《本編完結》あの人を綺麗さっぱり忘れる方法

本見りん

文字の大きさ
13 / 14

その後 告白

しおりを挟む




 ───ついに、王家から大々的に次の王太子の正式な発表があった。国王の一人息子であったマルク王子の失脚から約3年が経っていた。


 新しく王太子となったのは現国王の叔母の孫にあたる、ヴィルフリート。ファンベルク伯爵家の長子。

 一月前に王弟であるオッペンハイム公爵家の養子となったファーベルク伯爵家の次男テオパルトの兄。

 そして三男リカルドはファーベルク伯爵家を継ぐと発表され、王国内は色めき立った。……特に、若い女性が。


 新王太子であるヴィルフリートには侯爵家出身の妻がいるが、次男と三男には婚約者すら居なかったからだ。


 貴族達は我が家の娘こそと張り切ったが、残念な事に彼らに合う年齢の貴族女性にはだいたいが既に婚約者がいる。ここで『婚約の解消』などをすれば、また世間的には責められる事態となる。
 もどかしい思いで早くに婚約を定めてしまったことを悔やむ貴族達だった。



 ◇


「───お手をどうぞ、メラニー」

「───ありがとう」


 今日はメラニー達の学園の卒業パーティー。現在婚約者の居ないメラニーは同じく婚約者のいないリカルドにエスコートされている。


 今年度主席の卒業生で美青年であり将来の国王の弟でもある伯爵家後継リカルドは、今日のパーティーでも注目と羨望の的だ。


「───リカルド。本当に良かったの? パートナーが私で」


 周りの女性達の羨望と嫉妬の視線に耐えきれず、メラニーはリカルドに小声で問いかけた。

 この国の貴族には殆ど婚約者がいるとはいっても、いない者も中にはいる。そしてリカルドさえその気なら婚約を解消してもいいと迫る貴族も陰ではいるようだ。


「───もちろん。僕はメラニーが良いんだ」


 優しく微笑みながら手を握るリカルドに、メラニーは顔が赤くなる。

 メラニーとリカルドは文官の試験に見事合格した。リカルドは父であるファーベルク伯爵がまだまだ健在なので、暫くは文官として働きながら徐々に領主としての仕事もしていくのだという。
 メラニーは……。希望していた文官になれたので暫くはひたすらに仕事に生きるつもりだ。……その、つもりなのに……。
 ディートマーをキレイサッパリ忘れてから、メラニーとリカルドは充実した学園生活を共に過ごして来た。2人の距離はぐんと縮まった。

 ……だけどまだ、恋なんてするつもりはないのに。なんで彼を見るとこんなにどきどきするんだろう。それに、顔が熱い……。
 リカルドったら、こんなに素敵だった? それとも私ったら権力に弱かったのかしら……。結構チョロかったりする?


