人食い熊、襲来!

Mr.ビギニング

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真相

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そう。クマが殺したのは金田マリ、スキー場のスタッフと警備員、
そして剛田さんの四人。
森山英太は、クマに殺されたのではない。それは俺が一番よく知っている。

なぜなら、森山を殺したのは俺だからだ。

最初に俺が森山を発見したとき、彼はまだ生きていた。
クマに襲われて右腕の肉を食われ、衰弱していたが、まだ意識があった。
俺はあの時持っていた木の棒、拾って武器にしていたあの棒で、
森山の頭を何度も殴ってぐしゃぐしゃに潰して殺した。
クマに襲われて頭を潰されたように見せかけるために。

俺が駆け寄った時には腕だけが赤く染まっていた森山の青いジャンパーが、
その後全身真っ赤に染められていたのは、駆け寄った俺が潰した頭から
血が大量に噴き出したからだ。

「ニイさんは覚えてないだろうけど、あの飲み会の日、ニイサン酔っぱらって
話してくれたんだ。札幌で起きた事。それを聞いて、俺は思ったんだ。
『森山さんは田島のニイさんに殺されたんじゃないか』って。
ほら、病院の咲田先生も森山さんの頭の傷のこと、不思議がってたし」

あの日。下塚がしつこく札幌での出来事を聞いてくるのが嫌で、ビールを
飲みまくって寝てしまった日。俺はたぶん、酔っぱらって寝る前に全部
話したんだろうな。美香のこと。美香のストーカーのこと。

美香にしつこく付きまい、彼女を階段から突き落として殺し、俺が殺そうとした
あのストーカー男。その男の名は、森山英太。

下塚に応援を呼びに行かせ、ひとりで現場に残された俺は、被害者の
免許証を見て驚いた。忘れもしない、美香を殺し、
俺が殺そうとしたあの男、森山英太だった。

許せなかった。

美香に付きまとっていたくせに、美香が死んだら別の女に乗り換えて
幸せそうにスキーなどやろうとしている森山が。

俺は森山を探し、もしまだ生きていたらこの手で殺すと決めた。
そして森山は生きていた。木にもたれかかり、衰弱して助けを待っていた。
俺は森山に駆け寄った。
きっと森山は、制服警官が駆け寄ってくるのを見て、助かったと思ったのだろう、
安堵の表情を浮かべていた。
俺は無言で木の棒を振り上げ、森山の頭を殴った。
森山は衰弱していて、抵抗する力は残っていなかった。
俺は森山の頭を殴った。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

森山の頭蓋骨が砕け、頭が原型をとどめなくなるまで。
森山の頭蓋骨が砕ける不快な音と共に、嬉しそうな高笑いが聞こえてきた。

俺の笑い声だった。

俺は森山の頭を殴っている間、笑っていた。声を上げて笑っていた。
嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

森山を殺害したのはクマの仕業とされた。
俺はこの時、札幌で果たせなかった復讐を遂げたのだ。

咲田先生は気づいていた。森山の頭部の傷がクマによるものじゃないことに。
咲田先生が言っていた『クマより非力な動物』とは、俺の事だ。
だが咲田先生は、自分の思い違いだと思っていた。
あの時は、ばれたんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたなあ。

「最初に金田マリを見つけたとき、この人はおかしいんじゃないかと思った」
下塚はまっすぐに俺の眼を見て言った。

ああ、コイツはきっと、俺とは違う人種なんだと、俺は下塚の眼を見て思った。

上っ面だけ善人のフリをしてた俺と違って、
こいつはチャラチャラしてても、本当は正義感溢れる、すごくまっすぐな
人間なんだろう。

あの時、応援を呼んできてくれと頼む俺に、
下塚は恐ろしいものでも見たような視線を向けてきた。
あの時下塚が見ていた「恐ろしいもの」とは「被害者の残骸」ではなく
「俺」だったのか。
「あんな悲惨な現場だったのに、ニイさんは無表情に応援を呼べって
言ってきた。信じられなかった。普通の人間だったら冷静ではいられないほどの
現場で、この人は何も感じないんだと思ったら、急に田島のニイさんのことが
怖くなった。この人は狂っているのかもしれないと、本気で思った」

確かに美香の死後、「死」に対して何も感じなくなった気がする。

階段の下で冷たくなっていた美香を抱いたとき、俺は狂ってしまいたかった。
でも狂えなかったと思っていた。

きっと、俺はあの時から狂っていたんだろう。なぜなら・・・・・
「田島のニイさん。あんたのしたことは殺人だ。村に戻ったら、通報するよ」
「そうか」
俺は頷くと、腰のホルスターから無言で拳銃を抜き、下塚の額に銃口を
向けて撃った。
パァン!
銃声が周囲に響いた。
下塚の額に赤黒い穴がぽっかりと開き、血が噴き出した。
ドサッと音を立て下塚は倒れた。
・・・・・・なぜなら、仲が良かったはずの下塚を射殺しても、
何も感じないからだ。

俺は下塚の死体を燃え盛る炎に投げ入れた。肉の焼けるにおいがする。

下塚の焼死体から銃の弾痕が見つかるようなことはないだろう。
下塚も剛田さんと一緒に食い殺され、仕方なく俺がクマごと小屋に
火を放ったと言えば、誰も下塚の遺体を調べたりはしない。
真っ黒焦げになってしまった死体では、一見しただけでは弾痕など分からない。

村に戻ったら、泣きながら2人が死んでしまったと報告しよう。
夕飯はステーキがいいな。
そこまで考えて、俺はフッと笑った。

やはり、俺は狂っているようだ。人肉が焼ける匂いを嗅いで、ステーキが
食べたくなるなんて。


俺は下塚のジープに乗り込むと、エンジンをかけ、村に向かって走り始めた。









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みんなの感想(1件)

2016.04.07 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2016.06.27 Mr.ビギニング

僕の小説を読んで頂き、ありがとうございます。
アルファポリスに小説を投稿し始めてから初めて感想を頂き、とても嬉しいです。

これからも小説の投稿を続けるので、よろしくお願いします。

解除

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