玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

文字の大きさ
2 / 383
プロローグ

プロローグ第002話 チュートリアルへようこそ

しおりを挟む
プロローグ第002話 チュートリアルへようこそ

・Side:ツキシマ・レイコ

 視界が赤い。
 まぶたを通して、日の光が赤い。椅子に座って寝ていたのか、体が硬いな。
 仕事中の仮眠を椅子で取ることはよくあったけど、そういう寝方をしているときにつきものの体の痛みはないことに、不自然さを感じる。すこぶる快適だ。
 目を開けようとしたが、陽射しが目に入ってまぶしい。どっか日向のベンチで昼寝でもしてしまったのか? あれ?
 手を目の上にかざして、日を遮り、うっすらと目を開けていく。光になれてきて、前が見えるようになってきた。
 
 眼前で見下ろすは、広大な森林地帯。幅の広い谷なのか、その向こうには、雪を携えた岩山も見える。信州?アルプス?
 しかし見える範囲には、ここが日本なら何かしらはあるだろう人工物の類いは、一切ない。自分が今いるところも、岩山の中腹といった感じだ。
 どっかに道路とか高圧電線くらい見えているのが当たり前でしょ?と思って、景色を見渡すが。



 ここで、自分が入院していたことを思い出した。
 癌で…最後は眠らせて貰って…母さん…赤井さん…

 あれ?
 ここはあの世?

 気温からすると春?山なら夏なのか?
 空気は澄んでいる。雲もまばらで、空は好天。目の前には壮大な自然の風景。
 これが観光や登山なら、さぞ素晴らしい気分なのだが。

 死んでここに飛ばされて一人、これからどうすればいいんだろう?という不安がよぎった。あの世で楽園に飛ばされて森林サバイバルしなくちゃなんて、あまり面白くないぞ。
 椅子から立ち上がる。癌の転移で麻痺していたはずの手足が自由に動く。本当に死後の世界?

 と。かざしていた自分の手が、いつもより小さいことに気がついた。立った視点も、地面までの高さが心持ち低い気がする。
 下を見る。…無い? 元々そんなにでかかったわけじゃないけど、下を見ればそれなりにあるはずの胸がない。
 両手でぺたぺたする。まったくないっ。なんじゃこりゃ? 何が起こった?

 半場パニックになりながら、キョロキョロと周りを見渡すと。視界の隅、私の後ろに何か赤いものがあることに気がつく。凸凹の赤い石。 自然界には不自然なほどの赤い石。最初に連想したのは、朱色に塗った狛犬の像を飾っているお寺?そもそも真っ赤な狛犬って?

 私が後ろをふり向くと、そこに立っていたモノと目が合った。



 「チュートリアルへようこそ」



 上から声がした。見上げると、そこには、眼鏡をしたドラゴンがニタっと笑っていた。
 龍ではなくドラゴン。まさに西洋のドラゴン。
 恐竜…というより、二足歩行している鰐か。角は六本。頭までの高さは三メートルくらい。全長だと六メートルくらい?
 背中には、翼を畳んでいるのが見える。

 ここは地獄か? 地獄の入り口から天国の風景を見せつけられているのか? これは地獄の獄卒か?
 完璧な善人として生きてきたと言い張るつもりはないけど。私、そんなに悪いことをした? むしろ三途の川を先に渡りたい。

 赤いドラゴンは眼鏡をかけている。耳にかけているのではなく、顔にくっついている感じなのだが。 あれ?
 頭から血が下がる感覚。死んでいるのに血が下がるのか? パニックで気が遠くなる…

 「玲子君、顔を見ていきなり失神とは、ちょっと失礼だぞ」

 慌てるように私を支えてくれたドラゴンが、聞き覚えのある声で不貞腐れていた。



・Side:アカイ・タカフミ

 モニタリングは正常。意識野は正常にシミュレーションされている。処理能力のリソース消費も想定内。今度も無事"再生"できたようだ。

 久しぶりに君と会話できるのはうれしいよ、玲子くん。前に話してから結構経っているからね。

 目の前の景色に感動しているね。いいでしょう?、僕の自信作だよ。

 彼女はしばらくキョロキョロしていたけど。幼い頃を推測して作った体で、こちらを見上げて驚いている。
 あ…子供に真剣に怯えられると、ちょっと来る物があるな。罪悪感が湧いてくる。このパターンは始めてだ。

 おいおい、失神しなくても良いだろ
 しかたないな。ベースに運び込むか。すぐにでも目を覚ますだろう。

-----------------------------------------------------------------------------
プロローグ終了です。
ただ、アカイさんのチュートリアルは、10話ほど続く予定です。
…まぁ設定解説ですね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter
ファンタジー
世界に突然、魔王が表れた!だったら魔王を倒すべく勇者を召喚するしかない!丁度いい奴がいたし、魔王を倒して……あ、間違えて呪われた木刀を渡しちゃった。まあ、彼ならなんとかしてくれ……なんで魔王と一緒にいるの!?なんで国から追われているの!?なんで追われているのに海水浴とかギャンブルしてるの!?なんで魔王を倒す旅で裁判してるの!?この物語は、チートなんて持っていない主人公が好き勝手しながら世界最強の魔王を倒すまでの物語である。 ※いただいたコメントに関しましてはなるべく返信します。 ※茶番は作者がやりたい放題書いているだけですので、本編のみご覧になりたい方はとばしてください

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

処理中です...