ねーちゃんの愛読書の、『ザマァされる王子』に転生したんだが。

本見りん

文字の大きさ
9 / 24

8 聖女と王子1



 学園内の廊下で、ステファン王子が1人の女子生徒をやり過ごし去っていく。女子生徒は追い縋ったが、取りつく島も無かったようだ。


 ……ダンッ!!

 それを見ていた1人の男子生徒は怒りを抑え切れず壁を叩いた。それに気付いた女子生徒が少しバツが悪そうにその男子生徒に近付く。


「…………今のは、一時はすごくいい感じになったのよ? なのになんだか急にステファン王子の様子が変わっちゃって……」

 少し不貞腐れたように言う女子生徒に男子生徒は苛立ったように言った。

「……言い訳はいい。お前があちこちの高位貴族を誑かしたりしているから警戒されているんじゃないのか? 男好きも大概にしろ! せっかくこの私が協力してやっているというのに!」

「えぇ~、でも直接ステファン王子に紹介してくれたりはしないじゃない。兄弟なのに……おかしくない? そもそも2人は全然似てないわよね」


 そう指摘されたパウロ王子は分かりやすく顔を歪ませた。普段空気を読まないサーシャも、『あ、マズイ事を言ったかしら』と少し焦った程だ。


 実際、この麗しい血筋の兄弟は全く似ていない。兄弟と言われてよく見ても、似ていない。後で人から聞けば母が違うとの事なので、この王子が母によく似ているのだろう。ステファン王子は父王にもよく似ていると言われているから。


「お前は余計な詮索をせずに自分のすべき事をすればいいのだ! お前が見事兄上を攻略したならばお前の未来は約束される。そして私はキャロライン嬢と……」


 最後は少し赤くなりつつ言うパウロ王子を見たサーシャは少々ゲンナリして思う。

 ……キャロラインに関してだけはこの王子はデレるのよね、他は凄く横暴な感じだけど。……まあ、いいわ。私は自分が昇り詰める為に協力してもらえるならそれでいいのだし、ステファン王子の婚約者なんてこのいけすかない偉そうな王子にくれてやるわよ! 


「……とにかくお前はもっと自分が『聖女』だという事を利用しろ! もっと『聖女』らしく兄上に迫るんだ! そうでないと支援を打ち切るぞ! ……分かったな!?」

「……分かったわよ」

 サーシャの態度にイライラした様子を見せながら第二王子は去って行った。


 サーシャが『聖女』だと教会に認められた時、教会の勧めで今の子爵家の養女となった。そしてこの第二王子の使いはやって来た。養女となった家と王子の母の実家が親戚だったのだそうだ。……それ以来、サーシャはその貴族からも支援を受けている。だからその王子からの依頼を断れるハズがない。その依頼はサーシャにとっても都合の良いものだったから構わないのだが、こうして偉そうにされるのは本当に嫌だ。

 ……この世界の『聖女』は約5年に一度教会の大司教による占いで決められる。そしてその殆どは平民だ。教会側が意図して高位貴族を指名していないのは明らかで、それは『聖女』がほぼ名目だけの存在である事を示している。ほぼ一生神に祈るだけの人生を送るのだから。

 しかし平民の娘からすれば、選ばれれば人々から崇められ美しく着飾り一生食べるに困る事はないのだ。だから平民の娘達は皆『聖女』に選ばれる事に憧れる。

 そして今回選ばれたサーシャも王都から少し離れた街の平民で、美しいと評判の少女だった。そしてほんの少し治癒の力があると認められ、晴れて『聖女』となった。
 こんな少しの力で認められるなんて大丈夫かと最初は思ったが、ほとんどの『聖女』はその程度の力しか持っていないと知ったのは自分が聖女になってから。だから『聖女』とはそれ程値打ちのないもので、教会や王国の権威を保つ為の『お飾り』なのだと知った。

 『聖女』は稀に貴族に嫁ぐ者もはいるが、ほとんどの『聖女』は一生を教会で終える事になる。5年に1人『聖女』が選出されるのだからこの国には今は十人程の『聖女』かいるので、そう珍しい存在ではない。しかも殆どの聖女は実際には『力』は少なく元々身分が低い者。貴族からすれば縁を結ぶ意味がないのだ。

 そんな中でサーシャの三代前の『聖女』は元々子爵家の娘だった為か『力』が強く、そして美しく貴族としても完璧だった事から学園で当時の王弟に見初められた。現在は公爵となった王弟の妻……つまりは公爵夫人となり、全聖女……いや王国中の女性の憧れの存在となっている。

 サーシャはそれを思い出しながら親指の爪を噛む。

 ……見てなさいよ。私は『公爵夫人』どころじゃない。この国の『王妃』となってやるんだから! そうしたら、この学園の気取った貴族達なんかよりも私が1番身分が上なんだからね! その時私に泣いて謝って後悔するがいいんだわ!


 初めはクラスには純粋にサーシャと仲良くしようとする生徒もいたのに自分でそれを跳ね除けてしまったという事に全く気付かず、周りの貴族達に逆恨みするサーシャなのだった。


 
感想 2

あなたにおすすめの小説

生徒会の期間限定雑用係 ~庶民の私が王子に囮役としてスカウトされたら、学園の事件に巻き込まれました~

piyo
恋愛
平凡な庶民の少女クィアシーナは、フォボロス学園への転校初日、いきなりこの国の第二王子にして生徒会長ダンテに目をつけられる。 彼が求めたのは、生徒会での“囮役”。 学園で起きているある事件のためだった。 褒美につられて引き受けたものの、 小さないやがらせから王位継承問題まで巻き込まれていき――。 鋭すぎるツッコミを武器に、美形の生徒会の仲間たちと奮闘する庶民女子。 これは、無自覚な恋を抱えながら学園の事件に首を突っ込んでいく少女の物語。 ※全128話  前半ラブコメ、後半第二章以降シリアスの三部構成です。 ※「私にキスしたのは誰ですか?」と同じ世界感ですが、単品で読めます。 ※アルファポリス先行で他サイトにも掲載中

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

義妹がやらかして申し訳ありません!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。 何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。 何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て――― 義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル! 果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?