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第50話 決断
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あれから何日経過したのだろうか。
ロルローン城で食べた朝食以来何も食べてないので、町中に溢れる料理の匂いを嗅ぐと腹の虫が鳴る。
フィオが家族向けのレストランみたいなところを見つけそこに決定する。
料理が運ばれると久しぶりの食事に痛みを忘れ肉にかぶりつく。
「うまい! いやぁ、なんだかこうしてゆっくり飯を食うのも久しぶりだなあ」
フィオも両手にナイフとフォークを握りしめ俺と同じステーキをバクバクと食べている。
「フィオは美味しそうに食べるな。よし! 俺も負けていられないな!」
フィオに負けじと肉を切り分けて口に運んでいくが……。
うっ! 最初の一口目はすごく美味しかったけど、もうお腹一杯になってきた。匂いも段々受け付けなくなってきてる。
箸の進むペースが落ちていることにリネットが気付き、忠告を無視した俺に勝ち誇った顔をする。
「だから言ったでしょ?! 病み上がりでステーキなんて食べれるわけないんだから、胃に優しいものにしろって」
「だって食えそうな感じだったんだから、注文するだろ? 前は血が足りないから肉を食えって言ってたじゃないか」
「前と今回は違うでしょ。あなた丸二日寝てたんだから、胃の中は空っぽのはずよ」
「そんなに寝てたのか。よく考えたら道のど真ん中で寝てたはずの俺を、どうやって馬車に乗せたんだ?」
「町まで近かったからフィオに医者と馬車を呼んできてもらったのよ。私達も怪我してたし、人も通らないからしばらくあそこに留まってたの」
「それは悪いことしたなあ……。そんなことにも気付けないなんて、やっぱりまだ頭が働いてないんだろうな」
サーシャが俺のことを少し心配そうにしながら会話に入ってくる。
「ソウタさんをお医者様に診せたんですけど、信じられないことにどこにも異常はなかったそうです。体調が良くないなら宿に戻りますか?」
「いや、大丈夫だよ。でもお肉はちょっと控えた方がいいかもしれない。俺のことは気にせず食べてくれ」
「……いいわ。半分も食べてないみたいだし、私のと交換してあげる」
「まあ、ナイフで切り分けて食べてたからキレイだと思うけど。いいのか?」
リネットは黙って俺からステーキを取り上げて、自分の皿をこちらに寄越す。
皿の上には千切りにされた野菜と、本来そこにあったはずのフライの残りカスだけが散らばっている。
「おい! 俺はウサギやカメじゃないんだ! 野菜だけ食べれるか! その肉返せよ!」
「イヤよ! 最初はそれでお腹を慣らして徐々にお肉にしていった方がいいわ。私の優しさが分からないの? それにあなた食べれないって言ったじゃない」
「そういう問題じゃない! なにが優しさだよ! ただ単に野菜を食べたくないだけだろ? 無理してでも食うから返せよ」
するとフィオが「私の少しあげるよ!」と、フォークに刺した肉を俺の顔に近づけてくる。
うっ! それは止めてくれ!
こうしたやり取りをしてると大人しく食べていたマリィが俺達に注意する。
「お前達。もう少し静かに食べろ。他の客に迷惑が掛かかる」
「ごめんごめん。じゃあ俺はデザートでも頂くかな」
「ふふっ、三人で食事をしてるときもこうでしたけど、人数が増えて賑やかになりましたね」
その言葉に大切なことを思い出す。
そうか。この賑やかな食事も今日でおしまいか……。
「サーシャ……。さっきの話だけどさ。俺はここでみんなを見送ることに決めたよ」
「そう……ですか。ソウタさんに自分勝手なことばかり押し付けてしまって本当にごめんなさい……」
それまで笑顔だったサーシャの顔が曇る。
「いいんだ。全部俺が決めたことだしな。みんな! 聞いてくれ!」
先程までの賑やかな雰囲気が一変し、みんなは黙って俺の方を見る。
「色々考えたんだけど、これ以上俺がみんなと一緒いると迷惑が掛かるかもしれない。だから、俺はここで離脱させてもらうことに決めたよ。マリィ、フィオ、短い間ではあったけど今ではありがとう」
「それは承諾できんな。今すぐ取り消せ」
サーシャとリネットが俯いて聞いてると、真っ先に賛成しそうな人間が反対の声を上げる。
「ちょっとマリィ! どういうことよ? あなた、ソウタの同行について納得してなかったんじゃないの?! 死にかけたの見たでしょ! また襲って来たらソウタのあの力を頼ろうとでもいうの?!」
「少し落ち着いて冷静になって考えてみろ。奴等は私達の場所を常に特定しているんだぞ。聞けばソウタのことを個人的に恨んでるやつが、ソウタ一人の時でも襲ってきたんだろう?」
「確かにそうだけど。またそいつが個人的にソウタを襲うかもしれないってこと?」
「それだけじゃない。奴等は今回の件で間違いなくソウタを私達の仲間だと思ってるだろう。それにあの戦闘でソウタの評価はかなり変わってるはずだ」
「でも、ソウタはイストウィア人間じゃないし、一緒に居ないのが分かったらもう狙って来ないはずよ」
