玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第029話 鉄道説明会 その6 縁の結び方

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第10章第029話 鉄道説明会 その6 縁の結び方

Side:ツキシマ・レイコ

 いろいろ喧々諤々はありましたが。会議の翌日の今日は、昼食会です。
 さすがに昨日は皆ぐったりですからね。日を改めて正教国主催での懇談会となりました。

 スムーズに正教国と繋がることになって、ほっとしている国領の代表。
 隣国隣領との確執が噴出して、それでも友好的に振る舞わなければならず、なんかギスギスしている国領の代表。
 悲喜交々はそれぞれですが。大体は合意に至ったと言うことで。各国はまず一息ついたというところですか。かなり力業でしたけどね。

 テラスから出られる庭には、マーリアちゃんとクラウヤート様、そしてセレブロさんとバール君がいます。
 あと、シャールちゃん。バンシクル王国の在教国大使であるカランカ子爵の娘さん。バール君ファン。さっそく抱きついて…顔から突っ込んでモフモフしています。
 
 他国から参加している子女達も、でかい動物に興味津々です。シャールちゃんやマーリアちゃんを見て恐怖心はあまりないようですが。それでも動物ということで、クラウヤート様が注意を促しています。セレブロさんとバール君が悪さすることはないですが。肉食の動物に対してまで警戒しなくなるのは危険ですからね。

 「ねっねっマーリアさまっ! バールくんたちになんかあげたい!」

 この子達が空腹にならない程度の肉や魚は用意して貰っています。
 最初はシャールちゃんがトングでつかんだ赤肉を、バールくんがペロンと食べます。それをきゃっきゃと喜ぶシャールちゃん。
 トングで掴むのが面倒なのか、手で肉を摘まんであげるシャールちゃん。手毎食べられないか冷や々々している大人達。「すごいすごい」と驚く子供達。
 シャールちゃん、一躍英雄ですね。ネイルコードでもハルカちゃんでよく見た風景です。

 男の子がセレブロさんにお肉を上げるのに挑戦しています。こういうのに慣れているセレブロさんですで、無難に対応しています。
 手を舐められて、ひゃっと声を上げる男の子。ちょっとザリっとするのがセレブロさんの舌です。

 子供達とは別に、マーリアちゃんに声をかけたいような素振りの子息もいるようですが。まぁ大型生物がそばにいて躊躇しているようです。セレブロさん、近づいてくる人は一通り「見ます」からね。目が合うとたいていの人はびびります。
 でも、それくらい物としないような胆力で無いと、マーリアちゃんは物に出来ませんよ。


 レッドさんはと言えば。リシャーフさんと一緒に、ラウンジの一角でボードゲームコーナーを開催しています。リバーシと将棋ですね。
 まぁレッドさんは、ドラゴンとはいえ小動物にしか見えません。初めて見た人には、頭がいい知性体とは思えない…んだそうで。鉄道説明会でも基本寝てましたしね。
 とはいえ、あの赤竜神の眷属たる小竜神様です。赤竜教からすれば、今ここでの一番はレッドさん。二番目が私?。三番目はリシャーフさん。
 彼とゲームが出来るなんてのは、とてつもない誉れ!…とまで考えてくれなくても、いい土産話にはなるでしょう。

 どちらもネイルコードでは普及しているゲームで、正教国周辺でもすでに知っている人がそこそこいまして。そういう人がレッドさんに挑戦しています。
 初めてでルールを知らない人には、これまたリシャーフさんが相手をしています。小竜神の補佐という感じで付き添っているようですが、あの聖女様がゲームの手ほどきをしてくれるのです。こちらも結構な人だかりですね。
 リバーシの方はほとんど説明は要らないですが。将棋の方は…使っているのは、進める方向がコマに書いてある初心者用ですね。

 レッドさん。一対八で、リバーシと将棋が半々。たまに長考する"ふり"をしつつ、ジュース飲んだりお菓子かじったりしながら対局しています。卓上を歩く無作法はご容赦ぐたさい。
 ファルリード亭の時と同じく、難易度設定の数字の積み木を前に置きつつ。最高能力で対局したら、あっという間に終わってしまって楽しくないですからね。相手には子供も混ざっていますし。
 …あ、見栄でリバーシの最高難易度でトライした人が…盤面真っ白に。
 見た目とは違う知性に裏付けされた棋譜。こうしてレッドさんも伝説になっていくのです。

