30歳、魔法使いになりました。

本見りん

文字の大きさ
90 / 97

佑磨の『縁』

しおりを挟む


 余りの事実に言葉も出ない様子の父や信彦の妻と娘咲良に、佑磨は更に話を続けた。


「……しかし、信彦叔父さんの中の『闇』は身体がを無くしても消えなかった。
残念ながら叔父さんは私の身体を手に入れようと先程まで私の中にいたのです」


「な!? 信彦が甥であるお前を……!? なんという事を……、アイツはそこまで堕ちていたのか。……人を妬み力を欲し人妻に迫って人を殺めた時点で、既にアイツは堕ち切っていたのか」

「……お父様……」


 そう言って苦悶の表情で涙を流す光彦や信彦の妻と娘を、周囲の者達は何ともいえない思いで見た。



 ……そして少しして、光彦は鞍馬本家当主八千代に向き直った。


「───ご当主様。今回の事……いいえ30年前のご子息の件から何もかも、誠に申し訳ございませんでした。……心よりお詫び申し上げます」


 光彦はそう謝罪して頭を深く下げた。……それに信彦の妻と娘も続く。


「───大切な、息子であった。私はあの時の事を決して忘れる事は出来ないし、その犯人を赦す事もない」


 八千代の静かに燃えるような怒りをひしひしと周りは感じた。
 光彦達はただ深く項垂れる。


「───しかし犯人の身内というだけのあなた方を非難し続けるつもりはない。
恨みや怒りの負の感情は、『力』を持つ者にとっては劇薬と同じ危険なものだ。
あなた方が我らに敵対したり反省のない行動を取らない限りは我らは何をもするつもりはない」


 暗に余計な事をすればいつでも力で対応するぞと八千代は告げた。


 ───人は誰でも『闇』に転ずる弱さを持っている。鞍馬一族は、それに引き摺られない強い心がなければいけない。そうでなければ彼らはとっくに『闇』と『欲』に塗れた集団となっていただろう。


 花凛は悲しみを堪え凛と立つ八千代をジッと見つめて考えていた。

 『末の孫』様は極端な例だったが、人とは弱いもの。彼を教訓に一族は自らを律してきたのだろう。


「謝罪して済まされる話ではございませんが、今後の対応についてもしっかりとさせていただく所存でございます」


 西園寺光彦は全面的に西園寺側の非を認め謝罪した。

 西園寺側が納得した様子に、花凛はホッとしていた。
 花凛が佑磨を見ると、彼も自分を見ていてお互いに微笑み合った。



「───花凛ッ」


 その時、横からグイッと手を引かれる。


「……あ、奏多さん。さっきは話が出来なかったんだけど、体調は大丈夫?」


 花凛は共に『末の孫様』と戦った同志である奏多の無事な姿にホッとしながら言った。
 自分を気遣ってくれる花凛に、奏多は嬉しさから少し照れつつ言った。


「ッああ……。大丈夫だ。花凛も無事で良かった。……疲れただろう? この辺の話はおばあさま達に任せてあちらで身体を休めた方がいい」


 そう言って奏多は花凛を連れて行こうとしたのだが、それを佑磨がとめた。


「───今は大事な話の途中だ。花凛は俺の横で座って身体を休めながら聞いておいた方がいい。人伝に聞くより自分で納得出来るよう立ち会った方がいい」


 2人の意見を聞いた花凛は佑磨の話に頷いた。


「……確かにそうね。身体も一日たっぷり寝てたから大丈夫だよ。奏多さんはどうかな? 将来の南家当主として身体が大丈夫そうなら話を聞いておいた方がいいんじゃない?」


 そう言って奏多を見ると、少し苦い表情をしてから使用人に声を掛けて花凛の横に座る。後で使用人が背もたれ付きの座椅子とお茶を3つずつ持って来てくれた。


 花凛は奏多に礼を言って座る。そして前から強い視線を感じたので見てみると、ほぼ全員がこちらを見ていた。

 え? と思って改めて自分達をみると、自分を佑磨と奏多がピタリと密着しガードするように固めている。


「あの……この部屋は広いし、もうちょっと椅子を離しても良いんじゃないかな」


 花凛はそう提案してみたのだが、2人はにっこりと笑った。


「……いや、私はこれでいい」

「俺もこのままでいい。……他にも誰か来るかもしれないし」


 今は意見が合っている彼らに花凛は苦笑した。


 そんな3人を苛々しながら見ていた咲良は、つい我慢しかねて言った。


「───あなた。……鞍馬花凛さん? いったいどういうつもり? 隼人さんの次は佑磨様を狙ってるの? 他にも男性を侍らせて、何様のつもりなのよ!?」


 必死に苛立ちを抑えているつもりだが、言葉の端々に棘がありその内容も花凛を明らかに糾弾するものだった。


「……咲良! やめないか。失礼だぞ」


 流石に今回の真実を知った今の自分達の立場で話す内容ではないと考えた光彦は止めるが、咲良の勢いは止まらない。


「……だって伯父様! あの人は鞍馬の血縁でも何でもない人なのよ! それに自分の勤める会社の社長にも反抗的だったわ。そんな人が佑磨様の隣にいるなんて……!」


「血縁がない……? 佑磨さんは西園寺家の跡取り。鞍馬の血縁でもない方がお相手なんて許されませんわ」


 花凛が鞍馬の血を引かない者だと聞いた信彦の妻はそう言って顔を顰めた。


 それを聞いた鞍馬一族側は雰囲気が一気に悪くなった。
 それに気付いた光彦はなんとか取りなそうと口を開く。


「いや、我が一族は代を重ねるごとに力を弱めております。私は楓を妻に得た事でこうして佑磨は力に恵まれました。ですので出来れば佑磨には鞍馬の強い力を持った女性との縁を望んでおりまして……」


 光彦はここで出来れば本物の鞍馬一族と縁を結びたいと本来の願いも伝えて相手の反応を見た。


 目の前の八千代は分かりやすくため息を吐いて肩をすくめた。

 しまったこのような時に調子に乗り過ぎたかと光彦は冷や汗をかく。


「───我らは一族の力を守る為、余程本人が強く望まない限りは他所に縁を繋げることはない」


 あっさりと断られ、光彦は内心大きく落胆した。


「……でしたら! 佑磨様も同じです。彼を鞍馬の血を引かない人となんか一緒にさせられません!」


 何故か咲良がそう言い切った。が……。


「───咲良。勝手な事を言うな。私の縁は私が決める」


 すぐさま佑磨が咲良をそう言って否した。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...