転生冒険者と男娼王子

海野璃音

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1-1.転生冒険者は男娼王子を攫う

七話★

「……くしゅっ」

 しばらく到着したままで話していたからかフレデリック様が小さくくしゃみをする。ここは母国より北の国だし季節は夏でも今のフレデリック様の服装じゃ肌寒かったのだろう。……ほぼ裸みたいなもんだし。夏とはいえ、暖炉もつけておくべきだったな。

「何か服を用意しましょう。俺のなんで大きいかと思いますが……今の物よりはマシでしょう」

 娼婦や踊り子が着ている分には扇情的で悪くはないと思うのだが、フレデリック様が着ているのは別だ。一度は婚約者として、忠誠を誓っても良いと思った方ゆえに目のやり場に困る。すごく困る。

 長い絹糸のような金髪、白い透けるような肌、新緑のような碧色の瞳にそれを覆うような長いまつげ、薄くも形のいい艶やかな唇。スタイルだって痩せているが括れた腰と長い脚とそんじょそこらの男娼じゃ敵わないくらいの神々しい美貌なのだ。

 そんな邪な目で見たくないのに、王宮から連れ去ったらより輝いて見える。元々の恋愛対象は女性だったが、なんだかんだとこの世界に馴染んだ結果、男でも美人だと気にならなくなってしまった。早く、早く服を着せなければ。

 フレデリック様を担いだまま、早足で廊下を歩き、自室の扉を開ける。自室にはベッドと長椅子、その二つ用のサイドテーブルしか置いていないので殺風景だが、たまにしか帰ってこないのでこれくらいでも問題ない。

 フレデリック様を長椅子に座らせて、寒くないようにベッドから引きはがした毛布を肩にかける。

「すぐに用意しますので、少しお待ちください」
「ああ……」

 毛布を手で掴み、体を覆うフレデリック様にやはり寒かったのだろう。熱くなるかもしれないが部屋の暖炉だけつけて、フレデリック様に着せる服を探しに隣接する衣裳部屋へと向かう。

 前世的に言えば、ウォークインクローゼットって感じだろうそこは、クローゼットと思えないほどに広い。さすが元貴族の家と思う。まあ、衣装持ちではない俺からしたらあまり収める服はないのだけど。

 依頼中に破けたりしたら廃棄しているので、基本シンプルな服が少量あるだけ。まあ、そのおかげでサイズは大きいが新しい服をフレデリック様に渡せるのでいいのだが。

 俺も礼服のままだから着替えたい所ではあるが、フレデリック様をあまり待たせるわけにもいかないのでシャツとズボン、下着だけ持っていく。ウエストは倍近く違いそうだからズボンと下着は紐で止められるタイプのやつだ。

「お待たせしました。着替えましょう」
「わかった」

 長椅子に座ったフレデリック様に手を伸ばせば、毛布を置いて、俺の手を支えに立ち上がる。

 そして、俺に向けて背中を見せたので、王宮娼夫に堕とされてからも世話自体は王子の時のままに行われていた事を悟った。

「ニコラ?」

 俺が着替えを手伝わない事に首を傾げているあたり、フレデリック様は生粋の王族育ちだ。自分で脱ぎ着するという感覚がないのだろう。俺も実家に居た頃は似たような生活していたけど、前世の記憶とかなければそれが当たり前だったんだろうなぁ……。

「すいません。改めて見るとあまりに細くて……脱がしますね」

 曖昧に笑みを浮かべながら、首の後ろで止められている留め具を外す。踊り子のような薄い布の衣装は宝石の付いた金製の装飾が至る所についており、この服だけでもなかなかに価値が高そうだ。

 それ以外に首飾りや耳のピアス、乳首や陰茎についたピアスも金製で宝石がついているあたり、相当に金が掛かっている。

 おそらく、フレデリック様の王宮娼夫としての価値を上げるための衣装だろうが、よくここまで仕立て上げたものだ。依頼でそれなりに魔石や宝石の採取を頼まれたことがあるが、粒は小さくても一級品のものばかりなのだから。

 あの王宮で用意されたものとはいえ、宝石の価値に変わりはない。一つ一つ外しながら、長椅子の横にあるサイドテーブルへと置いていく。

「終わりました。ピアスはどうされます?」
「休む時は耳のものだけ外している。他のものは付け替える時以外はそのままだ」

 視線を向ければ、乳首のものは乳首の周りをぐるりと覆い、乳輪の半分を隠すような作りになっており、真ん中に一本ピンが入っているのが見える。乳首ピアス同士を繋ぐチェーンが何本か繋がっており、横につながらるチェーンと垂れ下がる縦のチェーンがフレデリック様の胸元で揺れていた。

「……それではチェーンだけでも外しましょうか」
「任せる」

 フレデリック様は特に気にしていないようだが俺が気になるのでチェーンだけでも外すことにする。乳首ピアス自体は、今後のフレデリック様の判断次第で穴を閉じるか、俺から新しいものを贈らせてもらおう。あの王宮から持ってきた物はできるだけ身につけさせたくないからな。

「失礼します」
「っ……」

 フレデリック様の正面へと回り、ピアスとつながっているチェーンの金具を外す。もちろん、外す為にはフレデリック様の乳首に触れなければならないし、小さくもピアスのせいで感度の上がったフレデリック様からあがる吐息に理性を総動員したのは言うまでもなかった。

「っあ……まだ、か……」
「すみません、あと少し……」

 俺の指が太くて、細かい金具に苦戦していると刺激に堪えられなくなってきたフレデリック様が俺の肩に手を置く。きゅっと肩を掴みながらも足から力が抜けぬように堪える姿がいじらしい。

 ……外すことに集中しよう。俺は臣下。俺は臣下。

 男としての欲を押さえつけ、俺は細かい金具を外すことに集中したのだった。
感想 6

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