万歳!国外追放?まあ、なんて素敵なのでしょう!

恋の箱庭

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朝日が昇り、ヴァンドーム王宮の巨大な正門が黄金色に輝く。
その前で、二人の王子が、決闘を控えた騎士のような厳粛な面持ちで並んでいた。

「……セドリック殿下。もし彼女が僕を選んだら、恨まないでくれよ」

ギルベルトが、寝不足の目をこすりながらも不敵に笑う。

「ふん。それはこちらのセリフだ、ギルベルト。私は昨日、徹夜で彼女との『新生活・再建計画書』を書き上げた。……アニエスの心は、私の誠意に動くはずだ」

セドリックは、目の下のクマを「愛の証」だと言い張るかのように、手元の分厚い書類を握りしめた。

そこに、軽やかな足取りでアニエスが現れた。
彼女はなぜか、いつものメイド服の上に、昨夜の「白銀のアーマー」の一部(肩当てとガントレット)を装着し、手には例のピコピコハンマーを握っている。

「皆様、お待たせいたしましたわ! アニエス・ド・ラ・メール、一晩の『脳内閣僚会議』を終え、ただいま登庁いたしました!」

「アニエス! さあ、聞かせてくれ。君の、一生のパートナーに選ばれるのは……どちらだ!」

セドリックが身を乗り出し、ギルベルトも息を呑んで彼女を見つめる。
アニエスは、二人の間を優雅に通り過ぎ、門の外に広がる地平線を指差した。

「殿下、ギルベルト様。私、気づきましたの。……私には、一つを選ぶなんて、そんな贅沢な『情報の切り捨て』はできませんわ!」

「……はあ? 切り捨て?」

「そうですわ! 私、お二人とも大好きなんですの。セドリック殿下の『事務能力への依存心』も、ギルベルト様の『好奇心旺盛な悪戯心』も、どちらも私の人生という名の『アトラクション』には欠かせない要素ですわ!」

アニエスは、パッと満開の笑顔を二人に向けた。

「ですから、決めましたわ! 私、どちらのお嫁さんにもなりません! 代わりに……両国の架け橋となる『広域幸福推進・移動大使』に就任いたしますわ!」

「「……いどうたいし?」」

「ええ! 半年前はラ・メール王国で殿下の噴水を掃除し、残りの半年はヴァンドーム王国でギルベルト様の防犯システムとして活動する……。これぞまさに、国境を越えた『二拠点生活(デュアル・ライフ)』の極みですわ!」

二人の王子は、口をあんぐりと開けて立ち尽くした。
アニエスは、驚く二人をよそに、拳を高く突き上げた。

「そして! お二人には『共同婚約者』という名の『期間限定ライバル』として、これからも私を奪い合っていただきますわ。私、追いかけられるのは、とても良い『有酸素運動』になりますから!」

「アニエス、待て! そんな無茶苦茶な……。結婚というのは、普通は一人と……」

「あら、殿下。普通なんて、この広い世界では『退屈』の同義語ですわよ。……それとも、私という『嵐』についてくる自信がなくなってしまいましたの?」

アニエスに挑発的な、それでいて最高に魅力的な笑顔を向けられ、二人の王子は同時に、心の底から敗北を認めた。
この女を、自分一人の籠の中に閉じ込めることなど、最初から不可能だったのだ。

「……ははっ。降参だよ。アニエス、君には敵わないな。……いいだろう、その『奪い合い』、乗ってあげようじゃないか」

ギルベルトが、清々しい顔で手を差し出した。

「……私もだ。アニエス、君がそう言うなら、私は死ぬ気で君の『二拠点生活』をサポートしよう。……だが、次に会う時は、もっと驚くようなプレゼントを用意しておくからな!」

セドリックも、負けじと彼女の手を取った。

「まあ! お二人とも、なんて物分かりがよろしいの! さすがは私の自慢の『最高級ゲスト様』ですわね!」

アニエスは、二人の王子の手をそれぞれ取り、高く掲げた。

「さあ、本日より『アニエス・ワールド・ツアー』の開始ですわ! まずは、国境の街まで全員で『全力疾走・親睦マラソン』と参りましょうか! ビリだった方は、今日のご飯抜きの刑ですわよ!」

「「……やっぱり、そうなるのか!!」」

アニエスの高らかな笑い声が、朝の王都に響き渡る。
彼女はスカートを翻し、白銀のパーツをカシャカシャと鳴らしながら、誰よりも早く、未来へ向かって駆け出した。

その後ろを、ボロボロになりながら追いかける二人の王子と、呆気にとられる門番たち。
さらに遠くの空からは、逃げ出した悪魔や、更生したリリアーヌの「おーっほっほっほ!」という笑い声が風に乗って聞こえてくるようだった。

国外追放から始まった、天然令嬢の冒険譚。
しかし、彼女にとってこれは「終わり」ではなく、世界中を「ハッピーな勘違い」で埋め尽くす、壮大な物語の「第一章完」に過ぎないのだ。

「皆様! 人生は、いつだって最高の『ドッキリ・パーティー』ですわ! さあ、次はあなたの街へお邪魔しますわね! おーっほっほっほ!!」

アニエスの笑顔は、今日も太陽よりも眩しく、世界を理不尽なまでの幸せで塗り替えていくのだった。
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