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二章:二度目の幽世
23:温かな手
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「けほっ……っ、う……!」
飲みなれないアルコールが渉の喉を焼くような感覚がする。だが、それ以上に、得体のしれない何かが体内で暴れているような気がした。
「っうううう!」
渉は、気だるい手で首元を抑え、俯く。
「あぁああっ!」
胃の中から何かがせり上がってくるような感覚に声を上げれば、渉の口から黒い靄《もや》のようなものが上り、宙へと霧散した。
「っ、あ……はぁ……」
「少しきつかったな。だが、よく頑張った」
体の中から穢れが抜け、ぐったりとした渉を男が撫でる。
「濡れたままでは、気持ち悪いだろう。少し乾かすか……――」
男が祝詞のような言葉を呟くと、渉の濡れていた服が一瞬にして乾いた。
(神様って……すごい……)
出会って何度目になるかわからない関心をした渉は、ぼんやりと男を眺める。
(……ホント、二回も助けてくれて、いい神様……お狐様だな)
前回の一度目も、今回の二度目も。男が渉の助けに答えなければ、渉はどうなっていたかわからない。命の恩人である男に尊敬の念が湧くのは当然だった。
「これで、穢れについては大丈夫だろう」
服の乾いた渉をお馴染みのように抱え上げた男に渉も体を預ける。穢れが払われ、楽になったとはいえ疲労した体はそのままだ。ぐったりと力なく男の肩へと頭を預け、ぼんやりとしながら男に体を任せた。
「ここなら休めるだろう」
そう言って降ろされたのは、境内の木陰にある長椅子。そこに渉を一度座らせると、男もその横に座り、渉の頭を膝に乗せるように渉の体を横たえた。
「災難であったな。まさか、気質を隠してなお。この場に迷い込むとは思わなんだ」
ひと月も経たずに渉が幽世に迷い込んだ事に男は苦い笑みを浮かべる。
「……一週間前、くらいから……なにかに、見られてる気がして……」
「ふむ?」
だが、渉が今回の出来事の発端を語り出すと、男の表情が変わった。
「最初は、深夜の帰り道だけ……だったんだけど、今日は……朝から見られている気がして……気がついたら、いつもの道だけじゃなくて、大学まで追ってきてたんだ……それで、やばいかもって思って……」
「なぜ、朝のうちにここに来なかったのだ」
「……学校サボりたくないし、朝の時点では……いつもの場所でしか視線を感じなかったから」
咎めるような男の言葉に渉は落ち込んだ表情のまま呟く。
それを聞いた男は、目を見開き苦笑した。
「学業も大切な事ではあるがな……異様だと感じたら、今後はすぐに訪ねよ。一週間も怪異に目をつけられていてよく今日まで手を出されなかったものだ」
(あ、今日がってよりは、もう目をつけられていた時からヤバかったのか……)
男の言葉に、自分が思った以上に危うい状況だったと言う事に渉は気づく。
「次からは……そう、します……」
「うむ。それでいい」
落ち込む渉に男は、困ったように笑いながら渉の頭を撫でる。その手から伝わる体温と心地よさに渉は目を細めた。
飲みなれないアルコールが渉の喉を焼くような感覚がする。だが、それ以上に、得体のしれない何かが体内で暴れているような気がした。
「っうううう!」
渉は、気だるい手で首元を抑え、俯く。
「あぁああっ!」
胃の中から何かがせり上がってくるような感覚に声を上げれば、渉の口から黒い靄《もや》のようなものが上り、宙へと霧散した。
「っ、あ……はぁ……」
「少しきつかったな。だが、よく頑張った」
体の中から穢れが抜け、ぐったりとした渉を男が撫でる。
「濡れたままでは、気持ち悪いだろう。少し乾かすか……――」
男が祝詞のような言葉を呟くと、渉の濡れていた服が一瞬にして乾いた。
(神様って……すごい……)
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前回の一度目も、今回の二度目も。男が渉の助けに答えなければ、渉はどうなっていたかわからない。命の恩人である男に尊敬の念が湧くのは当然だった。
「これで、穢れについては大丈夫だろう」
服の乾いた渉をお馴染みのように抱え上げた男に渉も体を預ける。穢れが払われ、楽になったとはいえ疲労した体はそのままだ。ぐったりと力なく男の肩へと頭を預け、ぼんやりとしながら男に体を任せた。
「ここなら休めるだろう」
そう言って降ろされたのは、境内の木陰にある長椅子。そこに渉を一度座らせると、男もその横に座り、渉の頭を膝に乗せるように渉の体を横たえた。
「災難であったな。まさか、気質を隠してなお。この場に迷い込むとは思わなんだ」
ひと月も経たずに渉が幽世に迷い込んだ事に男は苦い笑みを浮かべる。
「……一週間前、くらいから……なにかに、見られてる気がして……」
「ふむ?」
だが、渉が今回の出来事の発端を語り出すと、男の表情が変わった。
「最初は、深夜の帰り道だけ……だったんだけど、今日は……朝から見られている気がして……気がついたら、いつもの道だけじゃなくて、大学まで追ってきてたんだ……それで、やばいかもって思って……」
「なぜ、朝のうちにここに来なかったのだ」
「……学校サボりたくないし、朝の時点では……いつもの場所でしか視線を感じなかったから」
咎めるような男の言葉に渉は落ち込んだ表情のまま呟く。
それを聞いた男は、目を見開き苦笑した。
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(あ、今日がってよりは、もう目をつけられていた時からヤバかったのか……)
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「次からは……そう、します……」
「うむ。それでいい」
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