 用意された他の卓でも、参加者同士での試合もいくつか始まって。静かで熱い一角になっています。まぁこういう平和的対戦ならいくらでもやってください。




 私はアイズン伯爵と、庭が見えるラウンジで並んで座ってお話です。
 氷の入ったジューズをいただきながら。冷蔵庫と冷凍庫はすでに教会でも使われているようです。
 護衛の人も付いていてくれていますが。私とアイズン伯爵が一緒ということで、ある意味それだけで結界ですね。周囲の人も遠巻きに気にしている程度です。

 「内々の内々だがな。陛下がカルタスト殿下の妃候補を考えておってな」

 おお。王太子妃選定ですか?。
 陛下は…他国の王らしき方と何か話していますね。

 「お相手は、レミーヌ・クゾン・カルマ男爵令嬢。カルマ商会の会頭の孫娘じゃ」

 あら。食品に強いカルマ商会の。奉納した食品関係の販売をお願いしているところですね。他の大きな商会と共に、国への貢献が大ということで、法衣男爵…領地を持たない貴族になったと聞いています。
 ランドゥーク商会も男爵位を貰っていますので。タロウさんも将来の男爵です。

 「元が商会の男爵令嬢では、成り上がりと後ろ指指されませんか?」

 実績を持っての陞爵なのですが。やはり建国時からの貴族の一部には、初期の魔獣戦線のような戦闘以外の功労を認めない貴族がぼちぼちいます。…戦ったのは先祖であって、当人らは戦闘していない人がほとんどですけどね。

 当人同士が好き合っていたとしても。貴族の結婚はどうしても政治が絡む話です。ごり押しして幸せになれるかはまた別ですから。ロミオとジュリエットになっては元もこうもないのです。

 「将来の側近候補のために、学園を王宮で開いているじゃろ? そこの御学友じゃな。なかなか賢い娘らしく、殿下と気が合っているそうだし。上皇陛下達も気に入っているらしい」

 レミーヌさんの為人は知りませんが。ローザリンテ殿下が気に入っているというのなら、問題はないのでしょう。

 「レイコ殿が言っていた民主主義か。まぁ今代や次代で覆るような王政ではないだろうが。今のうちから、民と王侯貴族の垣根は低くしておきたい…という上皇陛下のお考えじゃ。貴族と民で隔絶があるままじゃと…革命というやつか、決定的な衝突となりかねん。まぁ何代か先の話じゃろうが」

 今のうちに庶民と王侯貴族の敷居を下げて、ソフトランディングさせたいということですね。
 別に私が民主主義を広めようとしているわけでは無く、
 貴族が優秀なのは、経済的余裕から高度な教育を受けられるからであり。貴族並みに学を修めた優秀な民衆が増えれば、相対的に貴族の地位も低くなっていくわけで。
 これを恐れて民衆に勉強させなければ…それをしている国に飲み込まれるのが目に見えているので。せめて家を残しつつソフトランディングさせるには、非貴族と血縁を結んでいくのは、確かに良い判断だと思います。

 …いえ。この辺の理屈は多分後付けですね。
 クライスファー陛下もローザリンテ殿下も、ネイルコードの王族という地位にさほど執着はないようです。もし選挙による議会が出来て「行政権を渡せ!」となったのなら。それこそ「どうぞどうぞ」しそうです。…まぁ実際にはすぐに国を放り出すことはしないでしょうが。
 となると。周囲の大人は、カルタスト殿下とレミーヌ嬢が普通に恋仲なのを応援しているだけ?
 王侯貴族は政略で結婚する…というのは建前で。彼ら彼女らだって、選択肢の中からできるだけ好ましい相手を選びたいのです。好きな相手との結婚に理由が付いてくるのなら、むしろ歓迎なのです。