 なんて考えて益々顔を赤くするメラニーを見て、リカルドはクスリと笑う。
 そして周りでダンスが始まり、2人もそれに参加した。

 踊りながら、リカルドは愛しげにメラニーを見て言った。


「───ねえ、メラニー。僕はあれからずっと君に想いを伝えてきたし、交流を持ってきた。そろそろもう一段階すすんでも、……いいよね?」

「───え?」


 メラニーが「?」となっていると、リカルドはメラニーの手を取りひざまづく。

 それを見た周囲はザワリとしたあとシンと静まり2人に注目する。……音楽もその音量を下げた。
 来賓に訪れていた新王太子ヴィルフリートは楽しそうに2人を見ていた。


 メラニーがリカルドの動きに驚きつつ、周りのその反応にもドキリとしたその時。


「メラニー。……貴女を愛しています。僕と一緒に人生を歩んでください。結婚、してください」



 ───その瞬間、メラニーの中ではリカルド以外の事は感じなくなった。

 ただ、リカルドのメラニーを見るその青い瞳に、引き込まれるように目が離せなくなっていた。


「……リカルド……」


 驚きと戸惑いと心の奥底から溢れ出る想い。……この気持ちはなんだろう。
 一つ言えるのは、これは決して不快な思いでは無い。むしろ、この想いは……。

 メラニーの心で溢れ出たその想いは、そのまま涙になって溢れ出ていた。


「メラニー。……ごめん、まだ早かったかな?」


 メラニーの涙に少し慌てて困った様子のリカルドに、慌てて首を振る。


「……いいえ……いいえ、リカルド。……嬉しいの。嬉しい気持ちが溢れて……。……私、貴方の事がとても好きみたい」


 リカルドに取られていない方の手で溢れる涙を押さえながらメラニーはリカルドから視線を外さず言った。
 リカルドはそんなメラニーに一瞬ポカンとしてから、破顔した。


「……メラニー!! どうかイエスと言って?」

「……はい。リカルド……私も貴方を愛しています」

「ッ……メラニー!!」


 リカルドは思わずメラニーを抱き上げ一回転させてからギュッと抱きしめた。
 メラニーは少し驚きつつそんなリカルドを抱きしめ返す。

 2人は幸せを噛み締め抱き合って───


 ───ワッ!!


 突然周りから歓声が聞こえてメラニーは驚く。……そして、自分達がどこでこんな事をしていたのかに今更ながらに気付いて真っ赤になった。リカルドは少し照れながらも嬉しそうに笑っている。


 そんな2人の前に拍手をしながら近付いてきたのはこの国の王太子ヴィルフリート。


「───おめでとう。私は2人を祝福する。
……皆の者! 私の可愛い末の弟の恋の成就を祝ってやってくれ。……やっと片思いが叶ったのだからな」


 ヴィルフリートがそう言うと、周りの人々は一斉に祝いの言葉を述べ会場中がお祝いムードに包まれた。
 2人は少し恥ずかしそうにしながらもお互いを見て微笑み合った。

 

ーーーーー


お読みいただきありがとうございます。
次回の更新は明日になります。
今度こそ最終話になります。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

死んで初めて分かったこと

ルーシャオ
恋愛
ヴィリジアの王女ロザリアは、大国アルデラ王国のエアル王子の婚約者として王城で暮らしていたが、エアル王子には罵倒され遠ざけられ続け、次第に周辺の人々も近づかなくなっていた。 しかし、エアル王子が故郷ヴィリジアを滅ぼしたことをきっかけに、ロザリアは何もかもを諦める。「殿下。あなた様との婚約は、破棄いたします」、そう宣言して、ロザリアは——。

彼女(ヒロイン)は、バッドエンドが確定している

基本二度寝
恋愛
おそらく彼女(ヒロイン)は記憶持ちだった。 王族が認め、発表した「稀有な能力を覚醒させた」と、『選ばれた平民』。 彼女は侯爵令嬢の婚約者の第二王子と距離が近くなり、噂を立てられるほどになっていた。 しかし、侯爵令嬢はそれに構う余裕はなかった。 侯爵令嬢は、第二王子から急遽開催される夜会に呼び出しを受けた。 とうとう婚約破棄を言い渡されるのだろう。 平民の彼女は第二王子の婚約者から彼を奪いたいのだ。 それが、運命だと信じている。 …穏便に済めば、大事にならないかもしれない。 会場へ向かう馬車の中で侯爵令嬢は息を吐いた。 侯爵令嬢もまた記憶持ちだった。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

婚約破棄ですか? うーん、普通こうなりますよね?

ぼん@ぼおやっじ
恋愛
とある王国の暫定王太子、アングは自身の通う王立アカデミー高等科の殺業記念式典で高らかに吠えた。 「クラウディア・グランナよ、そなたとの婚約を破棄する。 そなたは王国の王妃としてふさわしくない! 私はアイリス・アンタン男爵令嬢と真実の愛に目覚めたのだ」 証拠を突き付け、クラウデイァを断罪しようとするアングだったが、どうも微妙にうまく事が運ばない。 果たして彼は、無事目的を達成することができるだろうか! というお話です。 あまり深く考えてないふわっとした作品なので、そういうものと思ってお楽しみください。 この手の話はほんと気楽に書けるから楽しい。

「はあ、何のご用ですの?」〜元溺愛婚約者は復縁を望まない〜

小砂青
恋愛
伯爵令嬢フランチェスカは美貌と教養を兼ね備えた才女でありながら、婚約者であるイシュメルを溺愛していた。 しかし彼女の誕生日、イシュメルは他に愛する人ができたからとフランチェスカとの婚約を破棄してしまう。 それから2年。イシュメルはフランチェスカとの婚約破棄を後悔し、今でも自分を待っていると信じて疑わず彼女を迎えにいくが……?

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

処理中です...