念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第51話 ずっと前から言ってたよね

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 次の日から俺も一緒に馬車に乗って、グラヴェールを目指す。

 一日寝て朝食を取ったら一人で歩けるくらいには回復していて、体の痛みも減ってきている。

 これなら心配することは無さそうだな、もし少し休んだら戦うことになっても動けそうだ。

 馬車の中で体を伸ばしたりしてリハビリをしていたら、マリィは浮かない顔で考えて事をしてるようだ。

 「どうしたんだマリィ? もしかして昨日俺の同行を許可したのを後悔してるとか?」
 
 「それもあるが問題は山積みなのでな。このまま任務を遂行しててもいいものか考えていたんだ」

 「そうだよな……。根本的には何も解決してないんだよな。俺もジュラールを追っているけど、ムングスルドの方も気になってどうしたらいいか迷ってるんだ」

 「そのムングスルドがどういう動きをするかだな。どうにも狙って来てる連中と繋がりがあるみたいだし、私達が知らない何かがあるようだ」

 この会話にリネットも加わってくる。

 「そうね。私達がこの世界に派遣された理由が父さん達の論文が目当てなら、イストウィア側もそれを知ってる可能性もあるわね」

 「ああ。だから、この計画そのものを疑う必要が出てくる。ジャンの情報が改竄されていて、本当はこの世界に危機なんて無いのかもしれない」

 「そんなこと出来る人間は限られてるはずよ。それにもしそうだとしたらイストウィアに戻れないかもしれないじゃない」
 
 「上層部に居る誰かに嵌められた……。そう考えても不思議じゃない。だとするなら、生きてこの世界から帰る方法を探すのが先決だ」

 「でもジュラールってやつがギフトを盗んで、異世界から勇者も呼んでるのよ。これも仕組まれるってこと?」

 「それは分からない。私達はただ『エルソールに危機が迫ってるから救ってこい』これしか知らされないからな。いつ、どこで、誰が、は現地で収集することになったわけだが、それも私達を泳がす時間稼ぎのような気がしてならない」

 「ノーマ達も未だに見つからないしね……。もし彼女達に万が一のことがあったら私達はどうすればいいのよ」

 マリィは泣きそうなリネットの肩を叩いて励ます。
 
 「お前達のせいでは無いさ。初めての異世界でどこか遊びに行ってるだけかもしれない。それにこれは私の推測に過ぎないから、確定してるわけじゃない」
 
 「ありがとう。泣くにはまだ早すぎるわよね。でもあなたの推測はあながち間違ってもないかも。だってあいつ等エスプリマも使ってたみたいだし、私達のことも詳しく知ってるみたいだったわ」

 「あの感じは間違いなくエスプリマだろう。しかし、私とフィオが戦ったあの男……。あんな形状のものは見たことがない」

 「私もあんな気持ち悪いエスプリマなんて見たことないし、あんな目付きの悪いやつも知らないわ」

 どうやら四人は四人で問題があるようだな。

 俺が聞いていい話かは分からないけど、リネット達をこの世界で殺すのが本当の計画かもしれないってことか。

 「なぁ、大事な話をしてるところ悪いんだけど。前からずっと言ってたし、気になってたんだけど、その『エスプリマ』ってなんなんだ? 見てたらなんとなく分かるんだけど。あの変な動物? それとも武器? あっ、でも言えないなら言わなくて大丈夫だ」

 リネットがマリィの顔を見てどうするか少し悩むが、マリィが「いいだろう」と説明してくれる。

 「簡単言うとエスプリマは第二の魂だ。あのポムリンはフィオが自身の魂を具象化させた動物で『アニマルシェ』という。更に具象化させた魂、アニマルシェに命を吹き込んで武器にするんだ。その武器を『イデアルム』という。この二つを具現化させて形になった魂をエスプリマ呼んでいる。分かりやすく言うと『脳内に在るイメージを現実化させたもの』だな」

 「ほえー。まず、自分の魂を切り離して独立させるってことか? それでその切り離した魂に命を吹き込むと……。なんだか聞いても分からないけど、あの変な鳥もリネットの魂ってことか」

 俺が思わず変な鳥と言ってしまったので、リネットが怒っているようだ。

 「変な鳥とは何よ! 私の可愛いノルデに謝りなさいよ! 始めて会ったときから変な鳥って言ってたから、内心腹を立ててたんだからね」

 「いやぁ、やっぱり飼い主に似るんだなって思ってさ。でもあれがリネットの本来の姿ってことなんだよな」

 「ははっ。本当の自分なんて案外自分では分からないものだ。それに、どんな人間の魂だって弱い部分や醜い部分があるものさ。だから最初に自身の未熟な魂であるアニマルシェを使役して、その後に自分の分身であるアニマルシェと向き合う必要があるんだ」

 マリィが俺達を見て笑いながら答える。
 
 「笑った……。口元だけ笑うことはあったけど、マリィがちゃんと笑ったの初めて見たかもしれない」

 「そうか? 私だって笑うことくらいある。さあ、この辺で説明は終わっていいか?」

 「ああ。この世界でギフトの説明を受けたことがあるんだけど、それと同じでなんとなくだけど解ったよ」

 「きっと理解力が足りないのね。私達にギフトの説明するときあやふやだったもんね」

 「最初に説明をちょろっと聞いただけで、どんなギフトがあるのか知らないんだよ。ところで、そのエスプリマってやつ俺も使えないかな? 使えればもうちょっと戦えそうだしさ」

 「無理に決まってるでしょ! マリィはめちゃくちゃ簡単に説明しただけで、実際はそんな単純なものではないのよ。挫折する人も多いし、仮に具現化に成功してもあなたのアニマルシェなんて、年中木にしがみついてボーッとしてるようなやつしか出てきやしないわよ」
 
 リネットの機嫌が直りそうにないので話を逸らすことにする。

 変な鳥って言ったことずっと根に持ってたんだな……。

 「じゃあ、フィオもあのポムリンを武器にして戦ってたんだ」

 フィオに問いかけるもブンブンッと首を横に振る。

 「ううん。武器にしてないよ。ポムリンは私の友達だからね」

 「え!? じゃあ、あのバサラとかいうやつとは普通に戦ってたってことか?」
   
 「でも、武器は作ってもらってたから問題なかったよ」

 「彼女は特別だ。武器化は出来てないが、それを補って余りある程の身体能力の持ち主だからな。その能力の高さから今回の任務に抜擢されるくらいだ」

 マリィがフィオの頭をポンポンと叩き、やや自慢気に話す。

 「へえ。フィオってスゴいんだな。今度俺にも体の動かし方を教えてくれよ」

 「やめておけ。私も前にフィオにお願いしたが到底真似出来るものではない。それに教えてもらっても、才能の差に自分が落ち込むだけだぞ」

 フィオはやる気みたいだったが話を聞いて俺もやめておくことする。

 マリィがやめとけって言うくらいだし、俺の頭と体じゃ付いていけないだろうな。 
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