婚約破棄されたので、猫になりました。

本見りん

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猫になった公爵令嬢

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 本当に、王子が馬鹿な事をしたせいで……! 
 こっちだって最初からエドワルド王子との結婚なんて望んでなんかいない。断れない『王命』だったのよ。義妹と結婚したいならそちらがに話をしてきちんと手続きをすれば良いだけじゃない! 

 ……いえでも、今私が猫になっているのは私自身が馬鹿な賭けをしたせいなのよね……。ブレンダの持つあの『石』が欲しいばかりに、私が愚かだったんだわ。
 そもそもブレンダは『王子がおかしな事を企んでいるようだ』と私に忠告してくれていたのに……。

 シャーロット猫はショボンとしてくるりと丸まる。

 わたしが余りにも『あり得ない』と主張したから、ブレンダは面白くなって来てこんな『賭け』をしたんでしょうね。彼女ってそういうところがあるから……。面白い事が大好きなのよね。当の本人の私はちっとも面白くないけど。

 そして彼女は一度言った事は必ず守る。……という事は、この場合彼女が出した解呪の条件、『私を愛する男性のキス』でしか解呪は出来ない、という事……。


 シャーロット猫は丸まったままその可愛い前脚で頭を抱える。


 ───エドワルドの馬鹿ーー!
 ……ううん、私の大馬鹿ーー! 

 
 そして暫く項垂れた後、シャーロット猫はプルプルと頭を振って自分の頭を切り替える。


 ……ブレンダが言っていたのような『愛する人からのキス』なんてものはこの状態では絶対にあり得ない。ここはブレンダになんとかこの魔法を解いて欲しいと誠心誠意お願いしてみるしかないわ。
 だけどおそらく彼女はこの状況を何処かで見ている。そしてこの詰んだ状況でも姿を現さないという事は、とりあえずは自分で何とかしてみせろ、という事。……多分、面白がっている。

 
 とりあえず、自分の屋敷に帰りたい気もするけれど……。

 シャーロットのオルコット公爵家の屋敷は王宮に近い一等地にあるとはいえ、馬車で15分程かかる。……あくまでも馬車で、だ。

 猫の足でどれだけかかるかは不明だし、実際に人の姿でも歩いた事がないので道も分からない。そもそも猫の姿でこの王宮から出るだけで一苦労しそうだ。


 ……その辺りもブレンダとよく話し合っておくべきだったわね……。今更だけど。

 シャーロット猫はふうとため息を吐き、その椅子で丸まったまま考え続ける。


 父である公爵に連れて帰ってもらう、もしくはコッソリ馬車の後ろか屋根に隠れて乗って帰れれば確実なのだが、今のシャーロットは人の言葉が話せないしそもそも信じてももらえないだろう。そして義母と義妹もいるのだ。つまり猫として帰っても居場所はないだろう。

 シャーロット猫はフニャーとため息を吐く。

 ……義母と義妹とは、特別仲が良いとはいえないがそれなりな関係だったと思っていたのに……。それに少し前からミシェルがエドワルドに妙に近付いているのは分かっていた。
 だけど私も父もエドワルドとの婚約に納得していなかった。そもそもが無理矢理な王命での婚約だったし、更に彼は婚約者として公爵家の婿としての勉強も何もせずにただ未来の公爵としての役得ばかりを考えていたようだった。だからむしろエドワルドがこの婚約を解消しミシェルと結婚したいと言い出せばいいのにとは思っていたのだ。
 ……それがまさか国中の貴族が集まるパーティーでの婚約破棄宣言になるとは思いもしなかった。


 シャーロット猫がウニャウニャと悩んでいると、廊下から二つの足音と話し声が聞こえて来た。


「…………私、本当に恐ろしくて……」
「───ああ、令嬢はまだ見つからない。恐ろしい事だ。貴女も顔色が悪いよ。この部屋で休んでいくといい」


 そう話しながらガチャリと扉が開き、2人の男女が入って来た。


 シャーロット猫は思わず毛がビリリと逆立つ。


 2人はそんなシャーロット猫に気付かずにそのまま扉を閉めた後、すぐに抱き合った。


「ああ、ご令嬢があんな事になるなんて、私恐ろしくて震えが止まりませんの……」
「美しい貴女の身体が恐怖で震えている……、可哀想に。僕が温めて差し上げよう」


 鏡台の前の椅子で隠れるように小さくなりながらも、シャーロット猫は話を聞いて少しイラッとしていた。

 こういう不届者の貴族がいる事は話としては知ってはいた。そして今目の前でしかもあの騒ぎに乗じてソレが行われようとしているのだ。

 ……人をダシにして盛り上がるんじゃないわよ!
 ……ん? この男性は何か聞き覚えのある声ね……、……はッ! この人!!


 恐る恐る声のする方を見ると、そこには見覚えのある人物。
 ……あれはアマリアの婚約者アダムスじゃあないの!!

 シャーロットの友人侯爵令嬢アマリアは長い間婚約者の浮気に悩まされてきた。
 そして少し前に次に彼の浮気が見つかれば婚約を破棄する事になったと喜んでいた。……が、そう決まってから流石に浮気はしていないのかなかなか尻尾を出さない。なんとか早く証拠を見つけて破棄したいのだと怒る彼女から何度も話を聞いている。

 ……ふーん。流石に本当に『婚約破棄』されては困るから最近は浮気は控えていたけれど、この騒ぎに乗じたら分からないだろうと浅はかな考えに至った訳ね。

 そしてその相手を見ると、これまた遊んでいると評判?の未亡人だ。この未亡人に家をかき回され不幸になった方はたくさんいる。


 ……シャーロット猫はニヤリと笑った。
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