念願の異世界に召喚されたけど役に立ちそうもないんでその辺で遊んでます~森で謎の姉妹に出会って本物の勇者を目指すことに~

朱衣なつ

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第86話 息抜き

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 ウラガン団長とガスバルさんが城門前まで見送ってくれ、別れの挨拶をする。

 「ありがとなフィオちゃん! フィオちゃん達のおかげで奴等を撃退することが出来たぜ!」

 「うん! 国王様が無事で良かったね! また遊びに来るね」

 フィオが笑顔で手を振ると「うちの娘もこうだったらなあ……」とガスバルさんは寂しそうに呟いて手を振り返す。

 「私からも礼を言う。ガスバルが言うように、みんなが協力してくれたおかげで国王達は守られた。それから、イネスさんもまた明日お待ちしております」

 「こっちもワガママを聞いてもらってることだし、持ちつ持たれつさ。じゃあまた明日来るからよろしく頼むよ」

 俺は帰る前に伝えておきたいことがあったのでそれだけ話をさせてもらう。
 
 「あの、最後にちょっといいですか?」
  
 「ん? どうした?」

 ウラガン団長が俺の方を見る。
 
 「ウラガン団長が言ってたダルカデルって国に行ってみようかと思うんですけど、どんな国なのか改めて教えてもらおうと思って」

 「ソウタ、お前本気なのか?! あそこはギフトとかそういう問題ではないところだぞ?」

 「ええ、ですけどムングスルドとアーク、この二つの勢力と戦うことになるかもしれないとなると、やはり人数は多い方がいいでしょう。それに今自由に動けるのは俺だけでしょうからね」

 「確かに今は我々が城から動くことは出来ないが、そうでなくてもあの国に協力を要請しようというのはかなり無茶な話だぞ?」

 「無謀なのは承知しています。ですが、いつまでも『自分は能力が低いから何も出来ない』なんて言い訳したくないんです。だからこそ、これは自分で決めてやり遂げてみせたいんです」

 「そうか……お前の意志は固そうだな。解ったその件は考えておこう」

 ウラガン団長達にまた来ることを約束して家路に着く。

 家に帰り着いて中に入ろうとすると、リネットの足がピタリと止まる。

 「ちょっと待って!」

 「どうしたんだ? 城に忘れ物でもしたのか?」

 「そうじゃなくて、せっかく杖を貰ったんだから私の魔法を見てほしいのよ。本当は帰りに試したかったけど周りの迷惑になっても悪いから我慢してたの」

 「みんな疲れてるんだから明日でいいだろ?」

 「すぐ終わるから見ててよ」

 そう言ってリネットは玄関の前で杖を掲げる。

 「そんなに魔法を使いたかったのか。見ててやるから早くしろよな」

 リネットが「《アイスソリッド》!」と叫び、更に杖を高く掲げる。

 その気迫に思わず息を飲んで注視する。

 しかし、杖の先端からビー玉ほどの氷塊が水滴のようにポタッと落ちて終わってしまう。

 これだけ?! いや、でもさっきまで何も出なかったことを考えると発動しただけでもスゴいのか。
 
 「ねえ! 今の見た!? 今確かに氷が出てわよね!」

 リネットは急いで落ちた氷を拾って俺達に見せびらかしてくる。
 
 まあ、俺も《フレイムボム》で初めて小さな火が出たときこんな感じだったから、気持ちは分かるけどな。

 「良かったじゃないか。最初はこんなのでも嬉しいもんだからな」
 
 「もっと練習して杖なしでも使えるようにならなっくちゃね。そうだ! フィオがこの杖を使ったらどうなるのか見てみたいわ」

 杖をフィオに渡して魔法を使ってみてとせがむ。

 「えー? どうかなあ。ちゃんと出るかな?」  

 「なに言ってるのよ。フィオには才能があるんだからいけるに決まってるわ」

 「じゃあやってみるね」

 フィオは照れ臭そうに笑いながら杖を持って意識を集中させる。

 「《あいすそりっど》!」と杖を高く持ち上げて言うと、サッカーボールくらいの大きさの氷塊が空から出現し、家の屋根にドスン! と落ちる。

 ああっ! ロンベルさんの家があ!