「フレッドを退けたソウタをそのままにしておくはずないだろう。私なら、いつまた敵になるか分からない人間が一人でいたら一応始末しておく」
「確かにその可能性はあるけど……。でも他にいい方法がないわ」
「今までとは違ってソウタは奴等全体に目を付けられているかもしれない。そして、居場所も特定することが出来る。更にソウタはあの力を使えないんだぞ?」
「そうだけど、じゃあどうすればいいのよ? このまま私達と居ても危険なことには変わりないのよ?」
「お前達はソウタを戦いに巻き込みたくないあまり視野が狭くなっている。それならそれで他の方法を考えろと言っているんだ。サーシャを守ってくれた借りもある。だから、今度は私達が守ってやったらいいんじゃないか?」
マリィはリネットに優しく語りかける。
「マリィ……。でも私達で守りきれない場合もあるわ」
「いずれせよ今はソウタを一人にする方が危険だ。召喚された国に匿ってもらうのもいいが、フレッド程の相手が襲ってきたら結果は大して変わらんだろう。ならば、このまま一緒居た方が気を揉まずにすむだろう」
サーシャは涙を拭いならマリィ微笑みかける。
「ありがとうマリィ……。そこまで考えてくれてたなんて私嬉しいわ」
「だから私は同行するのを反対したんだ。もっとも、助けてもらったのは事実だし、ここで見捨てるわけにいかないだろう。それでソウタ、お前はどうなんだ?」
突然マリィに振られて一瞬戸惑うが、答えは決まっている。
「そりゃあ、みんなが良いなら俺は一緒に居たいよ。でも、マリィはそれでいいのか? 俺を仲間から外す絶好の機会だぞ?」
「彼女達のために命懸けで戦った人間を仲間として認めないわけにはいかないだろう。裏切るかもしれないなどと言って悪かったな。改めてよろしく頼む」
「ああ! こちらこそよろしく頼むよ!」
「良かったねソウタ君! これでまた一緒にご飯食べれるよ!」
フィオもこの結果に喜んでくれている。
「フィオもありがとな! 今は無理だけど、もう少ししたら一緒にめちゃめちゃ食おうぜ!」
二人でオー! っとグーで手を上げると、リネットも少し涙ぐみながら笑う。
「バカね。そんなに食べたらまた気持ち悪くなるわよ」
まさかまた一緒に旅が出来るなんて思ってなかったら素直に嬉しいな。マリィも俺の同行を許可してくれたし、早くこの体の痛みを治すぞ。
ロルローン城で食べた朝食以来何も食べてないので、町中に溢れる料理の匂いを嗅ぐと腹の虫が鳴る。
フィオが家族向けのレストランみたいなところを見つけそこに決定する。
料理が運ばれると久しぶりの食事に痛みを忘れ肉にかぶりつく。
「うまい! いやぁ、なんだかこうしてゆっくり飯を食うのも久しぶりだなあ」
フィオも両手にナイフとフォークを握りしめ俺と同じステーキをバクバクと食べている。
「フィオは美味しそうに食べるな。よし! 俺も負けていられないな!」
フィオに負けじと肉を切り分けて口に運んでいくが……。
うっ! 最初の一口目はすごく美味しかったけど、もうお腹一杯になってきた。匂いも段々受け付けなくなってきてる。
箸の進むペースが落ちていることにリネットが気付き、忠告を無視した俺に勝ち誇った顔をする。
「だから言ったでしょ?! 病み上がりでステーキなんて食べれるわけないんだから、胃に優しいものにしろって」
「だって食えそうな感じだったんだから、注文するだろ? 前は血が足りないから肉を食えって言ってたじゃないか」
「前と今回は違うでしょ。あなた丸二日寝てたんだから、胃の中は空っぽのはずよ」
「そんなに寝てたのか。よく考えたら道のど真ん中で寝てたはずの俺を、どうやって馬車に乗せたんだ?」
「町まで近かったからフィオに医者と馬車を呼んできてもらったのよ。私達も怪我してたし、人も通らないからしばらくあそこに留まってたの」
「それは悪いことしたなあ……。そんなことにも気付けないなんて、やっぱりまだ頭が働いてないんだろうな」
サーシャが俺のことを少し心配そうにしながら会話に入ってくる。
「ソウタさんをお医者様に診せたんですけど、信じられないことにどこにも異常はなかったそうです。体調が良くないなら宿に戻りますか?」
「いや、大丈夫だよ。でもお肉はちょっと控えた方がいいかもしれない。俺のことは気にせず食べてくれ」
「……いいわ。半分も食べてないみたいだし、私のと交換してあげる」
「まあ、ナイフで切り分けて食べてたからキレイだと思うけど。いいのか?」
リネットは黙って俺からステーキを取り上げて、自分の皿をこちらに寄越す。
皿の上には千切りにされた野菜と、本来そこにあったはずのフライの残りカスだけが散らばっている。
「おい! 俺はウサギやカメじゃないんだ! 野菜だけ食べれるか! その肉返せよ!」
「イヤよ! 最初はそれでお腹を慣らして徐々にお肉にしていった方がいいわ。私の優しさが分からないの? それにあなた食べれないって言ったじゃない」
「そういう問題じゃない! なにが優しさだよ! ただ単に野菜を食べたくないだけだろ? 無理してでも食うから返せよ」
するとフィオが「私の少しあげるよ!」と、フォークに刺した肉を俺の顔に近づけてくる。
うっ! それは止めてくれ!
