしかない。
周囲を山で囲まれているM村は、外界から隔離されているように思える。
村の収入を支えるのは、村の近くにあるスキー場。毎冬、スキー客たちはM村の
旅館や民宿を利用する。スキーブームは随分前に過ぎてしまったが、札幌などの
都会からは毎年数十万人がスキーをしにやって来る。
11月17日
その晩、ある若い二人のカップルが、山道をM村に向けて車で走っていた。
スキー場のオープン後だと人が多いので、オープン前にこっそり滑ろうと、彼氏の森山が彼女のマリを誘ったのだ。
オープン前の雪がこんもり積もった山の斜面。二人の貸し切り状態で滑れる
なんて、なんかステキ。とマリも同意した。
彼氏の4WD車にスキーの板とスキーブーツを積み込み、二人は意気揚々と札幌を
出発した。
時刻は午後9時。予約したM村の民宿に9時半到着の予定だが、
この調子じゃ無理だな。と森山はハンドルを握りながら思った。
かなり雪が積もっているのだ。山道の両脇に乱立する木々も雪に覆われ、
白いオブジェのように見える。一応スタットレスタイヤだが、油断すると危険だ。
山のど真ん中の道なので街灯はなく真っ暗。後続車、対向車も一切なし。
周囲を照らすのは車のヘッドライトのみ。
視界も悪い。ヘッドライトの光の一寸先は真っ暗だ。
そのとき、ヘッドライトが薄く照らす道路脇の木々の間で、何かが動いた。
一瞬でよく見えなかった。なんだろう。
森山はふと気になってブレーキを踏んだ。車が停車した振動で、助手席で寝ていたマリが起きた。
「どうしたの? もう着いた?」と言い、眠い目をこすって伸びをする。
「いや、いまなんか動いたんだよ・・・・」と言いながら、森山は車のドアを
開けた。冷たい空気が車内に侵入する。
「ちょっとお、寒いよ」と愚痴を言うマリを無視し、森山はドアを
開けっぱなしで車外に出た。真っ暗闇に眼を凝らす。なにも見えない。
いや、何か聞こえる。
フッ フッ フッ フッ フッ フッと、動物の息遣いが聞こえてくる。
だんだんこっちに近づいてくる。
そして、暗闇にヌッと巨体が浮かび上がった。
「やばい!」
森山は気づいた。自分たちが危機的状況にあると。
だが気づくのが遅すぎた。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
森山の悲鳴が夜の山に響いた。
M村の大きな建物といえば、小・中が合体している生徒数数十人の学校、少々年季の入った市役所ぐらいしかない。
周囲を山で囲まれているM村は、外界から隔離されているように思える。
村の収入を支えるのは、村の近くにあるスキー場。毎冬、スキー客たちはM村の
旅館や民宿を利用する。スキーブームは随分前に過ぎてしまったが、札幌などの
都会からは毎年数十万人がスキーをしにやって来る。
11月17日
その晩、ある若い二人のカップルが、山道をM村に向けて車で走っていた。
スキー場のオープン後だと人が多いので、オープン前にこっそり滑ろうと、彼氏の森山が彼女のマリを誘ったのだ。
オープン前の雪がこんもり積もった山の斜面。二人の貸し切り状態で滑れる
なんて、なんかステキ。とマリも同意した。
彼氏の4WD車にスキーの板とスキーブーツを積み込み、二人は意気揚々と札幌を
出発した。
時刻は午後9時。予約したM村の民宿に9時半到着の予定だが、
この調子じゃ無理だな。と森山はハンドルを握りながら思った。
かなり雪が積もっているのだ。山道の両脇に乱立する木々も雪に覆われ、
白いオブジェのように見える。一応スタットレスタイヤだが、油断すると危険だ。
山のど真ん中の道なので街灯はなく真っ暗。後続車、対向車も一切なし。
周囲を照らすのは車のヘッドライトのみ。
視界も悪い。ヘッドライトの光の一寸先は真っ暗だ。
そのとき、ヘッドライトが薄く照らす道路脇の木々の間で、何かが動いた。
一瞬でよく見えなかった。なんだろう。
森山はふと気になってブレーキを踏んだ。車が停車した振動で、助手席で寝ていたマリが起きた。
「どうしたの? もう着いた?」と言い、眠い目をこすって伸びをする。
「いや、いまなんか動いたんだよ・・・・」と言いながら、森山は車のドアを
開けた。冷たい空気が車内に侵入する。
「ちょっとお、寒いよ」と愚痴を言うマリを無視し、森山はドアを
開けっぱなしで車外に出た。真っ暗闇に眼を凝らす。なにも見えない。
いや、何か聞こえる。
フッ フッ フッ フッ フッ フッと、動物の息遣いが聞こえてくる。
だんだんこっちに近づいてくる。
そして、暗闇にヌッと巨体が浮かび上がった。
「やばい!」
森山は気づいた。自分たちが危機的状況にあると。
だが気づくのが遅すぎた。
「ぐわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
森山の悲鳴が夜の山に響いた。
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