 「とっとと市井に広めてしまうのもいいかもしれませんね」

 「ん? 貴族ではなく市井かね」

 「商会の優秀な娘が王太子に見初められて…なんて話は市井の人たちは大好きそうですからね。二人の婚約を好意的に広めてお祝いムードを盛り上げてしまえば、反対する貴族も減るのでは無いかと」

 「なるほど…広まった慶事を否定するほうが印象は悪くなるからの。わざわざ矢面に立つ者もいなくなるか…」

 私の時代では、とくに一般人と皇族王族が結婚ってのは、珍しくなかったですからね。
 お祝いする人の方が増えてしまえば、それを非難しても自分を貶めるだけになります。

 「うむ。ローザリンテ殿下に進言してみよう」



 「あとな、レイコ殿。クラウヤートな。あれは、マーリア殿と進展はあったのか?」

 ん?
 うーん。クラウヤート様がマーリアちゃんに好意を持っている…ってのは見ていればわかりますし。マーリアちゃんも、クラウヤート様を悪しに思ってはいないでしょうが。
 それが憧憬なのか恋愛なのか尊敬なのか。…ちょっとわかりかねます。

 「クラウヤート様から相談でもあったのですか?」

 「あやつは将来、外交の方に進みたいと言っておってな。そこからこの大陸の発展に携わりたいのじゃと。くくくっ、あやつもでかいことを言うようになったもんじゃ」

 「エイゼル領の方は?」

 「そちらはブラインの方がうまくやっているからの。あれはあれで、エイゼル市の発展に夢中じゃからな。今更他国の開発には手を出したく無いじゃろう。わしも鉄道がなければ、エイゼル市に引きこもっていたかもしれん」

 エイゼル市も、カラスウ河を挟んで東側の地域、鉄道の駅やら、職人街のマルタリク、漁村から漁港に変わりつつあるアキル。この辺をまとめて開発が進んでいます。将来的にはここに大都市が出来ることになると思います。
 当然、都市開発を主導する人も必要で。ブライン様はその辺に収まってしまったようですね。
 その後継者としてのクラウヤート様…ただ、アイズン伯爵が大陸開発に関わるようになって。その手伝いとしてついて回ることで。大きな将来の目標が出来たようです。

 「まぁクラウヤートは今回の説明会でも目立っておったからな。…釣書がけっこう届いておる」

 ネイルコードの若き貴族。しかもアイズン伯爵の孫。白いオオカミを引き連れて、見た目も悪くない。
 そりゃ引き手数多、娘や孫娘を出して縁を結びたいという貴族…どころか、王族までいそうです。

 「じゃがな。ほら」

 視線を外に向けると。子供達の相手をしている二人。子供を乗せて歩いているセレブロさんを、二人が左右からサポートしています。バールくんも付き合って、小さい子を乗せてますね。

 「伯爵は、あの二人でいいんですか?」

 「ネイルコード国内からの釣書は多いがの。エルセニムのネイルコード臣従に、リシャーフ猊下とアトヤック殿の婚約だけでも、力関係が大きく動いたからの。しかも、マーリア殿とレイコ殿は家族同然じゃろ」

 エルセニムが辺境領化するので。縁戚のラインが、私からネイルコード、正教国と繋がって。

 「今回の説明会でも、ネイルコードが大陸覇権を狙っているのではという疑惑を持つ国は多そうじゃからな。それが増長されないかは懸念ではあるが」

 出る杭は打たれる…出過ぎてどうしようもないと思いますけど。

 「だから正教国に特許庁作って、鉄道説明会もここで行ったんですよね?」

 「くっくっく。小細工を仕掛けてくるのなら、まぁそれはそれでやりようはいくらでもあるて。くっくっく」

 顎をなでつつ、外を見る悪いモードの伯爵。

 「いや、うむ… まぁクラウヤートも当然じゃが。マーリア殿ももう娘みたいなものじゃしの、わしも幸せを掴んでくれることを願っておるし。兄のアトヤック殿がああなった以上、さらに面倒な話が舞い込みそうじゃしな。今のうちに固められるのなら固めたい」

 強面ですけど。二人を見る目は優しいですね。

 「明日から、レイコ殿達はオタリンに観光じゃろ? クラウヤートも参加するそうだし。それとなく様子見というか、まぁお願いできんかな?」

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