ねーちゃんの愛読書の、『ザマァされる王子』に転生したんだが。

本見りん

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7 恐怖のイベント



 サーシャとステファン王子の会話は、『ときめく恋を王子と☆学園の秘密……からの、ざまぁ!!』の『王子とドキドキイベント⭐︎』の展開通りに進んでいく。

「……迷子かい? 学園内は案外広くて入り組んでいるからね」


 ステファン王子はそう言って優しく『サーシャ』を見つめた。


「そうなんですぅ~! でも良かったぁ、王子様に会えて。私はずっと王子様とゆっくりお話ししたかったんですぅ」


 ……そうだね。君がすごく俺を狙っていた事にこちらも気付いていたよ。他の高位貴族の男子達に媚を売りつつ、こちらの動向をいつも探っていたよね。

 ずっと、俺はそれを避けてきたっていうのに! ……何故この身体はあの物語の通りに行動するんだ!?


「……嬉しいよ。私も君と話をしたいと思っていた」


 ツラツラと台詞が出てくるが、イヤ俺は全力でお話ししたくはなかったんだが!!

 そんな俺の思いに反して俺の身体はあの本のストーリー通りに動く。

 ……ヤバイ。俺には大切にしたい人がいるのに! あの本の通りになったら俺の未来が真っ暗っていうのも勿論あるけど、彼女を……キャロラインを裏切ってしまうのは嫌だ! 俺は……私は、キャロラインを傷付けたくないのに! ……彼女を大切にしたい……! ……愛している……、キャロラインの事がとても愛しいんだ……! 

 ……ッ!!

 ――俺はこの時、初めて気付いた。自分のキャロラインへの気持ちに。そして初めて知った、人を愛おしいと思うこの狂おしい程切ない想いに。

 ……絶対に、あの本の通りになる訳にはいかない!!

 それなのに、どうして身体はいうことを聞かないんだ! どうしてあの話通りに動いてしまうんだ……!?

 サーシャは嬉しそうにステファン王子に話しかけてくる。……あの話通りに。


 ……! そうだ……!

『助けてくれ! 私を……俺を、自分の思うがままに動かせてくれ!』

 俺は、心の底からそう叫んだ。

 ……が。


「君はとても愛らしい。……そうだ。一緒に学園内を回りながら話をしようではないか」


 ……オイ! 全然ダメじゃないか! あの時は確かにあの本の縛りが解けたのに! いったいどうして……!?

「うわぁ! 本当ですかぁ? サーシャ、嬉しいですぅッ」

 キャピッとあざとく笑い俺の腕に手をかけてきたサーシャに俺は絶望する。


『……くそッ! それもこれも、全部あの本のせいだ! どうしてくれんだよ、『ねーちゃん』!!』

 俺は、最早八つ当たり的な怒りを勝手にねーちゃんにぶつけた。

 ……すると。ふっ……と何か力が抜けた。そして心の中で一生懸命振り払おうとしていたサーシャの手をさっと外す事が出来た。

 ……思うように動ける!

 そう気付いた俺は素早くサーシャから離れる。


「……いや、そんな事をしたら人から誤解を受けてしまうね。君も早く友人と合流した方がいい。私も生徒会の仕事が忙しいので失礼するよ」


 俺はそう言い捨てて、何やら言っているサーシャから逃げるように無人の生徒会室に入り、すぐに鍵を閉めた。

 俺は大きな息を吐き、崩れ落ちるように座り込んだ。


 ……今のは、本当に危なかった……。
 もしあのまま学園内をサーシャと2人で回ったのなら、学園中の噂になってしまうところだった。

 だいたいどうして何がなんでもあの物語通りになる強制力が働くんだ? しかもあれ程予防線を張ったっていうのに。
 そして何より、自分の心を裏切ってあの本の通りに動いてしまった自分……。

 俺はもう一度はぁーっと大きなため息を吐いた。


 ……そしてあの時、前回のように心の中で叫んだ『助けて』は通用しなかった。前回はアレで、助かったんではなかったのか?
 そうだ……あの後、ねーちゃんに心の中で文句を言ったら身体が動いて……。……ッ!? ……まさか。

 そうだ……! 
 前回も『助けてくれねーちゃん!』て心で叫んでたんだ。そして今回は『どうしてくれんだよねーちゃん』、か……。

 ……まさか……、『ねーちゃん』がキーワードなのか……?


 俺がその事に思い当たり茫然としていると、生徒会室の扉がノックされた。

 ッ! まさかサーシャじゃないだろうな? 

 俺が警戒し身を固くしていると、扉の前から美しい声が聞こえてきた。

「殿下……? いらっしゃいませんか?」

 ……キャロライン!

 俺はすぐさま扉の鍵を開けた。

「殿下! あぁ、良かった。なかなか本部に戻られないので心配していたのです」

 キャロラインは俺の顔を見て心底ホッとした様子で言った。そして彼女の顔を見た俺も心から安堵していた。

「済まない、キャロライン。喧嘩した生徒たちを仲裁した後忘れ物を取りに来たのだ。皆に迷惑をかけて済まなかったね。さぁ、急いで本部に戻ろう」


 そうして俺はなんとか『王子様とドキドキイベント⭐︎』を回避することが出来たのだった。


 
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