 幸いかどうかは判らないが、屋根の上にある洋瓦が数枚割れただけで穴は開いてないようだ。

 氷の塊は屋根から俺達の前に転がり落ちてくるが、誰も何も言わずにその氷塊を呆然と眺める。
 
 「ま、まあ杖を使うのは初めてだしこんなこともあるわよね」

 「ロンベルさんにどう説明するんだよ! 後少しでこの家返すかもしれないんだぞ!」

 「そんなに怒らなくてもいいじゃない! 元々が元々なんだし対して変わらないわよ」

 俺達が喧嘩を始めるとフィオが申し訳なさそうに謝ってくる。

 「ごめんね。狙いをしっかり定めなかった私が悪かったよ」

 「あっ、いや、フィオが悪いわけじゃないから謝る必要はないよ」   

 「そうよ。私が頼んだんだからフィオは悪くないわ。屋根の修理くらい私がなんとかしてみせるから安心して」

 そのとき、先に帰宅していたマリィが家の中からライフルを持って飛び出てくる。

 マリィはキョロキョロと周囲を警戒し、俺達の姿が目に入るとホッと胸を撫で下ろしライフルを肩に乗せる。

 「なんだ、お前達帰ってたのか。今、屋根の上からすごい音が鳴ったが何かあったのか?」

 「えーと……。うん、何でもないんだ。驚かせてすまなかったな」
   
 「そ、そうそう、何でもないの。早く家の中に入りましょう」

 「そうは言ってもだな」

 俺達は屋根が壊れたことを悟られまいと必死に誤魔化そうとするが、マリィは訝しげな表情をして食い下がってくる。

 この様子にイネス先生が大声で笑いその場を収める。

 「はっはっは! あんた達と一緒にいると本当に暇しないね。屋根の件は私が言っといてやるから、ひとまず家に入ろうじゃないか」

 家の中に戻り事情を話すと案の定マリィに注意される。

 「何をやっているんだお前達は! この世界に遊びに来たんじゃないんだぞ」

 「だってえ……せっかくだから魔法を使ってみたかったのよ」

 「なにも家の前でやらなくてもいいだろう。それに帰ったらまずは報告をするべきだ。イネス先生達が来てくれて少し気が緩んでるじゃないのか?」

 リネットは人差し指の先を合わせながら言い訳をしようとするも、マリィは容赦なくそれを切り捨てる。

 「まあまあ、誰も怪我なんてしなくて良かったじゃないの。私も魔法を見てみたかったわ」

 「なっ! エクシエルさんまでそんなことを」
 
 「大変なときだからこそ息抜きも必要よ。あなたも後で一緒に見せてもらいましょう」
 
 「一緒に……ですか」
 
 マリィの顔が少し緩むも咳払い一つして姿勢を正す。

 「しかし、敵がこの場所を知ってる以上いつ襲ってきてもおかしくないんです。警戒は常にしておかねばなりません」

 「ふふっ、相変わらず堅いのね。でも、確かにその通りではあるから早く引っ越さないとね」

 「そういえばロンベルさんとの話しはどうだったんですか?」
 
 俺は話をすり替えるのもあってエクシエルサさんに訊ねてみる。

 「そうそう、住居のことなんだけどね。私と先生はお城に住まわせてもらうことになったの。それからソウタ君とサーシャ達にも別々の家を探してくれたらしいわ」

 「本当ですか!? 良かった。ロンベルさんがすぐに対応してくれたんですね」

 「ロンベルさんはそのことを早くみんなに伝えたくて今日時間を取ってくれたみたいよ。まあ、とりあえずサーシャお手製の料理でも食べながら話しましょうか」

 エクシエルさんはそう言って料理を運んでいるサーシャの手伝いにいく。
 
 そうか……ついにこの家ともお別れか。あまり住んではなかったけど、それなりに思い出はあるから少し名残惜しいのはあるな。

 セレーナにも報告しておきたいけど、まだ帰ってきてないみたいだしなあ。
 
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