こうしたやり取りをしてると大人しく食べていたマリィが俺達に注意する。
「お前達。もう少し静かに食べろ。他の客に迷惑が掛かかる」
「ごめんごめん。じゃあ俺はデザートでも頂くかな」
「ふふっ、三人で食事をしてるときもこうでしたけど、人数が増えて賑やかになりましたね」
その言葉に大切なことを思い出す。
そうか。この賑やかな食事も今日でおしまいか……。
「サーシャ……。さっきの話だけどさ。俺はここでみんなを見送ることに決めたよ」
「そう……ですか。ソウタさんに自分勝手なことばかり押し付けてしまって本当にごめんなさい……」
それまで笑顔だったサーシャの顔が曇る。
「いいんだ。全部俺が決めたことだしな。みんな! 聞いてくれ!」
先程までの賑やかな雰囲気が一変し、みんなは黙って俺の方を見る。
「色々考えたんだけど、これ以上俺がみんなと一緒いると迷惑が掛かるかもしれない。だから、俺はここで離脱させてもらうことに決めたよ。マリィ、フィオ、短い間ではあったけど今ではありがとう」
「それは承諾できんな。今すぐ取り消せ」
サーシャとリネットが俯いて聞いてると、真っ先に賛成しそうな人間が反対の声を上げる。
「ちょっとマリィ! どういうことよ? あなた、ソウタの同行について納得してなかったんじゃないの?! 死にかけたの見たでしょ! また襲って来たらソウタのあの力を頼ろうとでもいうの?!」
「少し落ち着いて冷静になって考えてみろ。奴等は私達の場所を常に特定しているんだぞ。聞けばソウタのことを個人的に恨んでるやつが、ソウタ一人の時でも襲ってきたんだろう?」
「確かにそうだけど。またそいつが個人的にソウタを襲うかもしれないってこと?」
「それだけじゃない。奴等は今回の件で間違いなくソウタを私達の仲間だと思ってるだろう。それにあの戦闘でソウタの評価はかなり変わってるはずだ」
「でも、ソウタはイストウィア人間じゃないし、一緒に居ないのが分かったらもう狙って来ないはずよ」
「フレッドを退けたソウタをそのままにしておくはずないだろう。私なら、いつまた敵になるか分からない人間が一人でいたら一応始末しておく」
「確かにその可能性はあるけど……。でも他にいい方法がないわ」
「今までとは違ってソウタは奴等全体に目を付けられているかもしれない。そして、居場所も特定することが出来る。更にソウタはあの力を使えないんだぞ?」
「そうだけど、じゃあどうすればいいのよ? このまま私達と居ても危険なことには変わりないのよ?」
「お前達はソウタを戦いに巻き込みたくないあまり視野が狭くなっている。それならそれで他の方法を考えろと言っているんだ。サーシャを守ってくれた借りもある。だから、今度は私達が守ってやったらいいんじゃないか?」
マリィはリネットに優しく語りかける。
「マリィ……。でも私達で守りきれない場合もあるわ」
「いずれせよ今はソウタを一人にする方が危険だ。召喚された国に匿ってもらうのもいいが、フレッド程の相手が襲ってきたら結果は大して変わらんだろう。ならば、このまま一緒居た方が気を揉まずにすむだろう」
サーシャは涙を拭いならマリィ微笑みかける。
「ありがとうマリィ……。そこまで考えてくれてたなんて私嬉しいわ」
「だから私は同行するのを反対したんだ。もっとも、助けてもらったのは事実だし、ここで見捨てるわけにいかないだろう。それでソウタ、お前はどうなんだ?」
突然マリィに振られて一瞬戸惑うが、答えは決まっている。
「そりゃあ、みんなが良いなら俺は一緒に居たいよ。でも、マリィはそれでいいのか? 俺を仲間から外す絶好の機会だぞ?」
「彼女達のために命懸けで戦った人間を仲間として認めないわけにはいかないだろう。裏切るかもしれないなどと言って悪かったな。改めてよろしく頼む」
「ああ! こちらこそよろしく頼むよ!」
「良かったねソウタ君! これでまた一緒にご飯食べれるよ!」
フィオもこの結果に喜んでくれている。
「フィオもありがとな! 今は無理だけど、もう少ししたら一緒にめちゃめちゃ食おうぜ!」
二人でオー! っとグーで手を上げると、リネットも少し涙ぐみながら笑う。
「バカね。そんなに食べたらまた気持ち悪くなるわよ」
まさかまた一緒に旅が出来るなんて思ってなかったら素直に嬉しいな。マリィも俺の同行を許可してくれたし、早くこの体の痛みを治すぞ。
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