人食い熊、襲来!

Mr.ビギニング

文字の大きさ
25 / 26

決戦 その3

しおりを挟む
小屋に駆け寄った時、すでに銃声は聞こえなくなっていた。
「剛田さん!」
下塚を先頭にドアを開けて小屋に入ると、
奴はそこにいた。床にうずくまり、何かを貪り食っている。
何を食べているのか、俺には分かった。

「貴様あああああああああああああ!」
下塚の怒号が弾け、下塚の散弾銃の銃口がクマを捉えた。
クマがこちらを振り返った。
そのとき、クマが食べていたものが俺の目に飛び込んできた。
やはり剛田さんだった。
剛田さんの死体は床に倒れ、内臓を引きずり出されていた。
下塚も剛田さんの無残な姿を見て固まった。
その瞬間、
バキキ! 
なぜか金属の折れ曲がる音が響いた。

クマが散弾銃の銃身を折り曲げたのだ。下塚の愛銃はスクラップ同然になって
いる。

「ヲオオオオオオオ!」
クマが先頭の下塚に飛びかかってきた。
とっさに下塚は、くの字に曲がった散弾銃をバットのようにフルスイングした。
横に振られた散弾銃がクマの横顔を捉えた。
クマが横ざまに倒れる。
もうクマに有効な猟銃は無い。
逃げるなら今がチャンスだ。

そこで俺は気づいた。この人食い熊を倒す唯一の方法を。
「下塚! クマが起き上がる前に小屋から出ろ!」と怒鳴り、
下塚のジャンパーの襟をつかんで引っ張った。
下塚を小屋から引っ張り出し、ドアを閉める。
すぐにクマは起き上がり、ドアに体当たりを始めた。木製のドアが
ミシミシと軋む。破られるのも時間の問題だ。急がなければ。

俺は外に置かれていたポリタンクのキャップを開け、灯油を小屋の壁に
ぶちまけた。
下塚も俺のやろうとしていることが分かったらしい。
ポケットからライターを取り出し、火をつける。

「くらえ、バケモン!」
投げつけたライターの火が引火し、木製の小屋はすぐに燃え始めた。
中からはクマの断末魔が聞こえてくる。
パチパチと炎が爆ぜ、黒い煙が上がった。

「やった・・・・・五人を殺したクマを退治したんだ!」
俺が喜びの声を上げたとき、
「五人じゃないでしょ。クマの被害者は四人だ。あなたは知ってるはずだ」
下塚はゆっくりと言った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...