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本編
19:勇者魔王相打ち、母勝利
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「その……だな……」
「うん」
しばらく黙っていたヒルドが呟く。
「……今までで味わった事のないくらい濃密で、甘露と言えるほどに美味だった……」
そこまで詳しく食レポされると今度はこっちが照れてしまう。
「そ、そっか……!」
でも、味は気に入ったという事。マズイと思われるよりはずっと良かった。
「……」
「……」
互いの認識の差から広がったヒルドの暴露と俺の挑発により、二人揃って照れて沈黙が広がる。
ヒルドは触手をさ迷わせているし、俺はヒルドと視線を合わせられないし……。
ど、どうしよう……。
廊下の真ん中で進む事もせず、立ち止まる現状にぐるぐると思考を回していると、現状を打破してくれる存在が現れた。
「食事が出来たから呼びに来れば……廊下の真ん中で何をやっておるんだお主達」
廊下の先の階段から上がってきたメディが俺とヒルドの様子を見て呆れたように呟いた。
「いえ、案内をしていたところです」
「その割には、ずいぶんと落ち着きがなかったようじゃがのう?」
「ぐっ……」
「しかも、大の男を幼子のように抱えよって……仲が良いのは構わんが……友人から始めるのではなかったのか?」
「ぐぐぐっ……」
ポーカーフェイスを決めようとするヒルドにニヤニヤとした笑みを浮かべるメディの言葉が刺さっていく。
ついでに俺にも。
ここでメディと遭遇するとは思わないじゃん!? どこ行ったかはわからなかったけど……こんなタイミング良く思わねぇよ!!
メディとしては、できのいい息子からかえるのが楽しいのかもしれない。
からかわれているヒルドを見るのは、微笑ましいけど俺にも流れ弾が当たってるんだよなぁ!
「まあ、仲が良い事はいい事じゃ。ほれ、一階に降りるぞ」
俺達の様子を楽しんだメディが踵を返し、階段を降りていく。
ホント、自由な人だ……。飯作ってくれてるあたりいい人なんだけども。
「ヒルド。ここからは自分で歩くよ」
ふらつく様子もないし、大丈夫だろうと思って声をかけたけど……ヒルドは困ったように声を上げた。
「自分で歩くと言うが……素足であろう」
「……あ、マジだ」
ベッドにいた時からヒルドに抱えられていたから靴を履いていない。
たぶん、ベッドに寝かされた時に脱がされたんだと思うけど……誰が脱がせたんだ? ヒルド? メディ? ……どっちにしろちょっと複雑だ。
「こら! 何をやっておるんじゃ! 早く来んか!」
どうでもいい事を考えていたら、階段の下からメディが叫んでくる。
……部屋に戻ってもらう時間も無さそうだ。すぐそこなのに。
でも、まあ……下は滑らかな大理石貼りの廊下だし、絨毯もあるから素足でも平気だろう。
「大丈夫。そのまま歩くよ」
「……いや、運ぼう。我が連れてきたのに申し訳がたたん」
「え、ちょっ……!? いいのに!?」
なにやら決意を決めたっぽいヒルドに有無を言うこともできずに運ばれる。
なんでこいつこんなにも義理堅いというか、融通きかねぇの!?
でも、その優しさが好き―――――!!
そんな事を思いながら、俺はヒルドの足で連行されるのだった。
「うん」
しばらく黙っていたヒルドが呟く。
「……今までで味わった事のないくらい濃密で、甘露と言えるほどに美味だった……」
そこまで詳しく食レポされると今度はこっちが照れてしまう。
「そ、そっか……!」
でも、味は気に入ったという事。マズイと思われるよりはずっと良かった。
「……」
「……」
互いの認識の差から広がったヒルドの暴露と俺の挑発により、二人揃って照れて沈黙が広がる。
ヒルドは触手をさ迷わせているし、俺はヒルドと視線を合わせられないし……。
ど、どうしよう……。
廊下の真ん中で進む事もせず、立ち止まる現状にぐるぐると思考を回していると、現状を打破してくれる存在が現れた。
「食事が出来たから呼びに来れば……廊下の真ん中で何をやっておるんだお主達」
廊下の先の階段から上がってきたメディが俺とヒルドの様子を見て呆れたように呟いた。
「いえ、案内をしていたところです」
「その割には、ずいぶんと落ち着きがなかったようじゃがのう?」
「ぐっ……」
「しかも、大の男を幼子のように抱えよって……仲が良いのは構わんが……友人から始めるのではなかったのか?」
「ぐぐぐっ……」
ポーカーフェイスを決めようとするヒルドにニヤニヤとした笑みを浮かべるメディの言葉が刺さっていく。
ついでに俺にも。
ここでメディと遭遇するとは思わないじゃん!? どこ行ったかはわからなかったけど……こんなタイミング良く思わねぇよ!!
メディとしては、できのいい息子からかえるのが楽しいのかもしれない。
からかわれているヒルドを見るのは、微笑ましいけど俺にも流れ弾が当たってるんだよなぁ!
「まあ、仲が良い事はいい事じゃ。ほれ、一階に降りるぞ」
俺達の様子を楽しんだメディが踵を返し、階段を降りていく。
ホント、自由な人だ……。飯作ってくれてるあたりいい人なんだけども。
「ヒルド。ここからは自分で歩くよ」
ふらつく様子もないし、大丈夫だろうと思って声をかけたけど……ヒルドは困ったように声を上げた。
「自分で歩くと言うが……素足であろう」
「……あ、マジだ」
ベッドにいた時からヒルドに抱えられていたから靴を履いていない。
たぶん、ベッドに寝かされた時に脱がされたんだと思うけど……誰が脱がせたんだ? ヒルド? メディ? ……どっちにしろちょっと複雑だ。
「こら! 何をやっておるんじゃ! 早く来んか!」
どうでもいい事を考えていたら、階段の下からメディが叫んでくる。
……部屋に戻ってもらう時間も無さそうだ。すぐそこなのに。
でも、まあ……下は滑らかな大理石貼りの廊下だし、絨毯もあるから素足でも平気だろう。
「大丈夫。そのまま歩くよ」
「……いや、運ぼう。我が連れてきたのに申し訳がたたん」
「え、ちょっ……!? いいのに!?」
なにやら決意を決めたっぽいヒルドに有無を言うこともできずに運ばれる。
なんでこいつこんなにも義理堅いというか、融通きかねぇの!?
でも、その優しさが好き―――――!!
そんな事を思いながら、俺はヒルドの足で連行されるのだった。
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