万歳!国外追放?まあ、なんて素敵なのでしょう!

恋の箱庭

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王宮の広大なバラ園。
色とりどりの花々に囲まれたガゼボでは、ヴァンドーム王国の令嬢たちが集まり、優雅にお茶会を楽しんでいた。
そこに、給仕のふりをした「専属ガードマン」ことアニエスを連れて、ギルベルト王子が現れた。

「皆様、ご機嫌よう。今日は僕の新しい『お気に入り』を紹介したくてね」

ギルベルトが楽しげにアニエスを指し示すと、令嬢たちの間に冷ややかな沈黙が流れた。
メイド服を着ているとはいえ、隠しきれない気品と美貌を放つアニエスに対し、一人の令嬢が扇子をバサリと広げて声を上げた。

「まあ、ギルベルト様。そのような素性も知れぬ小娘を、私共の神聖なお茶会に連れてこられるなんて……。教育が行き届いていないのではなくて?」

アニエスは、その令嬢――侯爵令嬢イザベルの刺々しい視線を、「熱烈な歓迎の眼差し」と解釈した。

「ご機嫌よう、イザベル様! 『教育が行き届いていない』だなんて……。私がまだまだ伸び代だらけの『未完成の芸術品』であることを見抜かれるなんて、お目が高いですわね! さすがは審美眼に優れたヴァンドームの令嬢様ですわ!」

「……はあ? 芸術品?」

イザベルは毒気を抜かれたように眉を寄せたが、すぐに取り巻きの令嬢たちと目配せをした。
彼女たちは、この「生意気なメイド」を徹底的に叩きのめすことに決めたようだ。

「おーっほっほ! 面白い冗談ですわね。ねえ、そこの貴女。喉が渇いたわ。お茶を淹れてくださるかしら? ……あら、手が滑ってしまいましたわ!」

イザベルがわざとらしく手を離し、熱い紅茶の入ったカップがアニエスの足元へと落下した。
しかし、アニエスは瞬時に片足を上げ、カップの縁を靴の先で器用に受け止めたのである。

「まあ! イザベル様、なんてアクロバティックな『パス』をくださるの! これぞまさに、ガードマンの瞬発力を試すための『抜き打ち技能検定』ですわね!」

アニエスはそのまま足を回し、こぼれそうになった紅茶を遠心力でカップの中に留め、何食わぬ顔でテーブルの上へと戻した。

「検定合格、ということでよろしいかしら? ドキドキいたしましたけれど、とってもエキサイティングなサービス精神ですわ!」

「な、なんですの、今の動きは……。た、たまたまよ! それより、貴女、そのお召し物は何? そんな安っぽい布切れを身にまとって、私たちの前に立つなんて失礼だと思わないの?」

今度は別の令嬢が、アニエスのメイド服を指して嘲笑った。
アニエスは誇らしげに胸を張り、自分のスカートのフリルを愛おしそうに撫でた。

「安っぽい布切れ……。まあ、皆様、私を試していらっしゃるのね! これは、あえて質素な格好をすることで周囲の景色に溶け込み、有事の際に敵の目を欺く『カモフラージュ・ステルス・ウェア』なんですの。皆様のような輝かしいバラの精たちを引き立てるための、計算され尽くした『背景役』というわけですわ!」

「カモフラージュ……。背景……?」

令嬢たちは、アニエスのあまりの理論展開に、思考が追いつかなくなってきた。
悪口を言っているはずなのに、すべてが「高度な戦略」や「称賛」として変換され、笑顔で撃ち返されてくる。

「皆様、本当にお優しいですわね。こんなに素敵なジョークや試練をたくさん用意してくださるなんて。私、祖国ではこれほど洗練された『漫才形式の交流会』を経験したことがございませんの!」

アニエスは感動のあまり、令嬢たちの手を次々と握りしめた。

「イザベル様、その鋭いツッコミ、最高ですわ! あちらの令嬢様、そのスカした演技、プロの役者さんも顔負けですわよ! さあ、次はどんな『余興』を見せてくださるの? 私、ピコピコハンマーを持って参戦してもよろしいかしら?」

「や、やめてちょうだい! 誰が漫才なんて……! もういいわ、ギルベルト様、この方、お話が全く通じませんわ!」

イザベルたちは、アニエスの「鉄壁のポジティブ・バリア」に完敗し、逃げるようにお茶会の席を立っていった。
彼女たちが去った後のガゼボで、ギルベルトは腹を抱えて笑い転げていた。

「はははっ! アニエス、君は本当に天才だ! あのイザベルがあんなに青ざめて逃げ出すなんて、建国以来の珍事だよ!」

「まあ、ギルベルト様。皆様、もう『午後の公演』はおしまいなんですの? 残念ですわ。私、ようやくこの国のハイレベルなユーモアに馴染めてきたところでしたのに」

アニエスは寂しそうにティーポットを見つめた。
ギルベルトは笑いすぎて流れた涙を拭い、アニエスの肩をポンと叩いた。

「いや、十分すぎるよ。君の『結界』のおかげで、退屈なんて一瞬で吹き飛んだ。アニエス、君はもう立派な僕の騎士(ガードマン)だ」

「光栄ですわ、マスター! では、本日の任務完了のお祝いに、あちらに残っているスコーンを『兵糧』としていただいてもよろしいかしら?」

「ああ、全部食べていいよ。君の鋼のメンタルを維持するには、それくらいの糖分が必要だろうからね」

アニエスは「わあ、ボーナスですわ!」と喜び、スコーンを頬張った。
その屈託のない笑顔を見ているうちに、ギルベルトは不覚にも「この笑顔を独占したい」という独占欲が、冗談ではなく本気で育っていることに気づかされるのだった。

しかし、平和な王宮の裏側では、アニエスを追い出した元婚約者・セドリック王子の元に、不穏な知らせが届こうとしていた。
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